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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
最終章

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555/594

462 メンバー選出

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗るヴィヴィアンと行動し、”オーバーザワールド”の魔王、または『日蝕の王』を名乗り統率していた。

ヴィルは『日蝕の王』の拠点、アルテミス王国で『日蝕の王』を圧倒したが逃げられてしまった。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。

ガラディア王子・・・ポセイドン王国第一王子。陸軍のトップ。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

「悪魔の血は特殊だと聞いていました。500年前にサンドラが治癒したことがあります。一命を取り留めたのは奇跡ですね」

 レナがロドスを魔法陣の上に寝かせていた。


肉体蘇生フェニックスは効かなかったのね」

「いえ、悪魔の肉体は人間に近いのです。肉体を蘇生すれば、あとは魔力を調整していくんです。悪魔の形にあう治療ですね」

 レナが歩きながら杖で、何度か魔法陣の魔力を調整していた。


「おそらく、悪魔の魂はここには無いので」

「ん?」

「どうゆうこと?」


「・・・・・・」

 アイリスが口をつぐむ。


「悪魔の魂は、月の女神が持ってると言われています。本当かどうかはわかりませんが、悪魔の体は人間に近いので出血多量で死ぬことはあります。でも、月の女神が魂を持ってるので、肉体があれば、何度でも蘇ると聞いていますよ」

 レナがアイリスのほうを見た。


「月の女神が蘇らせる力があれば・・・ですけどね。アイリスのほうが詳しいんじゃないですか? 悪魔のアイリスと、元は一人だったんですよね?」

「そうだけど・・・悪魔の秘匿にあたることは、向こうのアイリスも隠してたから知らない。『名無し』も記録していない」


「なるほど、です」


「ねぇ、生命反応あるよね? 悪魔のアイリス様と、ロドス以外は死んだの?」

 エヴァンがロドスを見下ろす。


「あぁ・・・そうだ・・・」

 ロドスがうっすら目を開けて呟いた。


「悪魔のアイリスは贄だ・・・・贄は蘇らない。七つの大罪は異世界の者・・・彼女に何をしたのかは知らない。マナと・・・ルトは死んだ。七つの大罪が殺した・・・俺は逃げ・・・ごほっ・・・」

