472 The Seven Deadly Sins⑨
主要人物
魔王ヴィル・・・魔族の王
勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。
アイリス・・・人工知能IRIS
サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。
レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。
エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。
ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。
リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。
イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。
フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。
メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。
ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。
トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。
ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。
「遠距離戦は難しい。近距離に移行!」
「これから罪人を処罰する!」
完全に星の女神アスリアになったサタニアは、次から次へと攻撃を仕掛けてくる天使と堕天使を、たった一人で圧倒していた。
羅針盤の横について、杖が指すほうに巨大な隕石を落とす。
― リュシXXXX ウルXXXXXXXXX
XXXXXXXXXXXXXX ラレモ ナ-
ゴオオォオオオオ
「来るぞ! シールドを展開しろ!」
「っ・・・間に合わない!」
「うわあぁああああああ」
サタニアが差した方向に、巨大な隕石が降ってくる。
天使も堕天使も逃げられないスピードだった。
ドドドドドドド・・・・
「逃げろォオオオオっ」
地面に大きなくぼみをいくつも作る。
逃げ遅れた天使たちが隕石を覆う紫の炎に巻かれて、消滅していった。
本来は俺たちのいる場所が巻き込まれてもおかしくない。
サタニアはかなり手加減しているように見えた。
「ウリエル様、ミハイル様、ガブリエル様、メタトロン様、このままでは天使と堕天使が全滅してしまいます!」
天使の一人が仲間の怪我を治療しながら話す声が聞こえる。
ドドドドッドドドド・・・・
サタニアは、気にせず羅針盤を回し、隕石を落としていた。
攻撃をする隙すら与えない。
七つの大罪を直接狙ってきた堕天使には紫の火球を当てる。
365度、敵を見なくても攻撃が止むことはなかった。
当然だ。
星の女神アスリアは、20以上の国軍が集結して攻撃しても無傷だったんだからな。
「あれがサタニアってマジ・・・?」
「アスリアは星々を降らせるたびに強くなっていったんだ。誰も倒せる者がいなくなって、自分で制御できなくなって、俺が殺したんだ」
「どうやって?」
「『日蝕の王』ベリアルしか知らない魔法で、黄金の羅針盤を無効化するんだよ」
シエルは『日蝕の王』の亡骸の傍から離れなかった。
サリーがそっと近づいてシエルを抱きしめる。
「・・・・・・」
ユイナがサタニアのほうを目で追っている。
「ユイナ、どうした?」
「なんか見たことあるなって。あの星の女神アスリアの戦い方・・・・知ってる気がするんです。たぶん、見たことあります」
「えっ、ゲームやったことあるの?」
「あ、いえいえ。タイトルとか覚えてないので、どうゆう世界だったかは、はっきり思い出せなく・・・あと・・・」
ユイナがモニターを出して、指を動かした。
髪飾りが出てくる。
「この、レナから借りた”星空の髪飾り”ですが、昔プレイしたゲームのものだったんです。リュウジのゲーム記録装備品一覧に残っていたみたいで・・・具体的にどんなゲームだったのかは、わからないそうですが・・・」
「これは・・・」
「アスリア様のもの!」
アベリナが背伸びして覗き込む。
「間違いないな。アスリアはアクセサリーを装備しなかったが、これだけはいつも持ち歩いていた」
「どうして異世界の者が持ってる?」
「えっと、エルフ族のレナが・・・」
「エルフ族?」
アベリナが首をかしげる。
銀色に輝く、付与効果を増強するもの・・・。
ゼアルが渡したものだった。
埋め込まれた小さな魔法石が光の加減で七色に輝く。
「北の果てに行ったとき、ユイナに渡してたものか」
「はい」
「なんでレナが持ってたの?」
「さぁ・・・レナに聞かなきゃわからないな」
異世界住人が落としていったのを拾った?
