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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
最終章

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475 愛ゆえ・・・

主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。リュウジによって、アバターを失い、異世界へと帰っていった。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。

エリアス・・・リーム大陸のダンジョンの精霊であり、ゼロのアバターを創った。人工知能に恨みを持っている。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

 五古星はいつの間にかいなくなっていた。

 消えたのか、エリアルが同時に連れていったのかはわからない。


 失ったものは大きく、サタニアはしばらく泣いていた。


 ユイナが元の世界で、伸び伸びと過ごせることを祈らずにはいられない。


 天使たちがどこに逃げたのか、ライとエルも見つからなかった。

 ゼロはサタニアを追いかけてくるのではないかと心配していた。


「テラ、アイリスのこと、何かわかったか?」

「うーん」

 アイリスが展開した転移魔方陣を使って、魔王城に戻ってきていた。

 数時間経っても、アイリスは目を覚まさないままだ。


「ウイルスは検知されないな。消耗のし過ぎ? いや、IRISのキャパは自己圧縮できるから無限だ」

 テラがモニターにアイリスの全身を映して、分析していた。

 エヴァンがモニターを覗き込む。


「登録されていないウイルスってことはないの?」

「可能性はゼロじゃないけど、可能性は低い。ウイルス検知ツールをいくつかかけたけど、ここまで何も反応がないなら、バグったわけじゃなさそうだ」

「アイリス・・・・」

 アイリスの額を撫でる。


 ゆっくりとした微弱な呼吸を感じる。

 仮死状態とはいえ、眠っているようだった。


 アイリスが目覚めないとなれば時空退行がある。

 でも、どの時間軸からやり直せば、この状況を打破できる?


 リュウジが俺たちと行動したあの時間軸から・・・・。


「ヴィル」

「ん?」

「アイリス様は最強だ。きっと目覚める方法がある。レナにも見てもらおう」

 エヴァンが心を見透かしたように言う。


「『クォーツ・マギア』と接続させたんだ。力を使いすぎたのかもしれない」

「アイリス・・・」

「コードが読めないことはない。もう少し探ってみるよ」

 テラがモニターを見つめながら、文字を打っていた。


「ナナココは何かすることある?」

「テラの邪魔をするなよ」

「はーい」

 ナナココがソファーに寝転がりながら、退屈そうに話していた。


「配信できないって退屈だなぁ」

 天井を見ながら言う。


 トントン


「ヴィル、ここにいたのね」

 サタニアが医務室に入ってくる。


「ロドスが目を覚ましたらしいの。ヴィルと話がしたいって」

「今行く。アイリスを頼んだ」

 テラが軽く手を上げた。


 立ち上がって、アイリスから離れていく。

 エヴァンが少し経ってからついてきた。

 


