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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
六章

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神殿の私物化

 エリンさんの滞在が延びたので、私は時間が合えばエリンさんに聖女や神殿のことを教えて貰った。セネットの聖女は神殿の上に立つが、お互いに不干渉だ。それはセネット家の力が大きくなり過ぎるのを防ぐためと、一方でセネット家への畏敬の念を保つためだった。

 もっとも今は両親やメイベルのお陰で畏敬の念も何もあったものではないのだけど。それでも祖母の代までは、我が家は畏敬の対象だったらしい。祖母は強く厳しく、公明正大な人だったから余計にそうだったのだろうと思う。


 エリンさんは聖女の力が現れたため、神殿に引き取られて聖女としての教育を受けたのだという。聖女見習いは大聖女になる可能性もあるため、貴族並みの教育を無償で受けられるし、ちゃんと給金も出るのだという。聖女に選ばれるのは大変名誉なことで、引退後は貴族や裕福な商人などから縁談が来る事が多いそうだ。貴族も聖女の血を取り込みたいと願うのと、聖女を妻に貰うことで箔付けを狙っているのだという。


 エリンさんの場合も、聖女になった頃はご両親も健在で、貧しかったので自分の給金は神殿での生活に必要な最低限を残して全て実家に送っていたという。それでクレアもアレンもそれなりにいい生活を送っていたらしい。手に職を付けるための街の学校に行けるようになり、将来の目的も見えていたという。

 エリンさんも順調に聖女としての力を強めていった。神殿では当然だけど、聖女の力の強さが重要視される。強い力を持つエリンさんは大聖女候補と言われるほどにまでなったという。先代の大聖女はメアリー様と競い合った方だったが、この方は大聖女になって直ぐに力の衰えが見え始めたという。


「先代の大聖女は、実は元々大した力がなかったんだろうと言われていたんだ」

「先代のって……メアリー様と競ったという?」

「ああ。あの時は金で大聖女の地位を買ったのではないかとの噂もあったな」

「金でって……」


 いくら何でもそれはないんじゃないだろうか。でも、殆ど同じくらいならより高位の令嬢が選ばれることはあったかもしれない。その方が神殿としても寄付が集まるだろうから。


「そしてリドリー侯爵令嬢だ。彼女は当初、大聖女候補ですらなかったんだよ」

「そうだったんですか。でも、修行すれば力が増えるんじゃないんですか?」


 そう、聖女の資質があると判断されれば神殿で聖女になるために修行をすると聞いた。それは力の使い方を習うためでもあるらしいけど、そうしていれば力も増えるんじゃないだろうか。


「聖女の力はそうものじゃないんだよ。修行で強くなることはないと言われている」

「ええ? じゃ、神殿の修行って……」

「あれは力の使い方を学ぶことを指すんだ。修行をすると癒しの力をうまく使えるようになるから、それで力が増えたように見えるんだろうね」

「そうなんですか」


 それは知らなかった。私の場合、力の使い方はお祖母様に教えて貰ったけど、それは修行というにはあまりにも簡単なものだった。修行というから特別な何かがあって、それで聖女の力も増すのだと思っていたけれど、そうじゃなかったのか。


「リドリー侯爵令嬢が聖女の力を使っているのを見た者は少ない。陛下ですらね」

「ええっ? でも、王族に何かあった時は大聖女が治療にあたるんじゃ……」


 そう聞いていたけれど、ラリー様は大聖女だと決まっているわけではないと仰った。そう言えば以前、私がエリオット様に痺れ薬を飲まされた時に聖女に治療して貰ったけれど、あれは王宮に詰めている聖女で大聖女じゃなかった。そりゃあ、私は王族じゃなかったけど、でもあの時点で既に準王族だったのだ。


「あの時も、陛下が呼んだのは大聖女だったんだ。どういう訳か来たのは違う者だけどね」


 全く気にしていなかったけれど、そうだったのか。でもあの時は確かに大聖女はリドリー侯爵令嬢だった筈。


「彼女は何をしているのかと疑う声も出ているんだ。二代続けて大聖女がそれに相応しい仕事をしていないと、民からも不満の声もあるんだ」

「二代続けて……」

「メアリーにエリン、二人は大聖女の隠れ蓑だったのかもしれない、と私は思っている」


 まさかと思う一方で、そう言われても仕方がない情況なのだとラリー様は教えてくれた。大聖女は、貴族や平民関係なく治療をするのだと聞いている。神殿向けでは平民向けの治療の日を設けているとも。でも、その様な場にリドリー侯爵令嬢が出てきたことは稀だという。


「じゃ、エレンさんはリドリー侯爵令嬢の身代わりに?」

「背格好は似ているし、髪はかつらでもフードでも隠せるからね。


 それはそのままメアリー様がやっていたことだった。もしかしてメアリー様はそれを真似たのだろうか。


「そんなことして、どんな意味が……」

「聖女という偶像さえあえれば、と考えている可能性がある」

「偶像……それって……」

「そう。誰が聖女になっても問題ない。つまり、リドリー侯爵家がセネット家に取って代わっても問題ないということだ」

「そんな……」


 それではセネット家を聖女の家系と定めた初代国王陛下のご意志にも反することになる。それは王家のご意志を無視することにもなるのに。いや、今のセネット家ではそう思われても仕方ないのだろうけど。


「リドリー侯爵令嬢の力がシアよりも強いのなら、そう考えるのも一理あるかもしれない。だが、そうでなかったら? その場合、彼らがしようとしているのは神殿の私物化だ」

「私物化……」

「神殿を自分たちの都合のいい権力の道具にしようとしているのだろう」


 それは神殿の意義に反するし、神殿を作った初代国王陛下や初代の聖女たちの意に反するだろう。






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