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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第一章

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神の御業

「どこの手のものなのかしら?」


 護衛騎士とビリーが襲撃犯を倒し、彼らを機に縛り付けると、ようやく馬車の外に出る許可が出た。倒れている男たちを見たユーニスが顎に指を当ててそう呟いた。襲ってきた男たちは六人で、それなりに武装しているから冒険者か盗賊かしら…


「一人は証人として連れて行きますが、残りは木に縛り付けて、街に着いたら自警団に報告しましょう。この人数では全員を連れて行くのも危険ですし」


 マーロー殿が彼らを見下ろしてそう告げた。確かに護衛はビリーを入れて五人しかいない。それで六人を連れて歩くのは難しいわ。


「分かりました。そこはマーロー様の意見に従いますわ。私ではわからないので」


 こういうことは騎士の方が慣れているから彼らにお任せするわ。


「ありがとうございます。こいつらを問い詰めたいところですが、近くに仲間がいる可能性もあります。早くこの場を離れた方がいいでしょう」

「ええ。仲間がやってきては対処できないかもしれませんし」


 コーエン殿もマーロー殿と同じことを言うのそれに従うことにした。何だかんだ言って今の私は彼らを信用するしかないのだから。


「わかりました。仰る通りにしましょう。その前に……怪我をなさった方はいらっしゃいませんか?」


 直ぐに移動した方がいいのは理解したけれど、それ以上に気になったのは怪我をした人がいないかだった。見たところ全員問題なさそうだけれど、もし怪我をしていたらその状態での馬での移動は辛いと思うまだ先が長いから無理をしてほしくないわ。


「クロフとグレイディが負傷しましたが…かすり傷程度ですし、問題ありません」


 マーロー殿がそう告げた。二人に視線を向けるとクロフ殿は右腕を庇うようにしているし、グレイディ殿は頬から出血している。傷は深くはなさそうだけど……利き腕と顔に怪我をしては何かと困るわよね。特に利き腕の怪我はこの先のことを想うと放ってはおけないわ。


「そうですか。私が治療しますから、お二人はこちらに」


そうお声をかけたけれど、二人はこの程度はかすり傷で怪我のうちに入らないと言った。だけど後で化膿したりしては大変だわ。私のせいで怪我をさせてしまったと思うと申し訳ない。せめて治療くらいはさせて欲しかった。彼らの元に近付いて傷口に手をかざす。息を整えて傷が治るようにと願い、ゆっくりと力を送り込んだ。傷自体は大したことがないようで、失う力が僅かだったことに安堵した。


「お…お嬢様…もしや…」

「治癒の魔法を…」

「まさか…聖女様だったとは…」


 すっかり傷が消えてしまった二人に、各々が驚きの声を上げた。クロフ殿が聖女だと声を上げた。それは少し語弊があるのだけど……


 この国には、他国にはない聖女という存在がある。稀に治癒魔法を使える女性が生まれてくるのだ。多くは十歳までにその能力が出現して、力がある娘たちは神殿に請われて聖女としての修業に入る。修行を経て一定の能力を得られれば国が聖女として認め、その地位は高位貴族に匹敵するほど保証されることになる。


 その聖女の力は個人差が大きくて、加齢とともに衰える者もいれば、死ぬまで持ち続ける者もいる。力が衰えても一度聖女と認められた者は死ぬまで年金が出るし、聖女と認められる事自体が大変名誉なことだから、力を失っても貴族や裕福な商家からの縁談が殺到するため生活に困る事はない。


 仮に聖女となれなくても、治癒魔法が使えるだけでも尊敬され重宝される。治癒魔法は神の御業とも言われて信仰に近いから使えるだけでもその影響力は大きくて、僅かな力でも医師がいない地方ではとても重宝がられるという。


「私は聖女ではありませんよ」

「でも、そのお力は……」


 クロフ殿は右腕をさすりながらどこか呆然としていた。治癒魔法を受けたことがなかったみたいね。


「力としては小さいものですわ。それに使えるようになったのはエリオット様の婚約者になってからです。だから聖女としての修業をしていませんし、国からも認められていないのです」


 そう、聖女は神殿で修行して認められなければいけないけれど、私はエリオット様の婚約者だったからそんな機会は与えられなかったわ。


「それは…でも…」

「大きな傷や病を治せる力はありませんの。多分、修行をしても聖女にはなれなかったと思いますわ」


 私の力は大したことがないとお祖母様は仰っていたし、王家にも伝えたけれど神殿に入れとは言われなかった。それは私の力が聖女になれるほど強いものではなかったからでしょうね。


「いえ…お使いになれるというだけでも凄いです…」

「そう?でも、あまり人に知られたくはないの。エリオット様にもそう言われていたし。だから……内密にね」

「は、はい。勿論です」


 エリオット様は私に聖女の力があると伝えても信じなかったから、力があるなんて言うなと命じられていた。それに、この力を過信されるのは困るし、無暗に人に広められるのはもっと困る。聖女の力は希少で悪用されることもあるから。


護衛たちは初めて目にしたらしい力にまだ困惑しているようだったけれど、それも仕方ないわ。聖女は基本的に神殿にいるからお目にかかる事は少ないし、その技を目にするのはもっと稀だから。




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