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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
最終章

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435 ププウルの帰還と・・・

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗る者と行動し、”オーバーザワールド”の魔王を名乗り統率していた。

ヴィルは魔王城に戻り、立て直しを計画していた。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。

ユイナ・・・異世界住人の一人。魔女との契約により、アバターで転移してきた。肉体は現実世界にある。


イオリ・・・セイレーン号の操縦に長けている異世界住人。

フィオ・・・イオリが勝っていたペット。転移する際に擬人化してついてきてしまった。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


レムリナ姫・・・天界の姫

ジェラス王・・・レムリナの兄。光の国ミナス王国の王だったが、闇の王に体を乗っ取られていた。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

 ジェラス王とレムリナはミナス王国に留まるらしい。

 闇に堕ちた民を救う方法を考えるのだという。


「お兄ちゃんと一緒なら、何でもできるような気がするから。あ、恋愛って意味じゃなくてね。お兄ちゃんに恋人ができたら、ちゃんと祝福するよ」


 レムリナはAIの干渉が無くなってから、明るさを取り戻していった。

 アイリスの力もあったのかもしれない。


 アイリスは魔王城に戻る直前まで、レムリナと楽しそうに話していた。 



「あ、魔王ヴィル様!」


 ザザーッ


 上位魔族を先頭に、魔族たちが魔王の間に集まっていた。

 サタニアが横に並ぶ。


「よく無事に集まってくれた。ヴァリ族の討伐ご苦労だったな」

「本当、みんなのおかげよ。ありがとう」

 サタニアが髪を耳にかけてほほ笑む。



「ククク、魔族は戦闘にならないと力を発揮できませんから。力を解放してこその魔族です」

 カマエルがメガネを上げて得意げに言う。


「地図に記載したダンジョンにいた魔族は逃がしたか?」


「はい! 魔王ヴィル様のおっしゃる通り、対象のダンジョンにいた魔族は王国付近の洞窟などに入っています」

「人間たちが魔族に友好的なので少々戸惑いますが・・・」

 上位魔族のリカが口に手を当てていた。


「あんなに浅はかだった人間たちが、いきなり魔族と交流をもとうとするんです。食べ物を持ってきたり・・・」

「部屋を用意してくる王国等もありました」


「ふふ、魔王ヴィルが世界を救ったんだから、当然のことよ」

 サタニアが髪を後ろにやって笑った。


「貰えるものは貰っておきなさい。少しでも魔族を騙すようなことがあれば、私たちが殺しに行くから」

「承知しました!」


 人間たちの間で魔族と友好関係を結ぶよう取り決めがあったらしい。

 ”オーバーザワールド”から来る異世界の者のほうが恐ろしいんだろう。


「王国から離れたダンジョンは”オーバーザワールド”と接続されている。弱い魔族は絶対に近づかせないようにしろ」


「かしこまりました」


 上位魔族がちらちらと入り口のほうを気にしていた。


「サリーは大分よくなったが、まだ休ませてやってくれ。籠に入れられていた時に、かなり魔力を消耗してるんだ。あと一週間は安静にさせてやりたい」

「はい・・・あの、無事なのでしょうか?」

「あぁ、本人は早く戦いたがってるが無理やり止めている状態だ」


「そうですか」

 サリーの部下たちがほっとしたような表情をする。


「ザガン、穴埋めはできそうか?」

「問題ありません。サリーとは管轄が近いので」

「頼んだ。何かあったら俺を呼べ」


「承知しました。ご安心を。上位魔族として必ず皆を守ります」


 魔王の椅子に座る。

 ププウルとシエルがいない光景は、どこか魔族の不安を掻き立てているように見えた。


「すみません・・・魔王ヴィル様、シエル様は?」


「”オーバーザワールド”のヴァリ族を率いる王にさらわれた」


「!?」


 ざわっ・・・


 魔族に緊張感が走る。


「なっ・・・・シエルが」

「怪我は? 無事なのですか!?」


「もちろんだ。奴はシエルに手出さないだろう。そこは安心してくれ」

「手を出さない・・・なぜでしょう? 敵なのに」


「そうだな・・・」

 顎に手を当てる。


 サタニアがちらっとこちらを見た。

 魔族にはまだループから外れた俺が存在していることを話していない。


 早く言うべきだが、今は魔族の混乱を招く可能性がある。

 冷静になるタイミングを見計らっていた。


「いずれ説明する。今は調査段階だ。俺に任せてくれ」

「奴の特徴はヴィルが捉えてるから安心して。まずは体制を整えなくちゃ。ダンジョンの近くは”オーバーザワールド”の接続ポイントになってる」

 サタニアが補足をする。


「王国が闇堕ちしたら、人間たちは理性のない者たち、ヴァリ族になるの」

「そうだ。お前らには”オーバーザワールド”のヴァリ族を殲滅してもらわなければいけない」

 グラスに入った水に口をつける。


 オォオオオオオオ


 上位魔族の後ろにいた魔族たちが雄たけびを上げる。 

 地面が微かに揺れた。


「我々に敵が現れたということは喜ばしいこと」

「敵がいなくなったら、つまらないからね! さすがに何もなさ過ぎて飽きていたところだ」


「戦いあっての魔族ですから。サリーにばかり美味しい思いはさせません」

 ジャヒーが角を触りながら言う。


「こんなに気持ちが昂るのは・・・ククク、これがあっての魔族だよな」

「ずーっと暇だったもんね。人間が魔族に逆らわなくなっちゃったから」


