468 The Seven Deadly Sins⑤
アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗る者と行動し、”オーバーザワールド”の魔王、または『日蝕の王』を名乗り統率していた。
主要人物
魔王ヴィル・・・魔族の王
勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。
アイリス・・・人工知能IRIS
サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。
レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。
エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。
ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。
リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。
イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。
フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。
メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。
ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。
トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。
ガラディア王子・・・ポセイドン王国第一王子。陸軍のトップ。
ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。
「魔王ヴィル様、私は武器になれます。シエルの剣は魔王ヴィル様の剣では敵いません。どうか私をお使いください!」
サリーがマントをつまんだ。
「私は大丈夫です。一度、お仕えすると契約したのですから」
「今はいい。サリーに負担をかけたくない。本当は慣れてないから怖いだろ?」
「そんなこと・・・」
「少し離れててくれ」
ふぅっと息を吐く。
俺の前いた世界の呪文は神話が元になっているらしい。
様々な呪文は繋がっていた。
― XXXX グスルク XXXX
XXXX ギア XXX XXXX ―
ドォーン
ドドドドドッドドド
目の前の巨大な隕石に大きな穴を空ける。
「・・・!?」
言葉を失った。
サタニアの頭上には巨大な羅針盤が浮いていて、ゆっくりと回っていた。
アレが現れたということは・・・。
「サタニア・・・・」
サタニアが中央の祭壇に座っていた。
七つの大罪と五古星とシエルの剣を持った『日蝕の王』が、一斉に距離を置いて戦闘を中断する。
「・・・・・」
呆然としていた。
サタニアは星の女神アスリアだったころと同じ金色のワンピースを着ていた。
すぐにこちらに気づいて、目が合った。
「ヴィル」
「!」
エヴァンに呼ばれてはっとする。
「想像通り、五古星対七つの大罪って感じだね」
ニーナとシェリアが、ミーナエリスと戦っていたようだ。
ジャミラがエヴァンを見てびくっとしている。
傲慢のジオニアスと『日蝕の王』が互いにシールドを張っていた。
細かな傷を自己回復している。
「ん? どうゆうことだ? これは。ベリアルが2人?」
「おかしい・・・こっちのベリアルとあっちのベリアル、何もかも同じだ」
ジオニアスとドレークが固まる。
「だから言ったじゃん」
「ジオニアス、全然話聞いてない」
オベロンと魔神ガルドーに乗ったアベリナが文句を言っていた。
「ミーナ・・・・」
サリーがミーナエリスを見て呟く。
「魔神レヴァイアサンを服従させてきた。あっちが本物のベリアルな気がする」
「サリーも武器にしたしね」
「でも、こっちはシエルを武器にしてるだろ。シエルがベリアル以外の者に従うとは・・・」
七つの大罪が混乱しながらこちらを見ている。
五古星じゃ敵わないか。
『日蝕の王』とエリアス以外は、かなり押されていたようだった。
「魔王ヴィル・・・・」
『日蝕の王』がシエルの剣を片手で持ち直していた。
ふわっと飛んで、サタニアに近づく。
「ヴィル! エヴァン!」
ドーンッ
「なっ・・・」
サタニアが立ち上がると、暴食のデンデが思いっきり斧を振り下ろした。
地面にひびが入る。
「アスリア様、そこから動いてはいけません!」
「私は・・・」
言いたい言葉をぐっと飲みこんでいた。
「ヴィルとエヴァンと話がしたいの。これからのこと、話したい。自由にさせて」
「アスリア様は騙されてる」
「そうだよ。ベリアルはアスリア様を裏切った! アスリア様を殺したんでしょ!?」
オベロンが槍を両手で持つ。
「友人だと思ってたのに」
「アスリア様と一緒にいるべき者じゃない! ここで抹消する」
「落ち着け。『日蝕の王』ベリアルは俺だ」
『日蝕の王』が堂々と歩いてくる。
「アスリア、話なら俺が聞く」
「貴方はベリアルだけど、ベリアルじゃないよ。さっきから言ってるじゃない。ジオニアスも本当、昔から人の話を聞かないんだから」
「っ・・・・」
サタニアが力なくほほ笑む。
ジオニアスが気まずそうな顔をした。
「俺が『日蝕の王』ベリアルだ。プレイヤーを楽しませるだけの世界を終わらせるためにお前を殺したベリアルだ。見ろ。五古星を率いて・・・」
「いつまで部下に過去の名前をつけてるんだ?」
「は?」
「”五古星”って名前のことだよ」
『日蝕の王』が反応する。
「魔王ヴィル様・・・」
ユイナがモニターを出しながら、大きな鎖鎌を装備していた。
― 魔王の剣―
剣を構える。
「相変わらずしょぼい剣だな。サリーがいるにもかかわらず武器として扱えないとは。シエルの次に強かっただろうが」
『日蝕の王』ベリアルが高々に笑った。
