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婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です【コミカライズ】  作者: 灰銀猫
第四章

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私の望む形

 これからは私の望み通りにと仰ったラリー様だったが、私の手を取り微笑ましいと言わんばかりの表情のラリー様に私の心臓は跳ねっぱなしだった。それに…思い過ごしかもしれないけれど…私の気持ちはすっかりラリー様に伝わっているようにも見えた。


(…ユ、ユーニス…)


 恥ずかし過ぎてラリー様を直視出来ず、またこの状況を何とかしたくて彼女の姿を求めたけれど…


「ユーニスなら、先ほど出て行ったよ」

「へ…?」

(ど、どうして…!)


 私が思っている事をさらっと言われて、私はさらに混乱してしまった。顔が赤くなっている自覚はあるし、心臓が全速力で走った後みたいに跳ねているのが手からラリー様に伝わっているような気が…する。最後の頼みの綱だったユーニスまでいなくなって、私は袋小路に追い詰められた気分になった。


「シアはどうしたい?夫婦になる?それとも白い結婚?兄妹のような関係でも構わないよ。シアがどんな形を選んでも、家族として仲良くしていきたいと思っている。シアが望む通りに」

「で、でも…」

「でもはなしと言っただろう?」

「…っ!」


 そう仰ったラリー様が距離を詰められて、私は出そうになった悲鳴を飲み込むので精一杯だった。恥ずかしすぎて気が遠くなりそう…だ。私は長年婚約者がいたけれど、男性に不慣れなのだ。婚約者とはずっと不仲で放置されていたし、地味で面白味がないと言われていた私に声をかける男性なんていなかったから。


「あ、あの…」

「ん?」

「ほ、保留…は…」

「却下」


 一先ずこの場を…と思った私の考えはお見通しだったのか、一言で退けられた。これって、もしかして…


「言うまでこのままだよ?」

(ひぇっ!)


 思っていた事をまた言葉にされたうえ、更に顔を近づけられて、私はその圧に完全に飲まれてしまった。心臓が壊れそうなくらい早くて、頭の中がごちゃごちゃなのか真っ白なのかもわからないくらいに私は混乱の極みにいる…と思う。この時は、ちゃんと答えないと解放されないという事だけは…理解出来た。


「さぁ、シア?どうしたい?」

「…あ、あの…」

「早く言わないとユーニスが戻ってきてしまうよ?それとも、ユーニスにも聞いて貰う?」

「そ、それはダメです!いっ、言います!」


 こんな話、ユーニスにはとても聞かせられなかった。だって…彼女に聞かれたら王妃様に嬉々として報告しそうだから…それに…私の気持ちはラリー様には伝えたという事になっているのだ。実は違いました…なんて事が知れたら、何を言われるか…


「そう?」

「…ふ、普通で…お、お願いします!」


 正直言って、何が普通なのかとかそんな事は頭になかった。後で思い返しても、何を言ったんだ私…と思ったくらいなのだ。でも、この時の私は…ラリー様とユーニスの二人の圧に完全に負けていたと思う。


「…普通…?」

「へ?あ…あの…」

「普通の夫婦を望むって事?」

「あ、あのっ!そ、それは…」


 言ってから私は、自分が言った事が答えになっていない事と、ラリー様が普通の意味を一般的な意味で捉えていると悟った。慌てて言い換えようとしたけれど…ラリー様の表情に、私は息を飲み込んだ…ラリー様が…一瞬だけど今まで見た事もない表情をされたからだ…


「…よかった」

「え?」


 その表情の意味をどう受け止めていいのかと思い巡らせていた私は、小さく安堵するかのように呟いた言葉を耳にした瞬間、私は何かにぶつかるのを感じた。それがラリー様に抱きしめられているのだと理解するのに三回瞬きする時間を要した、と思う…どうしていいのかもわからず、私はただ息をひそめるしか出来なかった。


「…ラ、リー…様…?」


 どうしてこうなっているのか、私の頭は直ぐには理解出来なかった。さっき見たラリー様の表情の意味も。先ほどのラリー様は、切なさと苦しさが交じった表情で、私の答えをどう受け止めているのかが全くわからなかった。よかったとの言葉から、私の答えがラリー様の意に沿っているみたいだけど、だったらどうしてそんなに苦しそうなのかがわからなかった。


「…シアは…私と夫婦になるのは、嫌じゃない?」


 耳元で囁くように放たれた問いに、私は益々身体を硬直させてしまった。ラリー様のお声は低めなのによく通るのだけど…今は掠れ気味で、背中に鳥肌が走るようなぞわぞわした感じがした。私が返事をしなかったせいか、ラリー様が再び私を呼ばれて、私は慌ててこくこくと頷くしか出来なかった。でも…混乱した頭でも、私は気になる事があって、それを無視する事が出来なかった。


「…あ…あの…でも…ラリー様は…お嫌では…ないのですか?」


 聞かない方がいいだろうか…聞けばラリー様の気遣いを無駄にしてしまうだろうか…と思ったけれど、聞かないのは何だかずるい気がして私はためらいながらも口を開いた。


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