表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
最終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

541/594

448 ポセイドン王国③

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗るヴィヴィアンと行動し、”オーバーザワールド”の魔王、または『日蝕の王』を名乗り統率していた。

ヴィルは魔王城から『日蝕の王』の拠点、アルテミス王国に向かっていた。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS


サタニア・・・魔王代理の少女。転生前は人間であり、その前は星の女神アスリアというゲームのキャラだった。

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。

リュウジ・・・ユイナのアバターを異世界住人から避けるようにアップデートした。”オーバーザワールド”のプレイヤーとして、ゲームに入って来た。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

「なるほど。時間のループから外れたのが『日蝕の王』となっているのか。どおりで瓜二つだ」

「奴の顔を見たことがあるのか?」

「あぁ、ローブのフードを深々と被っていたが、ヴァリ族がここに攻め込んできたとき、一瞬だけ顔が見えた。よく目に焼き付けたよ」

 

 ガラディア王子がハーブティーを飲みながら話していた。

 メイドのミュレイがお菓子を並べていく。


「時間のループなんてあるとはね。そんな神みたいな魔法、使える者がいたのか?」

「まぁな。今は使えない」

「ん? 使えた者が殺されたとか?」


「・・・そんなところだ」

 適当に答えていた。


 俺が時空退行を使えるということは、上位魔族ですら知らない。


「これ美味しいです」

「いいよな、レナは気楽で」

「美味しいものが一番なのです」

 レナが嬉しそうにマカロンをちびちび食べていた。

 エヴァンが頬杖をつく。


「奴と戦ってどうだった?」

「冷酷な目をしていたよ。残酷で手段は択ばない目、絶対的な力を持っていた。俺は、あの時死んだと思ったんだ」


「ヴァリ族を追い返せたのか?」

「いや、急に『日蝕の王』が引き上げるよう指示を出したんだ」

 窓から柔らかな日差しが差し込んでいた。


「兵士たちは自分たちの勝利だと騒いでいたけどね。確かに多くのヴァリ族を倒せたが、『日蝕の王』はいつでも俺たちを全滅させることができたはずだ」

「だろうな」

 ナッツの入ったクッキーを口に放り込む。

 アイリスが好きそうな味だな。


「ねぇ、兄・・・じゃなくて、ガラディア王子」

「はは、兄さんでいいって。いきなり、気色悪いなぁ」

 トムディロスがハーブティーを飲んで言いにくそうに口を開ける。


「婚約者がいたって・・・風の噂で聞いてたんだけど。その、アルテミス王国に・・・」

「シェリアのことか」

 ガラディア王子が深呼吸をする。


「ヴァリ族になっていた。一度目の大規模戦闘時に会ったよ」


「!!」

「どうしてわかったの? だって、ヴァリ族になったら姿が変わるじゃん。獣になる者もいるらしいしさ」

 エヴァンがお菓子を食べながら聞いていた。


「わかるよ」

 ガラディア王子が確信を持った目で、肘をつく。

 ハーブティーの表面をじっと見つめていた。


「ヴァリ族の幹部になったらしい。シェリアは修道女、元々魔力もあったから・・・いや、シェリアの姿のままだったけど、あれはシェリアじゃなかったな」

「そうか・・・聞いて悪かった。もう話さなくていいよ」

 エヴァンが途中で話を止めた。


「俺にも似たようなことがあったから」

「ん?」


「で、ヴィルは行くんだろ? いつ出発するの?」

「早いほうがいい」


「そうだ。確か・・・・」


 チャラン リリリリリ


「?」

 いきなりリュウジのほうから不思議な音が鳴った。

 リュウジが空中で指を動かして、モニターを表示する。


「あぁ、アイリスからだよ。ちょっと待って、接続するから」

「は?」

 ハーブティーを噴き出しそうになった。

 

「なんでアイリスが・・・・」

「モニターのパスコードキーを渡されたんだよ。いつでもやり取りできるようにって」


 いつの間にかアイリスも自分のモニターを出せるようになってるし。

 異世界のことはアイリス任せで、わかっているようでわかっていないんだよな。



「彼はプレイヤーなのか?」


「プレイヤーだし、アバターなんだけどなんか色々あって残ってるんだよ」

「確かにプレイヤーのような、別のゲームの者のような不思議な魔力だな」

 ガラディア王子が少し驚いたように、リュウジのほうを見ていた。




『あ、繋がった。魔王ヴィル様ー!! リュウジ、魔王ヴィル様を呼んで』


 アイリスの声が響く。

 お菓子を喉に詰まらせそうになった。


「ご指名だよ。魔王ヴィル」

「アイリス・・・・」

 軽く咳払いをして、リュウジが出したモニターの前に座った。


『魔王ヴィル様!!』

「魔王城で何かあったのか?」


『ううん。なんだか寂しくなって。魔王ヴィル様、そろそろアルテミス王国についたころだから、連絡してみた』

「だろうな。戦闘中だったらどうするつもりだったんだよ」


『大丈夫。魔王ヴィル様が現在どこにいるのか、追跡用の魔法石をつけて、魔法ヴィル様の様子を確認してたの』

「げっ・・・つけてたのか!?」

 マントの裏側を見ると、小さなアクアマリンの魔法石がついているのが見えた。


 全く気付かなかった。

 夜話していた時につけられたのか?


