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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
六章

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クレアたちの今後

 出血がそれなりにあったために暫く安静を命じられたラリー様だったけれど、傷はすっかり消えてしまったので大人しくしているのを条件にタウンハウスに戻ってきた。王宮育ちで部屋も残っているのだからそこで静養を……と思ったけど、王宮にいたのは随分前のことで今はタウンハウスの方が落ち着くと言われれば、無理にとも言えなかった。


「でも、本当に大人しくしていてくださいね!」

「わかっているよ、シア」


 そう言ってベッドに横になって笑うラリー様だったけれど、その言葉を信じるのは難しかった。前科があるからだ。仕事中毒のラリー様はじっとしているのが嫌いなのだ。そしてその約束は今回、半日も持たなかった。


「どうせ領地に戻る時は暇なんだから」


 そう言ってラリー様は次々と書類に目を通して決済し、陛下やバイアット侯爵と今まで以上に頻繁に連絡を取り合っていた。こうなると止めても無駄なので、私は血液不足で疲れたラリー様を癒すことと、血を増やせる食事を頼むなどして後は見張ることにした。


(夜会まで日がないから、それまでに少しでも休んで回復して欲しいのに……)


 そうは思っても、大丈夫だからと笑うだけだ。何だかんだ言ってご自身の意を通すラリー様を止められる者はいなかった。


「まぁ、最終的にはアレクシア様が止めれば大人しくなりますから」


 ユーニスはそう言うけれど、現時点で言うことを聞いてくれていないんですけど……


「アレクシア様が泣き落とすか絶交を宣言すれば止まりますよ」

「ええっ? そんなことで?」

「ああ、そうでしょうね。ローレンス様はアレクシア様に勝てませんから」


 ユーニスとロバートはそう言ったけれど、とてもじゃないけれど信じられなかった。その前に泣き落としって……メイベルでもあるまいに、私にはそんな芸当は出来そうになかった。


 ラリー様の体調に神経を尖らせている間も、火事の被災者の治療は続いていた。それでも火事由来の治療を求める人は殆どおらず、また私たちも近々ヘーゼルダインに戻るため、空き家での治療も終了することにした。行き場がない人たちのためにまだ暫くはあの家を解放しておくが、今後はバイアット侯爵が管理をしてくれることで話がまとまった。

 ラリー様は使っていないあの場所を売るか貸し出すつもりだったのだ。空き家の管理にも費用が掛かるからで、赤字続きのヘーゼルダインにはそんな余裕はない。何とか赤字は避けたいと考えていたところ、バイアット侯爵が騎士団の詰め所として借りたいと仰ったのだという。近々王家も入れての話し合いをするそうだ。




 治療を終えたのもあって、私はエリンさんとクレア、アレンを呼んで今後の身の振り方を尋ねることにした。このまま王都に残るか、ヘーゼルダインに来るか考えておいてほしいとラリー様が以前話していた、その返事を聞くためだった。


「それで、エリンさんたちはどうしたい?」


 お茶とお菓子を前に目を輝かせるアレンに、クレアがあれこれ世話を焼きながらエリンさんを気にかけていた。この姉弟は本当に仲がいいなと微笑ましい。


「アレクシア様、私達、ヘーゼルダインにご一緒させて頂こうと思います」

「そう。でも、本当にいいの?」

「ええ。ここにいても……神殿が、その……」

「神殿の奴ら、まだ姉さんを諦めていないんだ。今度連れて行かれたら、どんな扱いを受けるか……」


 エリンさんもクレアも、神殿の動きが不安だと言った。実際あの後も何度かクレアさんを狙っていると思われる輩が現れたと聞いている。リドリー侯爵令嬢も相当焦っているのだろうとラリー様も言っていた。


「わかったわ。じゃ、来週ヘーゼルダインに向かうから一緒に来てくれる? 歓迎するわ」

「どうぞよろしくお願いします」

「アレクシア様、役に立てるよう頑張るから!」

「ありがとうクレア。でも、そんなに気負わなくても大丈夫よ」


 両親がいない彼らにとって、知り合いのいないヘーゼルダインも不安なのだろう。必死に役に立とうとするクレアの健気さに胸が痛くなった。神殿がしっかりしていればこんなことにはならなかったのだ。これは私の力不足のせいもあるだろう。何とかしたいとは思うけれど、セネットの聖女は神殿にはノータッチが基本だからどうしようもない。


「近々お別れをしに行ってきてね。護衛を付けるから」

「ありがとうございます」

「ううん、それくらいはさせてね。まだエリンさんを諦めたとは思えないから」


 そう、大聖女クラスの力を持つ女性は少ないから、簡単には諦めないだろう。陛下の話ではセネットの聖女の力が強い代には神殿の聖女の力は弱まるらしい。そういう意味ではリドリー侯爵令嬢には気の毒だけど、そもそも彼女が大聖女に選ばれた経緯が怪しいのだからどうしようもない。


「そうそう、養子の件もサインを貰っていいかしら?」

「あ、はい。でも、よろしいのですか?」

「勿論よ。あなたたちが成人するまでの間の後見と思ってちょうだい。成人したら養子から抜けるのも自由だから」


 これもヘーゼルダインに連れていくためには必要なことだった。勝手に連れて行って誘拐したと難癖をつけられる可能性もある。それを防ぐために三人をロバートの実家のエヴァンス男爵家の養子に入れることにしたのだ。こうすれば堂々と連れて帰ることも出来る。

 三人にサインして貰った書類は、直ぐにラリー様に渡して陛下の決裁を頂くことになっている。正規に頼むと時間がかかるから、直接陛下にお願いしたのだ。


 翌日には三人の新しい身分証明書が届いた。


「うわ、本当に貴族様になってる……」


 証明書を手にクレアが目を丸くしていた。貴族の中では男爵家は最下位になるけれど、平民にとっては雲の上の存在だ。それくらい平民と貴族の差は大きい。

 ヘーゼルダインに着いたら三人はエヴァンス家預かりになるけれど、たぶんエリンさんは屋敷で私付きの侍女に、クレアは侍女見習いの予定だ。アレンは二人が仕事中は屋敷内の子ども用の施設に預けて勉強で、十を過ぎれば本人の希望で騎士や庭師、家令などの見習いになるだろう。




 男爵家に養子になった三人は、その翌々日に知り合いに別れの挨拶をするために出かけていった。護衛を付けているので問題はないと思うけれど、三人には目立たないようにフードを被って貰った。そこまですれば安心だろう。そう思っていたのだけど……


「アレクシア様! 大変です! エリン嬢がいなくなりました!」


 クレアとアレンを連れた騎士が、血相を変えて返ってきたのは一刻ほど発ってからだった。




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