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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
六章

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王太子誕生祝いの夜会

 エリンさんがいなくなったと聞いて、私たちは直ぐにバイアット侯爵に捜索をお願いした。彼女はエヴァンス男爵家の養子で私たちの領民だから、第一に捜索を依頼出来る立場にある。こうなることを恐れての養子縁組でもあったのに、こうも簡単に攫われてしまうなんて……ううん、まだ攫われたと決まったわけじゃないのだけど。


「きっとあいつらだよ! でなきゃ姉さんがいなくなる理由がない!」


 クレアはそう言ったけれど、確かにエリンさんが姿を隠す理由がない。クレアの話では、とある馴染みの店で王都を離れると話していたところ客が具合が悪くなったと言い出したため、エリンさんが奥の部屋で治療をしたのだという。いつまで経っても戻ってこないので様子を見に行くと、その具合が悪いと言っていた客と共に姿が消えていたという。その客は初めて見る顔だった。


「どうやらずっと見張られていたらしい。すまない、ここまで周到に狙っていたとは思わなかった」


 ラリー様にも想定外だったらしい。探しに行くというクレアには、もしクレアが捕まったら人質にされてしまうこと、そうなると一層エリンさんを助けるのが難しくなるからと説明して家にいて貰っている。一人助けるとの二人助けるのでは労力が全く違ってくるからだ。




 そんな中でも夜会の日は無情にもやってきた。今はそんな気分ではないのだけど、夜会に出ないわけにもいかない。


「さぁ! もっと晴れやかなお顔をなさって下さいまし!」

「そうですわ、アレクシア様。それでは神殿の連中に負けてしまいますわよ!」


 侍女たちの熱気に反して気が重かった私だけど、そんな風に言われては落ち込んでもいられなかった。エリンさんの失踪は神殿が関わっている可能性が高いのだ。


「ああ、今日も愛らしいですね、シア」

「ラリー様」


 気合を入れたところで甘い笑顔全開のラリー様が入ってきた。怪我の影響は今のところなさそうだけど、ここ数日は夜も仕事をなさっていたから大丈夫なのか不安が残る。それでも、いざとなれば私の力はラリー様に流れるから何とかなるだろうか。でも、頼むから身を挺して誰かを庇うのは止めてほしい。


 そんな私の今日のドレスは、珍しくラリー様の瞳の色と同じ鮮やかな青だった。金と紫の差し色で、この色合いは随分久しぶりだなと思った。ガードナー公爵令嬢に対しての意趣返しで私の色が続いていたけれど、もういいのだろうか……そんなラリー様は紫がかった銀に青と金の差し色で、今回はデザインを合わせているので並ばなくてもペアだとわかる。私としてはラリー様の色の方が好きなので、それだけで気持ちが上向きになった。




 今日の夜会は王太子殿下の誕生を祝うもので、他国の王族や大使も参加する大規模なものだった。王太子殿下も順調に足元を固めつつあり、今のところこれと言った憂いもないという。そんな中で行われた夜会は融和な雰囲気の中で進んでいった。


 私たちも数日後には王都を離れる予定なので、知り合いに挨拶をするのに忙しかった。親しくして下さった方々と離れるのはやはり寂しい。ヘーゼルダインは遠いし、リネット様も結婚してからは王都にお住まいだから以前のような交流は難しいから。そりゃあヘーゼルダインにも家族のような仲間はたくさんいるけれど、学園時代からの友人はまた別だ。


「アレクシア様、次にお会いできるのはいつになるかしら」

「そうですわね。来るのも簡単ではありませんし……でも、一年に一度は必ず王都に顔を出したいです」

「それでも、またお会いできるのは随分先になってしまいますわね」


 隣の領地に住み、ヘーゼルダインに嫁いでからずっと交流があったリネット様が別れを惜しんでくれた。


「ヘーゼルダイン様、またアレクシア様と王都にいらして下さいね」

「勿論ですよ、リネット夫人」


 ラリー様もそう言って下さったけれど、簡単ではないのはわかっている。それでも、ヘーゼルダインに帰らないという選択肢はなかった。今ではあそこが私の家だから。


「ね、アレクシア様、今日のパトリシア様ですけど……」


 リネット様の視線を辿ると、その先にはガードナー公爵とパトリシア様がいた。今日のパトリシア様の衣装は……紫を基調としたドレスだった。ずっとラリー様の色の青で統一されていたのに……


「まだ諦める気はなさそうですわよ」

「まさか……あんなに拒否されていたのに?」


 ここまでくると恐怖レベルの執着だ。今日は挨拶を受けていなかったけれど、それはラリー様が巧みに避けていたせいだろうか。そこまでされてもまだラリー様に拘っている心境が理解出来なかった。


「ヘーゼルダイン様、こうなるとご存じでしたの?」


 リネット様にそう尋ねられたラリー様が笑みを深めた。


「ふふ、リネット夫人、私も存じませんでしたよ。でも、あれだけシアの色を続ければそろそろ……とは思いましたが」

「そうでしたか。でしたら大成功ですわね」


 リネット様の表情がちょっと硬い。ラリー様に引いているんじゃないだろうか。まぁ、色が合わなかったのはよかったけれど。


「それに隣のジョージアナ様のドレス、随分と広がりが大きいのね」

「そう、言われてみれば……」


 こちらからはパトリシア様のドレスで隠れていて気付かなかったけれど、確かにジョージアナ様のドレスは大きかった。大聖女は慎ましいドレスが多いから、そういう意味では異質に見える。あれだけ広がっていると歩き難いだろうに。


「あれでは歩き難いでしょうに」

「ええ」


 実際、歩みは遅いしスカートの揺れも不自然にみえた。あれだけ広がっているとパニエもドレスも相当重いのではないだろうか。


「あれじゃダンスは無理だろうな」

「周りの方にも迷惑ですよ」


 ラリー様も呆れた表情を隠さなかった。悪目立ちしているし、大聖女としての品位も台無しだろうに。


「歓談の中、失礼する!」


 終盤になりそれぞれに仲間内との会話を楽しんでいた頃、急に声を上げた者がいた。何事かと会場内が一気に静まり返り、声のする方に注目した。






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