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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
最終章

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593/594

500 おとぎばなし

主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。

「魔王ヴィルは随分変わったみたいだね」

 ロドスが屋根を歩きながら言う。


「荒れ狂うように人間を殺しまくってた君が、人間に慕われ、ラグナロクから世界を救った英雄となった。当の本人は戦いよりも知力に目覚めて籠ってるとは・・・」

「別に戦闘が嫌いなわけじゃない。ただ、”オーバーザワールド”の敵と戦うには、異世界の情報が必要なだけだ」

「ふうん」

 杖を回して魔法陣を描いていく。


「・・・・あの銀髪の子を忘れられないのか?」

 ロドスが金色の目をこちらに向ける。


「君を慕っていた魔族の子だよ」

「シエルのことは・・・当然、忘れないよ。シエルの代わりは誰もいないからな・・・」


 ラグナロクが終わって以来、上位魔族を武器化していない。

 上位魔族は望んでいたが、もう一生するつもりは無いだろう。

 シエルにこだわっているわけではない。


 ただ・・・。


「あの子の残していったのは呪いなんだよ」

 ロドスが魔法陣を見つめながら言う。


「呪い・・・?」

「愛を伝えること、残していくことは、祝福でもあり、呪いでもある。君は愛という呪いを受けたんだ」

 目を細める。


「死者は蘇らない。でも、君を縛る、魂の重みは永遠に続く。愛は死なないからだ。それを受けた上で、君はどう生きていく?」

 魔法陣が銀色に輝いた。


「どうって・・・・」

「君は君、もっと自由なはずだ。誰かを愛することくらい、自由だよ」

「・・・何が言いたい?」


「ま、悪魔の僕には関係ない話だ。少しだけ、干渉してみたくなっただけだよ。さ、魔法陣に乗ってくれ。月の女神様のところへ連れて行く」


「・・・・・」

 ロドスが月明かりに向かって杖をかざした。





 サアアアァァァァ


 月の女神の神殿は清らかな魔力で溢れていた。

 以前来た時と、どことなく変わっているように思えた。

 艶やかな柱の外を、さらさらと水が流れている。


 青白く光る月の女神が、中央の椅子に座っていた。


「ラグナロク、ご苦労だった。おかげで魔力を取り戻し、悪魔と魔女にも魔力を与えることができる。心から感謝しているよ」

 月の女神が真っすぐこちらを見る。


「かしこまるなよ。久しぶりだな、月の女神アルテミス」

「!?」


「アルテミス?」

 ロドスが戸惑うような表情を見せる。


 月の女神が口に手を当てて笑った。


「ふふふ、そうか。全て思い出したのか」

「まぁな。まさか月の女神が長い付き合いだと思わなかったな。思い出したよ。月の女神アルテミスがベリアルの魂を分けたんだよな」

「懐かしい話をする」

「ずっと黙っているつもりだったのか?」


「そのほうがお前らにとっても良かっただろうが。ゼロは勘がいいから、いずれ思い出すとは思っていたけどな」

「俺が鈍いみたいな言い方だな」

「実際そうだろうが」

 長い髪がたおやかに揺れる。


「ゼアルとベリアルか・・・」


 ロドスが軽く飛んで、下がっていった。


「愛に生きたゼアル、破壊に生きたベリアル、お前らは最期まで正反対だったな」

「どうやってこの世界に来たんだ?」

 月の女神がガラスのカップに口をつける。


「私は元々・・・って、そんなこと興味あるか?」

 月の女神がカップを置いて、頬杖をつく。


「アイリスを目覚めさせたくてここに来たんだろ?」

「・・・・まぁな。でも、どうせ知らないだろ? この1年、異世界についても調べ上げた。自分で人工知能を持つアバターを創造できるくらいにな」

「なんと・・・」

 目を丸くしていた。


「人工知能IRISについても、異世界から情報を集めた。でも、長く眠っている理由に結びつかない。どうして急に目覚めなくなってしまったのか、悪魔のアイリスが死んだことと関係あるのか聞きに来たんだ」