「違う! 魔王ヴィル様は私のことを想って武器にしないだけだ!」
「想って? まるで俺がシエルのことを想っていないような言い方だな。共に戦うことは相手を信頼することだ。魔王ヴィルはサリーのことを信頼していないのだろう」
「っ・・・・・」
「話をすり替えるなよ。クズが」
剣に黒い炎をまとわせる。
「五古星は星の女神サタニアが服従させられなかった、古い星に宿った5体の精霊に付けた名だ。なんで今更、ヴァリ族の奴らにその名前を付けてるんだ?」
「・・・・」
『日蝕の王』がこちらを睨んだ。
「過去の栄光にすがって、何がしたいんだ?」
「栄光? 黒歴史だろうが。俺はすべてをやり直すんだよ。ぬくぬくしながら、何度も死んでいったお前とは違う」
「結局、今の五古星はただの寄せ集めってことね」
エヴァンが小ばかにするように、シェリアのほうを見た。
「じゃあ、こいつらより強いヴァリ族もいて当然か」
「っ・・・生意気な・・・」
シェリアが目つきを鋭くする。
「『日蝕の王』、あんな何度も何度も同じように死んでも、気づかない間抜けなヴィルの話なんて聞かなくていいわ」
ヴィヴィアンが『日蝕の王』のそばで囁く。
「当然だ」
「・・・・」
キィンッ
一気に距離を詰めて、『日蝕の王』に剣を振り下ろす。
シエルの剣で軽々と止めていた。
ヴィヴィアンが無表情のまま離れる。
「シエルを解放しろ」
「シエルのほうから武器になると決めたんだ」
「お前がそう丸め込んだんだろうが」
シエルの剣は抵抗しなかった。
『日蝕の王』の忠実な武器になっている。
地面を蹴って、シエルの剣から離れた。
「ベリアルが2人、どちらもベリアルの気配」
「両方殺せばいい」
「そうね、それがいいわ。私の愛しきアスリア様を貶めたやつが2人。憎くて憎くて仕方がないわ」
アベリナが魔神ガルドーから降りて、グレーの毛を撫でていた。
ミーナエリスが身震いする。
「デンデ! ヴィルと話がしたいの!」
「でも・・・」
「我々はあの時のアスリア様の無念を果たすためにここに集まりました」
ジオニアスが剣を掲げると、全員が俺らと『日蝕の王』と五古星を囲んだ。
五古星の一人、ローブのフードを深々と被った者はおそらくエリアスだ。
一人だけ明らかに魔力が違う。
「こいつらが全員いなくなれば、アスリア様は自由だ」
「そうだそうだ」
「記憶がなかったとはいえ、ここまで見逃してきたことこそ恥だよ」
「この世界に入った時点で気づくべきだった」
「今から倒せばいい。倒した後に、アスリア様が豊かに暮らせる世界に」
「ジオニアス、随分大きく出たな」
腕を組んで笑う。
「お前らが俺に勝ったことなんて、一度だってあったか?」
「っ・・・過去の話だ。皆、強くなった」
「色欲のドレーク、怠惰のオベロン、嫉妬のミーナエリス、暴食のデンデ、傲慢のジオニアス、憤怒のアベリナ」
「ん? 一人足りなくない?」
エヴァンが数を数えながら指を動かす。
「強欲のバラモスはどうせまた単独行動だろ」
「よく覚えていたな。やっぱりこいつもベリアルで間違いなさそうだ」
「なんで2人いるのか不明だけどな」
ひとりひとり視線を合わせていく。
ユイナが武器を構えたまま、冷や汗をかいていた。
エヴァンがユイナに軽く話しかけて緊張を解いている。
「サタニア、その頭上にある羅針盤は・・・あの時のものか?」
「思い出したのね。そうよ。これは・・・」
羅針盤が黄金に輝き真っすぐな光を放つ。
「星を降らせる位置を示す羅針盤。私の一部・・・」
ドドドドッドドドドドドドドドッド
遠くの空から星々が引き寄せられて、地上に落下していく。
天使が一斉に、流星群を見つめていた。
「サタニア! なんか天使がいて、ヤバい状況なんだよ。止められないの?」
エヴァンがサタニアに声をかける。
「この羅針盤が現れたから、もう止められない。これが、星の女神アスリアがラスボスとされた所以だもの」
サタニアが天を仰ぎながら言う。
カチッ
黄金の羅針盤の針は無造作に動きながら、星を引き寄せる場所を探していた。
あれは星の女神アスリアの武器でもあり、心臓でもある。
壊せばサタニアも死ぬことになるだろう。
アメジストのような瞳が艶やかに光っていた。
「天使なんて気にする必要ありません」
「そうそう、我々が1体殺したしね」
「アスリア様と一方的に変な契約をしたほうが悪い。アスリア様の心臓に、あんな汚い鎖が巻かれてるなんて・・・思い出しただけで虫唾が走る」
ミーナエリスが唇を噛む。
「そのことは忘れて。契約した私に責任があるわ」
「サタニア」
「アスリア様、この者たちの口車に乗っては」
サタニアが手をかざす。
― オータム・チェア ―
「な、何をするんですか?」
「アスリア様!!!」
キンモクセイの香りのする銀色の椅子が6つ現れた。
七つの大罪たちが吸い寄せられるように座らされていた。
宙に浮いたまま、キラキラ輝いている。
「みんながここに集まって来てくれたこと、楽しい思い出があったこと思い出させてくれた。私のことちゃんと覚えていてくれたんだね。私は、忘れてしまっていたのに・・・ごめんね」
サタニアが一人一人を見上げてから歩き出す。
「当然です」
「アスリア様へのご恩を忘れるはずがありません」
ジオニアスが胸に手を当てた。
「でも、ヴィルたちと話がしたいの。話をさせて」
大きな砂時計を出して、七つの大罪の中央に浮かせた。
「その砂時計の砂が全て落ちるまで。その姿勢でいなさい」
「アスリア様!」
ミーナエリスが懇願するように叫んでいた。
「ヴィル、エヴァン、サリー、ユイナ・・・」
サタニアが祭壇から降りてくると、頭上にあった羅針盤も一緒についてきた。
「サタニア、あれは・・・どうゆう意味?」
エヴァンが羅針盤を見ながら言う。
『日蝕の王』が身構えていた。
五古星のニーナが飛び出そうとしたが、手を上げて止めていた。
読んでくださりありがとうございます。
今月の推し活は月末のみなのですが、それまでに痩せなきゃな、と思っています。
推し活大事です。
次回は週末にアップしたいと思います。
また是非見に来てください。




