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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第一章

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49 何者か・・・

 一晩経ったが、まだ、人間の血の匂いがこびりついていた。

 ププウルを傷つけ、アイリスについて何か言おうとして死んでいった奴らの・・・な。


「魔王ヴィル様、どうしたの?」

 ソファーで横になっていると、アイリスが覗き込んできた。


「まぁ、いろいろあってな」

「そっか。魔王って大変そうだもんね」

「・・・・・・・」

 アリエル王国の現状を知りたかったが、迂闊に動けない。

 もし、エヴァンに上位魔族全員の弱点を見られたら、全滅する可能性だってあり得る。


 錬金した防具だって、今回のように壊されれば意味がないしな。

 とりあえず、上位魔族にはなるべく分散させて動くように指示したが・・・。


 エヴァンに行動を制限されているようで腹が立つな。


「また、難しいこと考えてる顔してる」

「難しいことだからな」

「ふうん」

 アイリスがソファーに座った。


「私、これでも結構勉強はできるほうだったの。良い成績も残してるし。相談してくれれば、いいアイディア出てくるかもよ?」

「アイリスはダンジョン以外のことは考えなくていい。その辺の本でも読んでろ」

「本も勉強になるけど、今は魔王ヴィル様と話したいよ」

 アイリスが前のめりになった。


 俺がアイリスに聞きたいことは、お前が何者なのか、なんだけどな。

 直接聞くのは危険なのか・・・。


「私ね、気づいたらアリエル王国の王女だったの」

「ん?」

「王女は楽しかったけど、思い出せないことばかり。ダンジョンから異世界に行く途中、少し懐かしい感覚になるんだけど、それが何かわからない・・・。私は自分のことがわからない」



 トントン


 体を起こして、マントを羽織りなおす。


「魔王ヴィル様、入ってもよろしいでしょうか?」

 ザガンだ。

 アイリスのほうを見て、咳ばらいをする。


 アイリスが無言で頷いて、離れた場所にあるソファーに移動した。


「・・・・問題ない。入れ」

「失礼いたします」

 ザガンが部屋の中に入ってきて、頭を下げた。


「先ほど、魔王の間の掃除が終わりました。ハーブなどで匂いも消しております。いつでも、お使いください」

「ご苦労だった」

「あ、人間の・・・」

 ザガンの目がアイリスのほうに向いた。

 すっと、移動して視界を遮る。


「カマエルが上位魔族に推薦していた件だが・・・」

「は、はい」


「先ほどの働き見事だった、さすがカマエルが推薦するだけのことはあるな。上位魔族として、今後の働きに期待する。他の上位魔族にもそう伝えておこう」

「あ、ありがたきお言葉! 魔王ヴィル様のお役に立てる用精進してまいります」

 ザガンがぱっと表情を明るくした。


「よろしくな・・・・」

 今回、ザガンについては・・・ステータスを確認する必要ないか。

 あまり、ステータス表示に頼るのもよくない。

 

 弱点や数値以外の方法で、ププウルを助ける方法もあったのかもしれないからな。


「彼女、魔王ヴィル様の奴隷・・・アイリスですか? 彼女のことは拷問の際にも話に出ていましたね?」

「あぁ・・・」

 アイリスのほうに視線を向けながら声を小さくする。


「国王と妾との子じゃないかと、人間たちが噂していました。真偽は不明ですが、王国に忠誠を誓っている者などいないのかもしれませんね。人間という種族は、結局自分が一番可愛く、なんでも起こす種族ですから」

 ザガンが声を潜めて話す。


「私は魔族であることを誇りに思います」

「そうだな」

 アリエル王国含め、どこの国も同じだ。

 ギルドだけではなく、俺がいた孤児院でさえ、汚い人間を多く見てきた。


 心の綺麗な者ほど、生きにくい世界だ。


 マリアみたいにな・・・。


「魔王ヴィル様、ちなみに彼女は耳が弱いようです」

「は?」

「では、失礼します」

 胸に手をあてて、丁寧にドアを閉めて出ていった。

 有能なんだが、本当に癖の強い奴だ。



「今日は月明かりが綺麗」

 アイリスが窓を開けて、空を眺めていた。


「ねぇ、魔王ヴィル様。今、何話してたの?」

「別に何でもないって」


「嘘、私のこと話してたんでしょ? 口の動きがそうだった」

「気のせいだろ」

「80パーセント、そうだと思うけどな。確かに100パーセントじゃない」

 少し頬を膨らませて、じっとこちらを見ていた。

 耳か・・・少し試してみるか。


「アイリス、ちょっとこっちに来い」

「え?」

 人魚の涙のピアスを指でなぞる。

 アイリスの顔が少し赤くなっていった。


 トントン


「どうしたの? え、魔王ヴィル様? あ・・・なんだろう・・・あれ・・・」

「・・・・」

 ザガンの能力は確かみたいだな。


「失礼します。魔王ヴィル様、夕食をお持ちいたしま・・・・・」

 マキアがこちらを見て、ガシャンと食器を落としかけていた。


「あ・・・・・」

「マキア!?」

 アイリスと同時に声を上げる。


「すすすす、すみません。返事が聞こえたと思って勝手に入ってしまい・・・」

「いや、別に」

「し、し・・・失礼しました!」

 マキアが食器をガシャガシャ鳴らしながら出ていった。


「どうしたんだろう? ご飯せっかく持ってきてくれたのに・・・」

「さぁな。俺は外に行ってくる」

「うん? いってらっしゃい」

 アイリスが軽く頬を仰いでから、ソファーに座り直していた。


 マキアは絶対、何か勘違いしていたな。 





 木の上に座って、ぼうっとしながら、魔王城の森を眺めていた。

 アイリスは、本当に人間同士の子なのだろうか?


 時折、感じる魔力・・・普通の人間のものではないような気がしていた。

 だからといって、魔族の血が入っているとも思えない。


 まぁ、何者であっても、アイリスはアイリスだ。


 サァァァァァァ

 

 木々が揺れる。

 魔王城から少し離れたところから人間の気配がした。


「!?」

 魔力は無い。子供か・・・・?


 ― 魔王のデスソード― 


 空中に線を引いて、剣を出現させる。

 木々の間から見える一つの人影を目掛けて、真っすぐに降りていった。


「うわあっ・・・・」

 10,11歳くらいの黒髪の少年がしりもちを付いた。


 擦り切れた茶色い布の服を着て、右腕には大きな打撲の痕が見えた。

 こんな奴に魔王のデスソードを出す必要もなかったな。


 あまりに弱すぎて、魔族も見逃したか。


「何しに来た? ここは魔王城の敷地内だ。子供だからって容赦はしない。目の前に現れたからには殺す」

「ま・・魔王ヴィル・・・様・・・・・・?」

 突然、少年が頭を土に押し付ける。



「僕を魔族にしてください! お願いします!!」

「・・・・・・・」


「お願いします。何でもやります。魔族にしてください。魔族にしてください。僕を魔族にしてください」

 叫ぶように、何度も甲高い声を上げる。


「何を言ってる? そんな言葉で逃げられると思ったのか」

 魔王のデスソードの刃先を頭に突き付けた。


「お前みたいな人間を捕まえて何のメリットがある?」

「・・・・もし、魔族にすることができないなら、このまま殺してください。首を落としてください!」

「・・・・・・・・・・」

 ピクリとも動かなかった。逃げ出す様子もない。

 なんだ? こいつは・・・・。 

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