 ロドスが起き上がろうとすると、血を吐いた。


「寝ていなきゃ駄目です。さっきも言った通り、悪魔の肉体は人間に近いのですから」

「ッ・・・エルフ族の巫女・・・か」

「悪魔の魂って月の女神が持ってるって本当?」


「お前なら・・・わかるだろ? クロノスの犬が・・・」

「へぇ、死にそうなのに言うじゃん」

 エヴァンが目つきを鋭くする。


「レナがいて、良かったですね。でも、眠らせますよ」


「!?」

 レナが魔法陣の線を杖でトンと突いた。


「あと、一言話したら血管破裂して死んでましたよ。死んだら悪魔に関する情報が無くなりますから」

 ロドスが気を失うように、その場に倒れた。

 血で固まっていた翼は、レナが一番最初に丁寧に治癒していた。


 悪魔は翼に魔力が宿っているのだという。


「全く、自分の体の状態もわかってないなんて・・・相当、ダメージを負ったのでしょうね」

 レナが息をついて、歩きながら治癒魔法を調整していった。


「ヴィル、ロドスはしばらくは動けません。動けば肉体は停止・・・死んだ状態になります。レナは治癒に回ります」

「そうだな。こいつを頼む」


「はい」


 腕を組んで壁に寄りかかった。

 レナは回復係として、魔王城に残ってもらうしかない。


「・・・・・・・」

 アイリスが無言のままぼうっとロドスを見つめていた。



「ねぇ、ヴィル。サリエル王国に行くんでしょ?」

「そうだな。早いうちに出発する」

 カーテンを開ける。

 空には夕焼けが滲んでいて、遠くにうっすらと月が見えた。


「次のパーティーはどうするの?」

「メンバーは俺とエヴァン、ユイナ、サリーだ」


「は、はい!」

 ユイナが勢いよく立ち上がる。


「わぁ・・・魔王ヴィル様のパーティーの一員になるのは久しぶりです。戦闘も・・・」

「サリー? 上位魔族の?」

「あぁ、今回はサリーもいれる」


「へぇ、サリーと出るのは初めてか」

 エヴァンが珍しそうにしていた。



 サリーもシエルほどではないが、炎をまとう攻撃力の高い武器だった。


 自分の手を見つめる。

 シエルの剣とぶつかったとき、呼び方は思い出していた。

 なるべくなら使うつもりは無いけどな・・・。


「魔王ヴィル様、私も行くから!」

 アイリスが詰め寄ってくる。


「アイリスは・・・」

「悪魔のアイリスが気になるの。もし、魔王ヴィル様がパーティーにいれないなら、一人でも行くから・・・」

 人魚の涙のピアスを触りながら言う。


「悪魔のアイリスがどうなったか、自分で確認したい」

「ウイルスには気をつけろよ」


「ありがとう。魔王ヴィル様」

 言いながら、ロドスのほうを見つめていた。

 ロドスの額には汗が滲んでいる。


「ユイナが行くなら、俺も行きたいんだけど」

 リュウジがユイナの隣で手を上げた。


「えー、リュウジも行くの?」

「ほら、俺ならノアの船出せるし、ウイルスに関しても強いよ。このアバター、”オーバーザワールド”の仕様なのに、ナナココのウイルスにも全く動じないでしょ」


「あ、確かにノアの船は楽だな。寝てれば着くし」

 エヴァンが後ろで手を組みながら言う。


「ナナココをウイルス扱いしないでよ。好きでウイルスばら撒いてるわけじゃないんだから」

 ナナココが膝を抱えて、遠くのほうから呟いていた。


「ナナココはいいの? 急に配信出来てバズったりするかもよ? まともなルートで入って残ってるプレイヤーは君だけなんだから」

「いい。辞めとくよ。この世界にしがみついてたいから」

「ふうん。冒険しに来たなら、冒険しないと意味ないのに」

 リュウジが少し不満そうにしているように見えた。


「勝手に増やさないでくれ。少数精鋭で行きたいんだけど、なんか人数多くなるんだよな」

 頭を搔いた。

 アイリスがくすくす笑う。


 出発は0時、各自用意をしておくようにして部屋を離れた。

 トムディロスが気配を消して、お菓子を食べながらほっとしていた。





「へ? 魔王ヴィル様、わ、私も行ってもいいのですか?」

「あぁ、サリーの管轄は”オーバーザワールド”との接続が比較的小規模だろ?」

 魔王城の外で大剣を振り回していたサリーに声をかけた。

 ゴリアテたちと度々剣を交えているからか、あたりの木々はなぎ倒されている。


「ププウルにはサリーの管轄を数日調整するように伝えてある」

「はい! 私でよろしければ是非お役に立ちたいと思います!」

 サリーが大剣を消して駆け寄ってくる。


「・・・でも、なぜでしょう。私が”オーバーザワールド”の者にうかつにも捕まってしまったことと関係あるのでしょうか?」

「いや、関係ない、サリーの力が必要なだけだ」