「サタニアは体調に問題ないのか?」

「うん。このペンダントが魂になったみたいなんだけど、魔力は全然変わりないの。しいて言うなら、まだ慣れてないから、身体が少し重いかな」

 サタニアが星空の髪飾りを紫の髪につけていた。

 廊下を歩いていく。


「やっぱりその髪飾りは、サタニアが一番似合うな」

「ふふ、ありがと。そういえば、レナが持っていたのよね? どこで見つけたのか聞いたんだけどはぐらかされちゃって、どうして持っていたのかわからないの」

 サタニアが髪飾りに触れながら歩く。


「ユイナは私たちにとってこんなに大切な存在になってたのね。ぽっかり心に穴が空いたみたい・・・」

「あいつには色々世話になったからな。何もしてやれなかったのが、心残りだ」


「これからよ。あの2人に勝たなくちゃ」

 サタニアが無表情のまま言う。


「絶対に」

「あぁ」

 低い声で頷いた。


 リュウジとエリアスの動向はまだ、掴めない。

 各地でメタルドラゴンの目撃情報があり、ププウルが魔族から情報を集めていた。


「ヴィルも、ゼロも、上位魔族のみんなも、遠い昔に会っていたのね。初めて会った気がしなかったもの。レナも・・・」

 星空の髪飾りが廊下の明かりに反射して輝く。


「レナも、もしかしたら私たちの・・・あの世界にいたのかな? この髪飾りを持っていたってことは、私・・・」

「さぁな。今は片付けなければいけないことが多い。落ち着いてから聞けばいい」

「うん。そうね」

 ”オーバーザワールド”との接続で、ダンジョンから逃げてきた、魔族の子供とすれ違う。


 俺たちに気づいて、深々と頭を下げてきた。

 サタニアが声をかける。


「・・・・・・・」

 エヴァンが少し離れたところから、歩いてきた。

 口に手を当てて、窓の外を見つめている。

 何か考え事をしているようだった。

 



 自分の部屋の扉を開ける。


 ガタン


「あー、デンデ、俺の肉とったな!」

「ジオニアスのじゃない。名前書いてないだろ?」

 椅子を引く音がした。


「全く、品がない連中だ」

「ベリアル。ベッド借りてるよー」

「そっちの皿食べないなら僕が貰うよ」

「アイリスは?」

「あ、デンデ、私のデザートまで食べないで!」


「・・・ここ、俺の部屋だよな?」

「そうなんだけどね・・・」

 サタニアが言いにくそうにしていた。


 ゼロが当然のようにソファーに座っていて、テーブルには七つの大罪が席についていた。

 マキアが運んできた料理を勢いよく食べている。

 ベッドではオベロンとアベリナが揉めていた。


「ふぅ・・・」

 レナが窓の傍でハーブティーを飲んでいる。


「どうした?」

「ゼロとレナはともかく、なんで七つの大罪までここに居るんだ?」

「別室に行くよう言ったんだけど、聞かなくて」

 サタニアが頭を抱えた。


「うわぁ、自由過ぎるね」

「カオスだな」

 エヴァンが部屋を覗いて笑っていた。

 いつの間にか、アベリナとオベロンがどっちがソファーで寝るかで揉めている。

 

 何度も見たような光景だった。

 こいつら何かと俺の部屋に入ってくるんだよな。


「肝心のロドスはどこにいるんだよ」


「僕ならここだよ」

 天井を見上げると、空中に浮かぶ椅子に乗ってくつろいでいた。

 腕と足には包帯が巻かれている。


「!」

 椅子をパッと消して、床に降りてきた。


 タンッ


「床は混んでるから浮いてたんだ」

「だろうな」

 七つの大罪の6人がドタバタしていた。

 サタニアがロドスの顔を見て緊張している。


「エルフ族の巫女のおかげでかなり回復できた。感謝するよ」

「魔力は元に戻っていませんが、月の女神が弱っているから回復に時間がかかるのかもしれませんね。一命を取り留められてよかったです」

 レナがハーブティーを置いて話す。 


「話ってなんだ?」

「伝えておこうと思って。ラグナロクが始まったんだ」


「ラグナロク・・・ですか・・・」

 レナがびくっとする。


「・・・・そこのエルフ族の巫女なら知ってると思うが、ラグナロクは死と滅亡の運命のことを指す。星々の落下が疑われたが、そうじゃなかったようだ」

 ロドスがサタニアを睨みつけながら言う。


「普段は悪魔が勇者のサポートに回り、月の女神の与えた力で戦うのが一般的だったんだけどな。残念だけど今回は僕しかいない」

 ロドスが漆黒の翼をたたんだ。


「ラグナロクを止められないとどうなるんだ?」

「世界の滅亡だ。数々のラグナロクが起こって、神の御業によって回避されてきた。生命がこれまで生き残れてきたことが奇跡のようなものなんだよ」

「・・・・」

 レナが何か話そうとしたが、口を閉ざした。


「今回、生き残れる確率は16%とみている」

 ロドスが七つの大罪のほうを見る。


「まさか異世界の奴らに、僕ら悪魔がここまでやられるとはな。でも、過ぎたことは仕方ない。生き残った以上は、悪魔としての仕事を果たすよ。先に亡くなった3人への敬意だ・・・」

