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【完結】ギャルに優しいオタク君【コミカライズ&書籍化】  作者: 138ネコ
高校2年

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第163話(優愛ルート)「最近一緒に出掛ける事がなかったので助かります」

「さて、詩音たちは何とかなったけど」


 二人仲良く手を繋ぎ、カップルが行きかう大通りを歩き始めたエンジンと詩音。

 骨が折れるかと思ったが、既にカップルが成立しているだけあり、思った以上にすんなりとクリスマスデートを始めた二人を見送り、歌音は満足そうに頷く。


「問題は、優愛と小田倉君か……」


 駅前にある噴水広場。

 待ち合わせ場所として有名であるが、今日はカップルだらけである。

 ややおしゃれた感じがするので、デート前のテンションを上げる場所として選ばれがちの場所、なのでクリスマスといった特別な日は特にカップルの待ち合わせが多くなる。

 そして、カップルが多すぎるゆえに、いたたまれなくなりカップル以外の待ち合わせは別の場所を選びたがる。故にカップルだらけになる。


 そんな場所で、そわそわしながら優愛が一人立ち尽くしていた。

 普段なら優愛が一人で待ち合わせ場所にいようものなら、野郎共がほっておくわけもなく、大抵ナンパにあう。

 が、この日は違っていた。

 優愛が一人ぼっちだというのに、誰も優愛に声をかけようとしないのだ。

 それもそのはず。この時期にこの場所で一人でいるという事は、十中八九恋人を待っている。

 声をかけても断られるのは目に見えている。

 クリスマスにボッチは嫌だからと、クリスマス当日になって必死に相手を探している男連中にとっては、今日は一分一秒すら惜しい状況。 

 なので、少しでも確実性のある相手を探すため、優愛は声をかける対象からは除外されているのだ。

 もし優愛が、カップルの少ない待ち合わせ場所に立っていたなら、それはもう入れ替わり立ち代わりで男が寄って来ていただろう。

 そんな状況を見て、オタク君が声をかけづらくなってはいけない。そう思い、歌音はあえてカップルが多い待ち合わせ場所を指定したのだ。


「お待たせしました」


 優愛から遅れる事数分。オタク君も待ち合わせ場所に到着する。

 女子連中に選んで貰った服を着こなし、見事に垢ぬけた感じのファッションに身を包みながら。


「ううん。今来たところだよ」


 まるでカップルのような会話をしながら、エンジン(詩音)遅いねと話すオタク君と優愛。

 当然二人は来ない。今日の目的は、四人で集まると見せかけて、オタク君と優愛を二人きりにするのが目的なので。

 とはいえ、ここでドタキャンは流石にわざとらしいが過ぎる。

 もちろん歌音はそれくらいは心得ている。なので、あらかじめドタキャンの理由を考えていた。

 オタク君がスマホの通知に気づき、メッセージ画面を開く。


『すまぬ小田倉氏、詩音氏と良い雰囲気になったから、二人きりになりたくて……鳴海氏には申し訳ないが適当に体調不良と伝えて欲しいですぞ』


 エンジンからのメッセージである。

 内容を見て、全くと小言を言いながらもほっこりしたような笑顔を見せるオタク君。

 ドタキャンは宜しくないが、二人がそれだけ親密になったことは喜ばしい事である。


『分かったよ』


 そう返事を送った後に、優愛を見る。 

 優愛も同じようにスマホにメッセージが来ていたのだろう。

 ヤレヤレといった感じでオタク君を見る。


「詩音は急に体調不良だってさ」


 小悪魔のような笑みで、スマホの画面をオタク君に見せる優愛。


「エンジンも体調不良みたいですね」


 同じくスマホの画面を優愛に見せるオタク君。


「カーッ、クリスマスだからって私たちをダシにしておいて、自分たちは良い雰囲気になったから抜け駆けしますとか、どうよ」


「全く許せないですね」


 そう言って、二人して笑う。


「どうします?」


 元々はエンジンと詩音が四人で集まってパーティしようと誘って来た集まり。

 エンジンと詩音の関係を発展させるのが目的だったオタク君と優愛は、既に目的を達成してしまっている。

 実際はエンジンと詩音の恋仲を発展させつつ、オタク君と優愛を二人きりにするための歌音の策略なのだが。

 ここまでは歌音の計画通りなのだが、問題はこの後である。

 どうやってオタク君と優愛をデートさせるか。

 エンジンと詩音が上手くいったので、あとはオタク君と優愛がデートをすれば成功である。

 しかし、オタク君と優愛が「エンジンと詩音が上手くいったから帰ろうか」になってしまっては意味がない。

 なので、歌音が考えに考え抜いた結論、それは。


(このまま帰らずに、デートに行って!)


 諦めて祈る事だった。

 もはやこの状況では、自分が何をやってもわざとらしくなってしまうだけである。

 なので、最後はオタク君と優愛の手にゆだねるしかなかった。

 祈るような、というか祈りながら必死に木陰からオタク君と優愛を見守る歌音。

 

「うーん。どうしようか?」


 が、この状況ではどう見ても帰りましょうかになる雰囲気でしかない。

 今回もダメだったか、そう思い歌音がため息を吐いた時だった。


「もし優愛さんが暇でしたら、冬物の服を見たいので、付き合ってもらえると助か」


「行く! めっちゃ暇だからめっちゃ行く!」


 オタク君の言葉を最後まで聞かずに、全力で返事をする優愛。

 

「最近一緒に出掛ける事がなかったので助かります」


「そういえばそうだったね。なんか最近一緒に出掛ける事なかったね」


 今までの分遊び倒すぞと意気込む優愛に、オタク君は嬉しそうに返事を返す。

 どこから行こうかと言いながら歩き始めた二人を見送る歌音。


「あーあ、ウチも恋人欲しいな」


 ジレジレのカップルを見守るのは楽しいが、終わった後に感じる切なさに、そう口に出してしまう歌音。

 クリスマスに「恋人が欲しい」とつぶやくギャル。この後ナンパ目的の男が歌音に押し寄せたのは言うまでもない。

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