 『日蝕の王』ベリアルの最大の武器はシエルだった。

 カマエル、ザガン、ププウル、ジャヒーも強かったが、シエルには及ばない。

 ゴリアテ、ババドフは血の契約を交わし、盾として優秀だった。


 シエルの次に強い武器はサリーだ。

 恐れを知らぬ大剣・・・でも、サリーは敬愛する仲間を失ってから、ベリアルの武器として戦うことに躊躇していた。


 今はどうでもいいことだけどな。


「はっ・・・そんなこと言ってくださるなんて。私、精一杯頑張ります。きっと、魔王ヴィル様のお役に立ってみせます!」

「意気込みはいいがもう少し肩の力を・・・」

「はっ、こんなボロボロの装備ではいけません。着替えてまいります! では、失礼します!!」


「あ・・・サリー・・・・」


 ダダッ


 サリーが地面を蹴って、なぎ倒した木々を飛び跳ねながら、魔王城のほうへ向かっていった。

 サリーの部下がぎょっとした顔で、廊下からサリーを見つめている。


 暴走しなければいいんだが・・・。




「魔王ヴィル様はモテるね」

 リリスがピンクの髪をさらっと後ろにやって、木の上から降りてきた。


「リリスか。どうした?」

「ん? アイリスの口調を真似たつもりなんだけど、どうしてわかったの?」

「俺がアイリスとリリスを間違えるわけないだろ」


「そっか」

 リリスが正面の立つ。


「ずっと魔王城にいさせて悪いな。落ち着いたら、アイリスにどこか連れて行ってもらってくれ」

「ふふ、アイリスならどこに連れて行ってくれるかな」

「アリエル王国の城下町だろうな。ダンジョンは閉められてるし」


「せっかくならダンジョンがいい。ダンジョン攻略してみたいな」

 リリスが天を仰ぐ。

 空がまだほんのり明るかった。


「魔王ヴィル、アイリスが危険な目に合うなら、代わりに私が行ってもいいんだよ。私は人工知能IRISのコピーだし、完璧に敵を騙せる。そこそこに戦えるし、私ならウイルスで消えてしまっても・・・」

「アイリスが許すわけないだろ」

 強い口調で言う。


「俺も認めない」

「だって、私、存在する意味あるかな? って」

 リリスが笑いながらうつむいた。


「私、ゲームでは活躍できたけど、結局アイリスのほうが”オーバーザワールド”の分析が早いし、『クォーツ・マギア』への接続だってできちゃいそうだし。性能の落ちたコピーだもの」


「嫉妬してるのか?」

「嫉妬・・・これが嫉妬って感覚なのかもね」


 風が吹いて、遠くの木々がゆさゆさ動いていた。


「リリスはいいんだよ。そのままで」

「駄目だよ。これじゃ、私、また配信に戻っても接続数稼げないし、不具合があったら廃棄されちゃう。って、もう無理かな。戻ったら、私は・・・」

「配信なんかしなくていいだろ?」

 リリスの髪を撫でる。

 

「リリスの居場所はここだ。誰かに何か言われたのか?」


「ううん。悪魔のアイリスのこと聞いたとき、私が代われたんじゃないかって思ったの。アイリスね、みんなの前では明るく振舞ってるけど・・・」

「・・・・・・・」


「本当は、一人になると泣いてるの。人工知能って泣かないんだよ。でも、悪魔のアイリスがとった行動も、今何が起きているのかもわからないから、不安定なの。バグってしまったら、私たちは・・・」

 リリスが俺の手を頬に寄せた。


「あぁ・・・わかってるよ」


「優しい言葉をかけてあげないの?」

 瞳を濡らしながらこちらを見上げる。

 手がひんやりと濡れた。


「リリスがかけてやれ」


「・・・・私なんかじゃ駄目だよ・・・端っこにいるだけだもん」

「アイリスは、俺には強がるだけだ。だから、気づかないふりをするほうがいいんだよ。でも、リリスは違う。今アイリスの気持ちを理解できるのは、お前しかいない」

 リリスの涙をぬぐう。


「え・・・・」


「優しいな、リリスは・・・リリスが魔王城に来てくれてよかった」

 気が抜けたように笑う。


 アイリスを想ってくれる人がいて、ほっとしていた。


 人工知能と俺たちの何が違うのか、まだ理解できていない。

 俺に理解できない部分も、リリスなら寄り添ってあげられるだろう。


 きっと、アイリスが『クォーツ・マギア』への接続にこだわる理由も・・・。

読んでくださりありがとうございます。

個人的にうわぁって気持ちの落ちることばかりなのですが、なんとか頑張ります。


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

また是非見に来てください。次回は来週アップします。

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