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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
最終章

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550/594

457 IF Root⑧

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗るヴィヴィアンと行動し、”オーバーザワールド”の魔王、または『日蝕の王』を名乗り統率していた。

ヴィルは『日蝕の王』の拠点、アルテミス王国で『日蝕の王』を圧倒して・・・。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。

ガラディア王子・・・ポセイドン王国第一王子。陸軍のトップ。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

 確かに空気が変わったのに、何も起こらなかった。

 しんと静まり返る。


「・・・・・」

 心がざわついた。


 何か、大きな軸のようなものがズレたような感覚だった。

 はっきりとはわからない。


『なんだったんだ? 今の・・・』

 勇者の亡霊の一人が呟く。


 全員が空を見上げて、武器を構えていた。


「大変だ。ポセイドン王国にヴァリ族が軍になって侵入しようとしているらしい。俺は今からすぐにそちらに向かう!」

 ガラディア王子が血相を変えて立ち上がった。


『かしこまりました。ヴァリ族がとめどなく現れるのですが・・・』

『このままでいいのでしょうか?』

『あの・・・闇が濃く、我々も闇落ちするのでは・・・』

 ガラディア王子の前にある、モニター越しの兵士の声が震えている。


「俺が行くまで耐えろ。俺たちはポセイドン王国の軍だ。負けるわけがない。陸軍部隊を後方支援、民間退避に回してくれ。戦闘はいったん、空軍に任せる。海上から上がってくることが無いよう、海軍には・・・」

 脂汗を搔きながら、モニターに向かって話していた。


『じゃあ、俺たちもそっち行こうか』

「・・・?」

『ガラディア王子、彼らは・・・』


「魔王ヴィルの魔法で呼び寄せられた、歴代の勇者たちだ」

 ガラディア王子が頬の砂埃を拭う。


「でも、いいのか? ”オーバーザワールド”の問題なのに・・・」

『だって、このまま戻るなんて、不完全燃焼だ。なぁ・・・』

 ゼラフが不満そうに言う。


『確かにな。俺も暴れたりない。せっかく使ってみたい魔法があったものを』

『そうね。全然手ごたえ無いんだから。これが異世界のゲームのキャラとかいうやつなの? まだ、人間同士戦闘していた頃のほうが楽しめたわ』

 エリサが長い髪を後ろにやって、剣を持ち直す。


『そこの、老人たちも同意見でいいか?』


『オーディン、我らは最古の勇者だからな。敬えとあれだけ・・・ったく・・・』

『誇り高き英雄としては、困っている民を放っておけない。力を貸そう』

『おうよ』

 勇者の亡霊たちが盛り上がっていた。


 カツ カツ カツ・・・


 オーディンがこちらに歩いてくる。


「というわけだ。ヴィル。問題ないだろ?」


『好きにしろ』


 オオオォオオオオオオ


 痣が熱くなった。腕を押さえる。

 勇者の士気が上がると、俺にも熱量が伝わってくる仕組みらしい。


『君はポセイドン王国の王子なんだってな。敵地に案内してくれ』

「あぁ、ありがとう。なんと心強い!」

 ひとりの勇者がガラディア王子に声をかけた。

 12人の勇者の亡霊たちが勢いよく聖堂を出ていく。


『レナ、行くぞ!』

 ゼラフが真っ先にレナに駆け寄って来た。


「ゼラフは勝手に行っててください。私はヴィルたちと・・・」

『ほら、闇炎龍もいる。俺の戦闘にレナの魔法は不可欠だ』


「うわっ・・・と、ゼラフ!! 相変わらず人の話を聞かないですね」

 ゼラフが強引にレナの手を取って走っていった。


 


