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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第五章

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新しい人生に向けて

 レアード王子でもあるロイは、アンザス王国に行くと言ったのを、私は驚き半分納得半分で聞いた。彼が実妹の忘れ形見のローズを大切に想っている事は明らかだったし、彼女が穏やかに生きるにはかの国に行くのが一番だろうと思っていたからだ。


 アンザスは我が国の二つ隣の国で、その間には隣国がある。元はアンザスと隣国は一つの国だった時代もあるが、二つに分たれた今はあまり関係がいいとは言えない。

 それでもロイがあの国を目指すのは…自身と姪の瞳の色のせいだろう。隣国の王族の証の赤紫の瞳は我が国や隣国では珍しくて目立つが、アンザスでは珍しくないという。彼らが穏やかに暮らすには、あの国に行くのが一番だろう。でも…


「でも、アンザスに行くにはかなりの旅になります。ローズに耐えられるでしょうか…」


 まだ幼いローズに長旅は負担が大きすぎるだろう。貴族なら護衛も雇えるが、今の彼らは平民と変わりない。治安も決していいとは言えない。隣国を通れば二月もあれば辿り着くだろうが、今回は隣国を通る選択肢はない。第三国を経由するとなると…どんなに急いでも三月はかかるだろうと思われた。


「そこは手を打ってあるんだ」

「ラリー様?」

「春になるとラドン国に向かう商団がいるんだ」


 ラドン国とは我が国と隣国と国境を接する国で、隣国を迂回してアンザス国に向かう際に通る国の一つだ。反対側の国は治安が今一つだけど、ラドン国は街道も整備されて治安もいい。どちらかを選ぶとなればラドン国一択だろう。


「商団…ですか」

「ああ、ヘーゼルダインだけでなく、この周辺の商人が隊を組んで行商に出るんだ。護衛も付けてね」


 そう言えば、我が国でも他国に行商に出る場合、個々に行くのではなくある程度まとまって行くのだと聞いた事がある。互いに護衛の費用を出し合った方がより強力な護衛を頼めて安全だからと聞いた。春になると国内のあちこちでその様な隊列を見かけるし、王都では逆に他国の行商の一団がやってくる。確かに彼らと一緒に移動すれば二人で行くよりは安全かもしれない。


「では…」

「ああ、近々ヘーゼルダインの商人たちも出立する。その護衛にロイを…と思ってね」

「護衛ですか」

「ロイは剣の腕も立つし、教養もある。それだけで十分商人たちにはメリットがあるからね」

「でも、ローズは…」


 そう、ロイだけなら護衛として隊列に参加するのも問題ないだろう。王族の彼なら武術の心得もあるだろうし、知識だって相当なものだ。王都では抜け目ない策士とも言われていたのだから、彼が護衛に就けばかなりの戦力になるのは確かだ。でも、ローズはまだ小さな子供だ。そんな中で大丈夫だろうか…


「そこも手は打ってあるよ。今回同行する商人の中にはある夫婦もいるんだが、彼らは私の部下だし、護衛の中にはうちの諜報部員も混じっている。彼らに頼んであるから、二人で旅するよりは余程安全だろう」

「そうですか」


 なるほど、確かに行商の中には他国の情勢を探るため、ラリー様の部下が紛れ込んでいてもおかしくはないだろう。護衛だってそうだ。情報収集をするために他国に行くにしても、個人では怪しまれても行商に付き添っていればその心配は薄れる。


「それに、ロイには我が領の諜報部員として、他国の情勢を報告して貰おうと思っているんだ。そうすれば報酬を払えるからね」

「ええっ?」


 まさかロイを間者として使うだなんて…ラリー様の言葉に私は目を丸くした。仮にも王族だったのに、いいのだろうか…


「それに関しては問題ありません、奥方様」

「レ…、ロイ…」

「今の自分は無官ですからね。収入のアテもないだけに、辺境伯殿の申し出は私にとっても有難いですよ」


 そう言ってロイは笑みを浮かべたけど…本当にいいのだろうか。確かに今の彼は無職だし、もう王族でもないから収入がないのだけど…


「アンザスはここよりも温かく、過ごしやすい気候だと聞いています。そちらの方がローズも心安く暮らせるでしょう。でも、その為には先立つ物も必要ですからね」


 確かにアンザスまでの行程でもお金はかかるし、向こうについてからもお金は絶対に必要だ。勿論彼らが持っていた宝石や金貨などはあるが、それだけで十分とは言い難いだろう。それに、宝石や金貨を平民が持っていると盗んだと疑われる事もある。勿論、商団に同行している分にはそんな疑いをかけられる可能性は低いだろうが。


「あちらでの生活は大丈夫なのですか?」

「それも心配ないよ。アンザスは我が国の商人も集まる場所があって、そこは国が保護しているんだ。暫くはそこで暮らす事も出来るように手配した。その先の事は向こうに行ってからになるだろう」

「そうですね。アンザスの事は私も存じませんから、行ってから考えるつもりです。そうですね、どこかの商人の護衛などに雇って貰えれば有難いですが」


 王族のロイが商人の護衛だなんて想像もつかないけれど…もしかしたらその方がずっと安心なのかもしれない、と思った。ロイの身のこなしは貴族のそれだから、貴族相手だと勘ぐられるかもしれない。それくらいなら商人の方がいいのかもしれない。彼の知識だって役に立つだろう。


「出発は一月ほど先の予定だ」

「そうですか」


 あと一月でロイたちともお別れなのか…と思うと寂しさを感じた。ローズとも仲良くなっただけに先が心配でもある。でも…ここにいるよりも確かにアンザスに行った方がいいのは明らかなのだ。ここにいるといずれは正体がバレてしまうかもしれないから。


「あと、従者として一緒にいたジョナス=エルガーだが、彼は十日後に帰国させる事が決まったよ」

「十日後ですか」

「ああ、彼も家族が心配らしくて、早く帰りたいらしくてね。我々としても彼を置いておくのは気が気じゃないから早めに帰国させる事にしたんだ」


 そう、レアード王子達に怪我を負わせた従者は既に傷も回復していたが、スパイの容疑もあるからと貴族牢に軟禁していた。それはロイたちと鉢合わせないためでもあったけれど、とうとう彼も帰国する日が決まったらしい。彼には身元不明の旅人の遺骨を持たせ、二人が亡くなったと証言して貰う大事な証人でもあるのだ。遺品として王子やアナベルが着ていた服や装飾品なども一緒だから、まず疑われる事はないだろう。




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