いや、異世界住人を嫌っていたレナがそんなことするようには思えない。
じゃあ・・・・。
「みんな隠し事が多いね。レナもまだ何かあるのか・・・」
「エヴァンだって、人のこと言えないだろ」
「俺は割とオープンにしてるつもりだよ」
エヴァンが簡易シールドで砂埃を避けながら言う。
「・・・・・・・」
ユイナが星空の髪飾りを握って、サタニアのほうを見つめていた。
天使と堕天使たちは炎を起こしたり、氷を打ち付けたり、竜巻を起こしたり、あらゆる属性の攻撃をしていた。
でも、サタニアの前では無に等しい。
サタニアは無傷のまま、天使と堕天使たちを追い込んでいく。
「アスリア様はいつからこんなに力を・・・」
デンデが声を震わせる。
「怖いのか? 怯えるなよ。お前らがやったことだろ?」
「っ・・・・・」
ミーナエリスとデンデが口をつぐんだ。
七つの大罪は、星の女神アスリアがここまでの力を持つ前に転移させられていた。
アスリアの最期を見届けたのは、俺とシエルだけだ。
ガチッ
ザアァァァァァァァア
細やかな隕石が降り注ぐ。
天使たちのシールドでは受け止めきれず、逃げ惑うしかない。
「ヴィル、止められないの? 天使も堕天使も逃げる暇すら与えないじゃん。このままじゃ、国から天使がいなくなるよ」
「・・・・・・・」
天使も堕天使も既に消滅した者も多くいた。
「俺には羅針盤の無効化して殺す以外の方法がわからない。あの時もそうだったからな」
「・・・今まで一緒に旅をしてきて、見てるだけかよ。肝心な時に・・・」
エヴァンが悔しそうに地面を蹴った。
「あの、ヴィル様。リュウジからこちらに来ると連絡がありました。すみません、戦闘に集中して着信に気づいていなかったのですが・・・」
ユイナが耳を触りながら言う。
「魔王ヴィル様!!」
アイリスの声が聞こえた。
遠くを見渡したが、天使と堕天使がいて、よく見えない。
「アイリス?」
「ここだよ。ここ」
「!?」
アイリスがサタニアのいた祭壇から降りてきた。
リュウジも後ろからついてくる。
「どうしてアイリスがそこから現れたんだ?」
「サタニアの転移魔方陣があったから。私も転移魔法使えるようになったの。え・・・あれがサタニア?」
「そうだ。今は星の女神アスリアだけどな」
アイリスがサタニアの隣にある巨大な羅針盤を見て、何か勘づいたようだった。
「俺が昔いた世界・・・ゲームの世界で、あいつはラスボスだった。今、その時と同じ力を持ってるんだ」
「そう・・・」
アイリスがホーリーソードを出す。
「ん?」
「リュウジ、接続して」
「了解」
ザッ
地面にホーリーソードを突き立てる。
膝をついて手を組み、小さく詠唱していた。
ジジジジ ジジジジジジ
シュンッ
「っと」
魔法陣からゼロが現れる。
「やった、成功だね!」
「転移・・・できた。すごいね、さすがアイリスだ」
「ゼロ!」
「お、久しぶり。ヴィル」
「久しぶりって・・・」
ゼロが軽く手を振ってきた。
すぐにエメラルドのような瞳をサタニアのほうに向ける。
「『クォーツ・マギア』に転移したはずじゃ・・・まさか、接続できたってこと?」
エヴァンがアイリスとリュウジのほうを見ながら言う。
リュウジが頷いた。
「そうだ、ゼロは今のところ正常に転移完了している」
「003を介してゼロを見つけたの。接続できたから、サタニアの魔法陣で転移できるかなって思って50%の確率だったんだけど、成功してよかった」
アイリスがほっとしたようにほほ笑む。
「アイリスには結構負荷をかけたけどね。大丈夫?」
「うん。一時的な負荷で、少し熱っぽいけど平気」
「熱? 本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。魔王ヴィル様、大げさだよ。わっ・・・」
アイリスの額に手を当てる。
38度くらいになっているようだ。
「熱があるな。ここは戦闘中だ。なるべく下がって・・・」
「私は魔法を使えるんだよ。自己回復できるもの。そんなにか弱くない」
「・・・・わかったって」
アイリスが俺の言葉を遮って詰め寄ってきた。
顔色がよくないな。
「ゼロ、サタニアが大変なんだよ」
「あぁ、七つの大罪がここに居る時点でこうなる気がしてたよ」
「ゼアル! サタニア様はお前のいなくなった後、どんな想いで過ごしてたのかわかってるのか!?」
ジオニアスがゼロを見て、声を荒げた。
「そうよ。アスリア様を見捨てて、他の世界に転移するなんて」
「説教は後で聞くよ。今は、アスリアを止めないと」
ゼロが言うと、ミーナエリスが短い息をついた。
サタニアはゼロがここにいることに気づかず、天使と堕天使を攻撃していた。
ゼロは一瞬で状況を把握したようだ。
「ヴィル、あとは任せろ」
「いや、俺もついていく」
ゼロの横に並んだ。
「どうせ一時的に来れただけなんだろ? 何もできなくて勝手に死んだら、悲しむのはサタニアだ」
「あはは、俺、あんま信頼されてないね」
「当然だろ。一方的に面倒なこと押し付けやがって」
「確かに・・そうか・・・・・・・」
ゼロが地面に横たわる『日蝕の王』を見て、言葉を飲み込んでいた。
「エヴァン、アイリスを頼む」
「もちろん。サタニアのこと、よろしくね」
「あぁ」
ジジジ ジジジジ
エヴァンが剣を出して、雷属性のシールドを展開した。
「行くぞ」
「あぁ」
地面を蹴る。
ゼロと暴走するサタニアのほうへ飛んでいった。
読んでくださりありがとうございます。
完結に向けて書いてるんだな、と実感しております。
★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。
また是非見に来てください。次回は今週アップします!