「俺らも全力を尽くすぜ。な、シズ」

「うん、あたしも頑張る。敵をたくさん倒して、倒して、倒しまくるんだから」

 西のダンジョンの精霊シズはすっかり魔族に馴染んでいた。

 ゴリアテたちの間に入って、腕まくりをしている。


「体制の話をする前に、報告がある」


「なんでしょうか?」

 ジャヒーが首を傾げた。


 カタン 


「戻ってきました」

「しばらくご心配をおかけしてすみません」


「ププウル!!」

 ププウルが駆け足で魔王の間に入ってくる。

 運命の歯車の回転が戻ったことにより、ププウルは魔族としての力を取り戻していた。


 ワアアァァァ


「ププ様! ウル様!」

 後ろにいたププウルの部下の魔族たちが前のほうに押し寄せる。


「ププウル、戻って来てくれてよかった。魔王ヴィル様は大丈夫だって言ってたから信じていたけど・・・でも、やっぱりププウルがいないと寂しくて・・・」

「ジャヒー苦しいです」

 ジャヒーがププウルに抱きついていた。

 ププウルが嬉しそうに笑っている。


 ジャヒーから離れて、俺の前に立った。


「魔王ヴィル様、長らく席を空けてしまい、申し訳ございませんでした」

「これからは一層力を尽くします」


「フン、今まで以上に働いてもらうからな。覚悟しておけよ」

 笑いながら言う。


「はい! お任せください!」

 ププウルが同時に言って深々と頭を下げてから、上位魔族の列に入っていった。

 魔族の士気が一気に上がったのを感じる。


 足を組んだ。


 ワアァァ


 魔族たちが興奮気味にププウルを迎えていた。

 ププウルが戻って来た喜びは、しばらくしても収まらなかった。


「なんだよ、サタニア」

「ふふ、別に。随分嬉しそうだなと思って」


「そりゃ、な」

 はしゃいでいるププウルを見たのは久しぶりだ。

 肘をついて魔族を眺めていると、サタニアがこちらを見てくすくす笑っていた。





 魔王城の外にはセイレーン号が止まっていた。

 リリスがデッキから、外を眺めている。


「魔王ヴィル様」

 アイリスとそっくりな顔でこちらを見る。

 軽く飛んで、セイレーン号のデッキに降りた。


「魔王ヴィル様って呼ぶと、アイリスに似てるでしょ? 見分けつく?」

「当然だ。アイリスが魔王城を探してたが、ここに居たのか。何してたんだ?」


「セイレーン号の修復とか、私にできることを私なりに・・・」


「リリスはすごいんですよ!」

 ユイナがドアを開けて出てくる。


「”オーバーザワールド”と接続したとき、セイレーン号は適合しなくてエラーを出しまくっていたんです。セイレーンは自分を修復できないと諦めていたのですが、この世界と”オーバーザワールド”、どちらにも存在できるようにアップデートしてくれたんです!」


「私は人工知能IRISのコピーだから、それくらいできて当然だよ。IRISの記憶があるからできたことで・・・」

「でも、修復したのはリリスだ。ありがとな」


「ううん、ごめん。謝らなきゃいけない。修復に時間のロスがあったの。アイリスならもっとうまくできたかもしれないのに・・・」

 リリスが無理して笑っているように見えた。


「セイレーンがヴィル様に話があるそうです」

「あぁ、今行くよ」

 ユイナに続いてセイレーン号の中に入っていく。


「エリアスはVRゲームで知り合ったんです。リュウジも一緒にパーティーを組んで・・・3人でランキングにも何度か入りました」

「異世界の奴らってVRゲーム好きだよな。そんなに面白いのか?」


「楽しいですよ。仲間とパーティーを組んで未知の世界に冒険に出る・・・なんて、現実世界ではできない経験ですから。学校に行ったり、仕事に行ったり、つまらないことばかりです」


 ユイナが自分の手を見つめながら言う。


「私、魔女として契約して、この世界に入っていたのですね。覚えがないのですが・・・どこかで、ゲームの世界にいたいって強く願っちゃったからかな。リュウジとはまだ連絡取れていません」

「そうか。エリアスは向こうについたが、リュウジはどうするのか・・・」 


「私は魔王ヴィル様を裏切らないので安心してくださいね」

「まぁ、何かあれば殺すだけだ」


「はい、その時はよろしくお願いします」

 ユイナが力なく笑う。


「もう、きっと私たちは元の世界に戻らなきゃいけないのでしょうね」

「ん・・・?」


「あ、もちろん、死んで元の世界に戻りたいのですが、この世界が楽しくなってきてしまったので・・・心が揺らいでしまうんです。まだ、皆さんと一緒にいたいなって」


 ユイナがモニターを出してセイレーン号を起動する。


「わっ・・・!!」

 イオリがソファーから飛び起きた。


「そんなに驚くなって。ここは魔王城の敷地内なんだから」

 フィオが毛布をかぶって、丸まって眠っている。

 猫耳がしっとりとくっついていた。


 ジジジジ ジジジジ


『おかえりなさいませ。魔王ヴィル様』

 セイレーンが中央の青い光の中に現れる。

 

「色々聞きたいことがある。いいか?」

『私も情報を共有しなければいけないので。”オーバーザワールド”の強引な接続は、Vtuberにも影響をもたらしたことをご報告します』


「雛菊アオイたちのことか?」


『はい。”オーバーザワールド”の接続により数名のVtuberはこの世界から追い出されることとなりました。消滅はリリスが止めましたが・・・』


「まぁ、ゆっくり状況を説明してくれ。まだ時間はある」

 セイレーンの前の椅子に座る。


 ユイナが指を動かすと、扉が閉まった。

 静まり返った部屋に、セイレーンの電子の音が響いている。

読んでくださりありがとうございます。

最終章に入りました。


ユイナとコノハは異世界に転移できた唯一の女性2人ですね。

2人以降、女性は転移してきていません。転移可能なのは男ばかりです。


★やブクマで応援いただけると嬉しいです。

次回は来週アップします

是非見に来てください!

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