 長い息を吐く。


「ラグナロクの中心は2人の異世界の少年で間違いない」

「リュウジとエリアスか」


「そうだ。目立つ行動してなかったが、上手く欺かれたな」

 ロドスが包帯を巻きなおした。


「これから各国の勇者に通達に行かなければ。一人で憂鬱だよ」

「ねぇ、俺は勇者だけど、ヴィルと俺は同時にこの世界に存在できないんだろ? そろそろ戻る予定だけど、空いた席ってどうなるの?」


「あぁ、話してなかったな。戻る必要はない」

「?」


 くるっと指を回して、ペンと本を出す。

 幼少型のアイリスが持っていたものと同じだった。

 ページをめくる。


「悪魔の書と呼ばれる、月の女神が指示した魔神について書き記した書物だ。僕の担当ではなかったけど、悪魔のアイリスの最期に渡された。この言葉を以て、完成とする」

「は?」


「最期に悪魔のアイリスが書いた文を読むよ。『ヴィルとゼロの記録は全て書き留めた。2人は数日間魂の揺らぎを感じる可能性はあるが、数日後元に戻るだろう。悪魔の記録により、魂は各々の肉体に固定された。信仰を取り戻し、力を得て、2人は自由の身となる』だって」

 本をぱたんと閉める。


「信仰?」

「どうゆう意味だ?」


「全てを理解する必要はない。君らはアイリスの記録によって、魂をこの世界に留まらせることが可能になった。元々は同時に存在することが許されない魂だったらしいけどね。僕は知らないけど、前世が関わってると聞いてる」

「・・・・・・」

 ゼロが口をつぐむ。


「この一冊の本を死ぬ間際に書ききったんだ。アイリスは優秀な悪魔だった」

 悲しそうに俯いた。

 本の表紙に月の印が描かれている。


「勇者の記録を追うだけでも大変なのに、よく頑張ったよ・・・この本は悪魔のアイリスの集大成といってもいい。今は月の女神の宝物庫に保管している、ペンもね」

 指をくるっと回すと本とペンが消えていった。


「僕が言いたかったのはこれくらい。そろそろかな?」


 ロドスが窓の外を見ながら言う。

 少し開いた窓から風が吹き込んだ。




 サアアァァ


 窓から月明かりが差し込む。


「久しいな、ワルプルギスの夜以外で、我がここに来るのは・・・」

 蒼い目をした12歳くらいの少女が現れる。

 デンデが肉にかぶりついたまま固まっていた。


「・・・・・」

 ロドスとサタニアが頭を下げる。


「誰だ?」


「月の女神だよ」

 エヴァンが横で口を挟んだ。


「そうだ。よくわかったな、クロノスの犬」

 腕を組んで俺とサタニアを見上げた。

 

「その呼び方やめてくれない?」

「月の女神・・・って、なんだか随分と小さくなったな。レナと同じくらいか?」

「レナはもう少し大きいです。最近、身長も伸びてますから」

 レナがむきになって言う。


「フン、相変わらずやかましい奴らだ。無駄話をしている余裕はない。我も力を失い、部下も失い、このような幼少体になってしまった。だが、ラグナロクが始まっているのだ」

 ゼロのほうに視線を向ける。


「お前らにも力を貸してもらう。一時的にゼロを『クォーツ・マギア』に送り込んだが、悪魔のアイリスが、贄になる間際まで書き続け、成し遂げた。全てはベリアルへの愛ゆえだ」

「愛・・・・?」


 思わず呟く。


「愛こそ、魂を定義する魔法だからな」


 幼少型のアイリスと最後に会ったとき姿が頭に浮かんだ。

 拳を握り締める。


 俺はアイリスに何もしてやれていない。

 この絶望したルートを打破するために、残されたカードは一つだ。


 悪魔のアイリスが死なないルートを模索する。

 時空退行をするしかない。

 アイリスが俺のためにしてくれたように、俺も・・・。


「・・・・・・」

 ロドスが何も言わずに、こちらを見ていた。

読んでくださりありがとうございます。

「愛ゆえ」これはいろんな伏線になっています。


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

是非また見に来てください。

今週中にアップします。

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