 これなら、ヴァリ族も気づかなかった可能性があるな。


「アイリス・・・」

『だって、魔王ヴィル様が無理しちゃわないか心配で』

「戻るって言っただろ?」

 頭を搔く。 


『でも・・・やっぱり私もそっちに行きたい。魔王ヴィル様、役に立てるよ』

「駄目だ。すぐ戻るって言っただろ?」

『魔王ヴィル様のすぐは10日くらいかかるんだもん』

「絶対駄目だ。ウイルスの危険性だってあるんだからな」


『もう・・・・・』

 アイリスがモニター越しに膨れていた。


『じゃあ、せめてその追跡用の魔法石は付けておいて。魔王ヴィル様に何かあったら、私、すぐに向かうからね! 位置だってわかってるんだから』

「わかったよ」

『このモニターを通じて、1日1回連絡してね』

「面倒だな・・・こっちは戦闘中だろ」

『戦闘してる魔王ヴィル様を見る』

「無茶苦茶だな・・・」

 エヴァンがこちらを見てにやにや笑っている。

 アイリスとの生産性のないやり取りがしばらく続いた。


「ねぇ、アイリス」

 リュウジがアイリスの会話を切った。


「ユイナはどうしてる?」

『”オーバーザワールド”と完全に接続した場所を、上位魔族と確認してるよ。私が説明してもいいんだけど、ユイナのほうが説明上手いから』

 アイリスがふっと笑った。


『こっちにヴァリ族は来ていない。安心して。森の向こうでヴァリ族を見つけたんだけど、ザガンたちが殲滅したから』

「そうか。じゃあ、安心だな」


「へぇ・・・人工知能IRISか。確か”オーバーザワールド”のトーナメントに出てたよね?」

 ガラディア王子が覗き込んできた。


『今はアイリスだよ』

「あぁ、そうだよな。悪かった。俺はポセイドン王国の第一王子ガラディアだ。アイリスの目線から我が国の状況を判断してほしい。力を貸してほしいんだ」

『闇の魔力の侵食率を見てほしいってことね。分析してみる』


「頼む。ミュレイ、ここ数日の国のデータを・・・リュウジデータの共有を頼めるかな」

『かしこまりました。少々お待ちください』

 リュウジがモニターを2つ出して、片側に異世界の文字を流していた。


「へぇ、よくできてるな。ここで場所を特定してるのか」

『コードが読めるのですね?』

「まぁ、多少は。あ、この部分は省略させたほうがいい。読み込み速度が速まるから」

 エヴァンが口を出すと、ミュレイが少し驚いたような顔をしていた。



 あくびをしながら、お菓子の並んだテーブルに戻る。

 レナとトムディロスがもくもくと食べていた。


「あまりものの3人ですね」

 隣に座ると、レナが口のお菓子を拭きながら言ってきた。


「ははは、そりゃ、アイリスが出てきたら、ここの住人はみんな驚くよ。隙が無く、完全完璧で、有名な自立型Vtuber。”オーバーザワールド”を広めた者でもあるからね」

「俺には天然で方向音痴な女の子だけどな」

「それは、魔王ヴィルだけに向ける素顔じゃないのか?」

「・・・・・」

 トムディロスが頬をたぷたぷさせて食べていた。 


「俺らはともかくトムはいいのか? 向こうに入らなくて」

「俺も仕様とか仕組みとか、そうゆう難しいことはわからないよ」

 大きなパイを切って自分の皿に移していた。


「兄様たちが上手くやってくれる。俺は足手まといの第三王子だし」

 力なく笑った。


「でも、この国が無事でよかった」


「・・・・・」

 レナが何か言いかけて口をつぐむ。


 窓のほうを見つめる。

 風に乗って、子供たちのはしゃぐ声が聞こえてきた。

 ゆっくりとハーブティーを飲む。


「・・・・え・・・と、レナもラグナロクから世界を守った時に、そう思ったのです。勇者ゼラフは死んで、様々なことが変わりましたが、あの時だけは・・・」

「勇者ゼラフとお前の関係は何なんだ?」


「うーん、なんだったんだろう」

 レナが顔をしかめて唸った。


「仲間じゃないの?」

「では仲間ってことにしておきます。あ、これ、食べちゃいますよ」


「あ! それ、俺が最後に残しておいたミートパイの一切れだったのに!」

「早い者勝ちです」

 レナが話を逸らして、ミートパイを自分の皿に移していた。

 トムディロスがぶつぶつ文句を言いながら、クッキーを2つ皿に載せた。


「やかましい奴らだな」

 窓のほうに視線を向ける。

 柔らかな日差しで、視界が白くなった。

 

--------------------------


― 日蝕の王、ベリアル様!―


― あいつを殺さなきゃ終わらない。プレイヤーの手で・・・・―


--------------------------



「!?」

 はっとしてこめかみを押さえる。

 また・・・あの夢の続きを・・・?


「ヴィル、どうかしましたか?」

「いや・・・少し、本を読みすぎただけだ」

「?」

 ハーブティーを注いで息をつく。

 カモミールの香りが頭痛をやわらげた。

読んでくださりありがとうございます。

とても励みになっております。感謝感謝です。


★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

また是非見に来てください。次回は今週アップ予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