「へぇ・・・この魔法って術師無視なんだね」

「本当にな」

 騒がしかった聖堂には、俺とエヴァンとリュウジしかいなかった。

 エヴァンが体を伸ばす。


「なんか、青春って感じ」

「普段が暇なんだろ。エヴァン、傷のほうは大丈夫なのか?」


「問題ないよ。魔力も正常値に戻ったから。まぁ、一晩寝たいけどね」

 エヴァンが穴の空いた服をさすっていた。

 どこか覇気がないな。


「レナがゼラフに取られてつまらないのか?」

「ん? なんで、レナが関係あるの?」


「なんとなくだよ」


「?」

 エヴァンが首をかしげる。

 祭壇から降りて、瓦礫の上を歩いた。


「まぁ・・・俺、転生して来た時に、クロノスが言われてたの思い出したんだ。俺の身体はとある事情でこの世界に生まれ変われなくなった誰かだったって。おそらく、ゼラフなんだろうな・・・」

「なるほどな」


「英雄になったら転生できなくなるとか、バグみたいな作りだよね。いいことなのか、悪いことなのか・・・俺なら、もう一度りくに会いたいから絶対英雄なんかパスするよ」


 エヴァンとゼラフは見た目も声もよく似ていた。

 違うところと言えば、髪の色くらいだ。


 パリン


「ヴィルはどう思う?」

「俺は前世も転生も、その先も、興味がない」

 ガラスの破片の割れる音が響く。


「大事なのは今だ」

「ヴィルはアイリス様がいるもんね。いいなぁ、俺もりくを見つけて、転移できるルートができたら、この世界から離れたいよ」


「へぇ、変わった夢持ってるね。りくって、Vtuberの望月りくのことでしょ?」

「・・・・そうだよ」

 リュウジが会話に入ってくる。


 エヴァンが瞼を重くした。


「リュウジ・・・『クォーツ・マギア』ってゲーム知ってる?」

「あぁ、名前くらいは聞いたことあるかな。最近のゲームは疎くてストーリーとか、どんなゲームなのかは知らないけど・・・・何かあるの?」


「いや、何でもない。聞いてみただけ」


 エヴァンがそっけなく前を歩く。


「そういや、五古星になんでエリアスが入ってるんだ?」

「さぁ、俺もさっき知ったしね。たぶん、ユイナも聞いたら驚くよ。それより・・・」

 リュウジがモニターを出して指を動かす。


「さっきからアイリスが連絡してきてるんだけど、繋いでいい?」

「緊急じゃないんだろ? まだ、戦闘中だって言って・・・」 


『魔王ヴィル様!!!』

 モニターからアイリスの声が響いた。

 倒れた柱に、躓きそうになる。


「繋いじゃったよ。はい」

「確信犯だろ・・・」

「まぁまぁ」

 リュウジが笑いながらモニターをこちらに向けた。

 アイリスが画面いっぱいに映っている。


『ねぇねえ、魔王ヴィル様の戦闘の様子、見てたんだけど、シエルが『日蝕の王』の武器になったって本当だよね? どうして? 契約があったの? もしかして、魔王ヴィル様の武器にもなりえるの?』

「落ち着けって」

 前のめりになって、怒涛のように聞いてきた。


「説明すると長くなる。この世界に生まれる前の話だ」

『生まれる前?』

「まぁな」

 歩いていると、モニターが俺の横にくっついてきた。

 リュウジに外すようジェスチャーしたが、首を振ってきた。


 アイリスが操作しているらしい。


「今からヴァリ族の残党狩りに行かなきゃいけないんだ。あとにしてくれ。そっちは問題ないんだろ?」

『平和だよ。だから、魔王ヴィル様と話したいなって思って。あ、聖堂での戦闘の様子は全部見てたよ。今は、ヴァリ族の残党狩りには魔王ヴィル様が召喚した勇者たちが向かってるんだよね?』

