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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第四章

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冬支度

 宝石商が嬉々として帰っていった翌日は、気持ちよく晴れ渡る過ごしやすい陽気だった。晴れたせいか朝は肌寒く感じていたが、朝食を終えて部屋で読書をしていた私はメイナードやモリスン夫人から部屋を追い出されてしまった。その日は朝からラリー様は外せない仕事があって一緒ではなかったのだけど…追い出されて連れていかれた先はラリー様の私室だった。

 部屋に通されると、ラリー様の部屋は昨日とは全く違う様子に変わっていて私は面食らった。ラリー様の私室は壁紙が深い緑で、それを基調としているのだけど、今は家具も暖かい色合いに変えられていた。窓には厚みのあるカーテンが追加されていたし、床にもこれまでにはない敷物が敷かれている上、暖炉の前には更に厚手の毛皮のような物が敷かれていた。ソファにも似たようなものでカバーされていて、暖炉には既に火が入っていて部屋の中が暖かかった。


「あの、モリスン夫人、これは…」

「冬支度ですわ、アレクシア様」

「冬支度?」

「ええ、ここは寒い上に雪深いので、今の時期はお屋敷内も冬の準備をするのですよ。今はアレクシア様のお部屋に取り掛かっておりますから、暫くはここでお待ちください。さ、暖炉の側へどうぞ」


 そう言って暖炉の前に促されると、暖炉の前には暖かそうな毛皮が敷かれ、クッションや毛布のようなものも転がっていた。


「暖かそう…」

「ええ、暖かいですわよ。毛皮の上は靴を脱いで下さいね。寒ければ毛布がありますから膝にかけて。ああ、そうそう、こちらもお召しください」


 そう言ってモリスン夫人が出してきたのは、淡い夕日色をしたガウンのようなものだった。


「これは?」

「この地で使われる防寒着ですわ。ドレスの上からでも羽織れるように出来ていますのよ」

「あ、暖かい…それに…軽いわ…」


 モリスン夫人に着せてもらったそれは、見た目よりもずっと軽くて暖かかった。袖も太くて下にドレスを着ていても窮屈と言う事はないし、裾もスカートをすっぽりと覆ってしまう長さだ。色合いも暖かそうで、まるで毛布を着ているような感じだった。


「ええ、暖かい素材で織ってありますの。ここでは必需品ですわ」

「そうなのね。冬は初めてだからどれくらい寒いか、見当もつかないわ…」

「王都暮らしだったアレクシア様にはお辛いかもしれませんね。でも、ちゃんと準備しておりますからご安心ください」


 なるほど、この地にはこの地なりの冬の過ごし方があったのね。そんな事も珍しくて私は楽しくなってきた。暖炉の前に行くととても暖かくて、敷物の毛皮の肌触りがすべすべしていて気持ちよかった。クッションも暖かい素材のカバーだし、ここでお昼寝したら気持ちよさそう…王都では床に座る習慣すらなかったから凄く新鮮だった。


「ああ、シア。ここだったか」


 私が毛皮の感触を楽しんでいるところにラリー様がお戻りになった。相変わらず私の姿を見つけると嬉しそうに笑みを浮かべられて、それだけで私の心拍数が跳ねあがった…うう、これって本当に慣れるものなのだろうか…


「ああ、モリスン夫人、ありがとう。今年はシアが一緒だからよろしく頼むよ」

「ええ、旦那様、承知しておりますわ。アレクシア様のためにもこことアレクシア様のお部屋の暖房は欠かしませんわ」

「頼んだよ。ああ、シア、どうだい?暖かいだろう?」


 そう仰るとラリー様は靴を脱いで私の元までやってくると、私の後ろに腰を下ろすと、私を後ろから抱きかかえるように座られた。


「ラ、ラリー様っ…」

「何?」

「な、何って…この姿勢は…」

「ああ、ラグの方がソファよりもいいね」


 そう仰るとぎゅっと後ろから抱きしめられてしまい、私はとつぜんの事に頭が真っ白になった。私が固まっているのに構わず、シアはいい匂いがするね…何て仰るものだから、私の心臓が限界まで早まった気がした…そして、視線の先には微笑むモリスン夫人とユーニスがいて、何だか余計に居たたまれなかった…ラリー様、せめて人がいる前ではやめて下さい…


 それからお茶になったが、この敷物の上では低いテーブルを使うらしく、メイナードが用意した低いテーブルにお茶やお菓子が並んだけど…ラリー様に後ろから抱きかかえられた状態の私が、お茶を味わう余裕など全くなかった。もう恥ずかし過ぎて気が遠くなりそうだ…しかも、ラリー様がお菓子を口に運んできたり、私の髪や頬に触ったりするから、その度に私はワタワタしていた。

 ユーニスにはいい加減に慣れましょうね…なんて呆れられたけれど…これはラリー様も悪いと思う。だって…生きてきた年数やスキルが違うし、ラリー様は王都ではモテモテだったと聞く。地味でつまらないと言われてきた私が適うはずがないのに…


「ここは雪が積もるとほぼ外に出なくなるんだ」

「そうなのですか?じゃ、その間は何を?」

「隣国とも雪が降る時期の戦闘はしないし、馬車も出せなくなるからひたすら雪が止むのを待つだけだよ」

「でも、それじゃ…」

「もちろん、主要な道は雪かきするけどね。騎士も雪かきが鍛錬の一つになるし、領民も冬は仕事がない者が多いから、皆で協力してやるんだよ。僅かだけど領から賃金も出す。それで物流が止まる事はないんだ」


 なるほど、ここにはここの過ごし方があるらしい。暖炉の暖かい炎を眺めながら、私はこれからくる冬にワクワクしていた。



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