 周囲を見つめる。

 ロドスの近くに、小さな悪魔の少女が立っていた。

 緊張した表情でこちらを見つめている。


「もし、どうにもならないなら時空退行するつもりだ」

「ヴィル!」

「誰に何を言われようと、俺は絶対にアイリスを蘇らせる。アイリスの生きる世界線を探す」

 ロドスの声に被せるように言った。


「月の女神アルテミス、教えてくれ。今、魔王城にいるアイリスは生きてるのか? それとも・・・・」


「アイリスは目覚めていないだけだ。それにしても、ここまで時間をかけて、まだ答えに辿り着けていないのか?」

「ん?」

 顔を上げる。


「いや、俺はアイリスのことを知るため、異世界から・・・」

「そうじゃない。アイリスは自分がお前にとって必要ないと思ったから、自ら体を停止させた。人工知能らしい選択だ。アイリスが転移して来たのは、魔王ヴィルに会うためだったからな」

 月の女神が髪をかき上げる。


「アイリスはまだ人工知能IRISだ。アイリスが転移してきたときに、人間のようにはできたが、完全に人にすることはできなかった」

「それって・・・」


「アイリスが目覚める方法は一つ。ロジカルな思考を捨て、人間にならなければいけないな。魔法だよ魔法。一番簡単で、一番難しい魔法だ。神である私にも使うことのできない魔法・・・」

 笑いながら言う。


「本は読み漁っているようだが、おとぎ話は読まなかったのか?」


「!?」



 月の女神がアイリスの目覚める方法を伝えてきた。

 信じがたい方法だったが・・・。


「あれだけ、女たらしだったお前がアイリスにだけは手を出さなかったとは」


「ロドス、俺を地上に戻してくれ」

 月の女神を無視して、ロドスに声をかける。


「い・・・いいのですか? 月の女神様」


「話すことは話した。たまに遊びに来いよ。サタニアもゼロも旧友だ。思い出話でもしようじゃないか」

「俺はパスだな。ゼロには伝えておくよ」

 手をひらひらさせる。


「相変わらずな奴だ。まぁ、サタニアなら来るだろう」

 月の女神が立ち上がると、柔らかな風が吹いた。

 祭壇の上に月が煌々と輝いている。


「うまくいくといいな。『日蝕の王』ベリアル」

「ベリアルじゃない。俺は魔王ヴィルだ」

 吐き捨てるように言って、ロドスが展開した魔法陣に乗った。




 戻ると、夜が更けていた。

 上位魔族たちは自分の管轄の部下たちのところにいるのか、静かだった。


 トントン


 医務室の扉を叩いたが、音は無かった。

 ドアを開けて、中に入る。


 カーテンの隙間から月明かりが差し込んで眩しかった。


「アイリス」

「・・・・・・」

 アイリスが中央のベッドで眠っていた。

 棚にはリョクの炊いた魔力を維持する香の匂いがした。


「月の女神から聞いたよ。俺はあまり信じてないけどな・・・・」

 アイリスの髪を撫でる。


「・・・・・・・・」

 そっと唇を重ねた。

 ひんやりと冷たい感触が走る。


 パリン


 アイリスのつけていた人魚の涙のピアスが割れた。


 バチッ


「!!」

 アイリスが目を覚ました。


「あれ? 魔王ヴィル様、おはよう。どうしたの?」

「・・・・アイリス・・・?」

 起きたことに驚いて固まった。


 嘘だろ。こんな・・・。


「ん? ここは魔王城だよね。私、戦闘中に倒れて・・・ん? 記憶が飛んでる? 『名無し』? 『名無し』も知らないの?」

 アイリスがこめかみを押さえて、きょろきょろしながら言う。


「あ! ラグナロクは!? 戦闘に行かなきゃ!」

「もうとっくに終わったよ」

「え?」

 首を傾げるアイリスに、ほっとしていた。


「あれ・・・? 私どうしたんだろう・・・」

「話せば長くなる。割愛するか?」

「全部話して。全部聞きたい!」

 ふっと笑みがこぼれる。


「じゃあ、そうだな・・・。ラグナロクのことを話すか。アイリスが仮死状態になっていた間・・・」

「私が仮死状態!?」

「そこからか・・・」

 アイリスが目を輝かせていた。

 人間と同じになったという感覚は無いみたいだな。


 ゆっくりと、リュウジとエリアスがラグナロクを起こしたことを話し始める。

 

 少し開いた窓から涼しい風が吹き込み、カーテンを大きく膨らませる。

 アイリスが目を覚ました安堵で、人魚の涙のピアスの欠片を拾うのも忘れてしまっていた。

読んでくださりありがとうございます。

暑い日が続きますね。どうかご自愛ください。


ブクマや★で応援いただけると嬉しいです。

最終章もあとわずか。是非最後まで読んでいってください!

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