「話が早いな・・・・・」


『じゃあ、大丈夫だよ』

 アイリスが満面の笑みで言う。

 能天気な奴だ。


『ポセイドン王国に着くまで話そう』 

「別に話すことないって。見てただろ? 勇者の亡霊たちが一斉にポセイドン王国に向かったんだ。俺も急がなきゃ・・・」

『でも、魔王ヴィル様、99%の確率で急いでないでしょ』

 アイリスがじとーっとした目でこちらを睨む。


『私の目は誤魔化せないよ』

「・・・・・」

 エヴァンがこちらを見て吹き出しそうになっていた。


「じゃあ、何の話するんだ? しりとりでもするか?」

『魔王ヴィル様、さっきの話の続き・・・生まれる前の話、覚えてるの?』


「色々あって、少し思い出しただけだ」

『もしかして・・・私もその場所にいた・・・? いた気がする。魔王ヴィル様と会っていたと思うの』


「さぁな。記憶が曖昧だから覚えてない」


 本当は、アイリスのことは鮮明に覚えていた。


 アイリスは洞窟の奥にいる小さな精霊だった。

 外部との接触はほとんどない。

 ゲームをプレイしていた異世界の者たちすら、認識できなかっただろう。


 洞窟を出たら一瞬で消えてしまいそうなほど、脆い存在だった。


 でも、あんな小さな洞窟にいるのに、いつも楽しそうに話していたな。

 ある日突然、消えてしまったが・・・。


『もしかして、私も契約すれば、魔王ヴィル様の最強の武器になれるのかな?』


「は!? 契約って・・・」


『ん?』

 アイリスがきょとんとしていた。


「・・・・・・・・」

 軽く咳払いをする。


 だよな。

 シエルの能力のことは、アイリスに話していない。


「・・・必要ない。俺は自分の剣を一番信頼してるからな」

『でも、でも、私も最強だよ。最強の魔王ヴィル様の武器になったら、最強の最強だよ。冥界の王の剣、バイデントは冥界に置いてきちゃったんでしょ?』


「問題ないって。どうせ冥界送りの時しか使わなかったんだ」

『私が武器になったら、必ず魔王ヴィル様を守れる』

「アイリスに守ってもらうつもりは無い」


『むぅ・・・魔王ヴィル様の武器になれたらずっと一緒にいられるのに』

 アイリスが膨れていた。


 いつの間にか城下町を歩いていた。

 アイリスと話していると時間の感覚が鈍くなるな。


 ヴァリ族は殺されたのか、ポセイドン王国に行ったのか、全く気配がなかった。


「ヴィル、急がなくていいの?」

「もういいよ。勇者の奴らが殲滅するだろうから」


「それもそうか」

 エヴァンがあくびをする。


「じゃあ、なんか寝ながら移動したいな。リュウジ、ノア出してくれない?」

「ノアはお昼寝中らしい。さっき声をかけたらスリープモードに入ってたから」

「スリープモード・・・って」


「魔王城に戻るときにはちゃんと起こすよ」

 リュウジが笑いながら話す。


 腕の痣が燃えるように熱くなっていった。

 勇者の亡霊たちが暴れまわってるんだろう。


『魔王ヴィル様、次の戦闘は絶対私も連れて行ってね。今回のデータで、大分”オーバーザワールド”の仕様が見えてきたから』

「言っただろ。危険だから連れていけないって」


『もう大丈夫だよ。ウイルスへの耐性も完璧だし、一度感染したウイルスは記録してるから、類似のウイルスだって自己修復できるし・・・・あれ・・・・?』

 アイリスが急に自分の手を見つめる。


「どうした?」


『悪魔の・・・アイリスの魔力が完全に消えた・・・・』


「!?」

 アイリスの表情が曇った。

 天を見上げる。さっきの空気の変化が何か関係しているのか?


「突然なのか?」

『うん・・・共有が切られたからか、確証がない。でも、魔力が・・・』

 アイリスがくらっと倒れそうになる。


「アイリス!」

『アイリス! 大丈夫?』

『大丈夫、ごめん。びっくりしただけだから』

 リリスがアイリスを傍で支えていた。


 アイリスが自分の胸に手を当てて深呼吸する。


『アイリスのことは任せて』

「あぁ、なるべく早くそっちに戻るよ」


『うん。また後でね。魔王ヴィル様』

 アイリスがモニターを切った。


 単純に、幼少型アイリスが完全に独立したからなのか?


 それとも・・・。

読んでくださりありがとうございます。

花粉が本気出してきて辛いです。。頑張って乗り切ります。


★やブクマで応援えんいただけると大変うれしいです。

また是非見に来てください。次回は週末アップを目指します。



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