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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第四章

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罪と罰と訴え

 翌日、私は朝から身支度を整えて、ラリー様の執務室にいた。今日はメアリー様達への処分を言い渡すのだが、それに私も出て欲しいと言われたからだ。聖女の力の事も絡んでいるから、実際に力を持っている私がいた方が話が早いと言うのもあるらしい。確かにメアリー様の力については、力がない者では判断し辛いのかもしれない、とは思った。ただ、私自身が聖女の事をよくわかっていないため、どこまでお役に立てるかは謎なのだけど…


 今回は彼らに賛同した五十人の騎士達もいるため、沙汰を言い渡すのは屋敷に隣接する騎士団の建物にあるホールだった。警備もしやすく、罪人たちを収容する牢がここにあるからだ。人数が多いため彼らを屋敷に入れるのは危険だとの声も影響していた。




 私たちがホールに入ると既に人が待機していて、私たちが最後だった。ラリー様は私を中央に置かれた大きなイスの左側にあるイスに導くと、私の後ろにはユーニスが、私の左側にはロバートが立った。ラリー様は中央の椅子に、私の反対側のイスにはお義父様とレックスが、そして一段下にはリトラーとモーガン、騎士団の副団長の三人が立って並んだ。


 壇下に視線を向けると、メアリー様やハロルド様、ダウンズ男爵が最前列にいた。みんな後ろ手に縛られ、一月近くの牢生活のせいか顔色は悪く、服装も囚人向けのもののせいか酷く疲れた表情に見えた。

 特にあんなにもお美しかったメアリー様は別人の様で、頬はげっそりとやつれ、輝くようだった金の髪もくすんで見えたのは気のせいではないだろう。ダウンズ男爵もすっかり意気消沈といった感じで、ずっと俯いていた。唯一、ハロルド様だけが視線を壇上に向けていたけれど、その視線にはまだ強い光が残っているように見えた。

 私が彼らの様子を眺めている間にも、リトラーが彼らの罪状について淡々と述べていた。彼はこの地では宰相のような立場で、ラリー様を事務面で支えている人だ。無口で無表情で、最初私は嫌われているのかと思っていたけれど…元よりそういう人らしい。これまでは婚約者だったから殆ど接点はなかったけれど…これからは色んな面で彼を頼る事になるのだろう。


「…以上です」


 リトラーの言葉に私はハッと我に返った。つい自分の物思いに入り込んでいたらしい。最も、リトラーの話している内容は昨日既に聞かされてはいたのだけど…でも、だめね、ちゃんと聞かないといけないわ。


「うむ、ご苦労。では、沙汰を申し渡す」


 リトラーの言葉を受けて、ラリー様が重々しくそう告げられた。今のラリー様はいつものお優しい雰囲気は微塵も見当たらず、厳格な領主そのものだった。これまでに見た事もないような冷たい雰囲気に、私は思わず唾を飲み込んでいた。

 私がラリー様の雰囲気に驚いている間にも、ラリー様は感情を一切感じさせない声で、淡々と彼らへの罰を言い渡していた。それは昨日聞いていたものと違わず、メアリー様は目を見開き、ダウンズ男爵は更に項垂れ、ハロルド様は顔をしかめながら聞いていた。そんな彼らを眺めながら、彼らの動向は早い段階でラリー様達に筒抜けだったとの話を思い出した私は、ラリー様と彼らの差を改めて感じた。


「どれも身に思えのない事で、全く納得致しかねる!我々は何もしない領主殿に代わり、この地の領民を癒していただけですぞ」

「そ、そうでございます!そ、それに…私はこの地の民のために独立しようとしたのです。領民の窮状を放置する領主に変わり、聖女のお力を持つメアリー様のご協力を得て領民が飢えず、穏やかに暮らせるようにと…!」


 沙汰を受けたハロルド様とダウンズ男爵は、畳み掛けるようにそう叫んだ。その言い様はラリー様が何もしていないと言っているようにしか聞こえず、私は憤りを感じた。彼らが何をしていたのか知っていたのもあるけれど、彼らが全く反省していない事が一層私の感情を逆なでていた。そんな中、彼らを抑えたのはリトラーの冷徹な声だった。


「なるほど…領民のためと言われるのであれば…彼らの事はどう説明するおつもりですか?」


 リトラーの声を合図に近くの扉から出てきたのは十人程の領民だった。彼らに共通しているのは、必ず付き添いの者が歩くのを支えている点で、彼らがどういう立場なのか私は直ぐに察した。そしてその後ろには、目深くローブを羽織った人物が二人続いた。


「彼らは、ダウンズ男爵、あなたに怪我を治してやると言われて高額な報酬を払った人達の一部です。ご存じないとは仰いませんよね?」

「な…!」

「それに、聖女の力を持つ女性を監禁し、メアリー殿の代わりをさせていた事は?彼女たちの事はどう説明するおつもりですか?」


 リトラーの声に呼応するように、ローブから顔を出したのは…女性だった。しかも一人は見覚えがある。ロバートが以前、怪我を治して欲しいと言ってきた女性だった。


「治りもしない治療行為への寄付の強要、更には他人を使っての偽装工作。先ほどの罪状を証人なしで言い渡したとお思いですか?」


 リトラーの言葉に、さすがにハロルド様もダウンズ男爵も言い返せなかった。領民から金を返せ!と言い募られた二人は、渋り切った表情を浮かべていた。

 そして…彼ら以上に動揺していたのは、彼らに追従した騎士達だった。彼らはこんな事実は知らされていなかったのだろう。彼らの間から、嘘だろう…そんな…と戸惑いの声がさざ波のように広がっていった。


「ダ、ダウンズ男爵様、今の話は…本当なのですか…」


 ダウンズ男爵のすぐ後ろにいた騎士が、震える声でそう問いかけた。様子からして、彼は騎士を取りまとめていた人物らしい。


「わ、私達は…メアリー様のお力を信じておりました…でも…あれは嘘だったのですか…」


 どうやら彼は本気でメアリー様の力を信じて追従していたらしい。他の騎士達も互いに顔を見合わせながら、不安げな目をメアリー様に向けた。


「そ…そんな筈はない!メアリー様のお力は、ほ、本物で…!」

「では、やってみろ」

「は?」

「本当だと言うのなら…メアリー、この者達を今すぐに癒せ」


 尚も言い募るダウンズ男爵にそう告げたのはラリー様だった。私は斜め後ろにいたのでその表情は見えなかったが、その声は冷たく響き、名指しされたメアリー様は驚きの表情でラリー様を見上げた。



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