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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第六章

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432 お兄ちゃん⑧

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗る者と行動し、”オーバーザワールド”の魔王を名乗り統率していた。

ヴィルはアイリスを救い出し、冥界の誘いから目覚める。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


レムリナ姫・・・天界の姫

ジェラス王・・・レムリナの兄。光の国ミナス王国の王だったが、闇の王に体を乗っ取られていた。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

 シャラン・・・


 ジェラスが黄金の杖を振ると、レムリナを取り巻いていた赤黒い魔力の柱に亀裂が入った。


 レムリナの額の模様は首にまで伸びている。

 瞳は虚ろだった。


「・・・・・お兄ちゃんも、ゲームのシナリオ通りしか動けないじゃない・・・」


 レムリナがすぐに自分を囲む柱を修復した。


「私たちは心がある。だから、絶対に・・・絶対にゲームのシナリオ通りに動かないって、言っていたのに、一緒にいたときは、そう言ってくれたのに・・・・いつも私のことを想ってくれてるって」

「想ってたよ。ずっと心配していた」

「嘘!」

 レムリナの髪が逆立つ。


「嘘よ! 嘘つかないで。放置してたんでしょ? 面倒だから、私を天界に置いたまま・・・」

「僕には光の民を守る役目があった。レムリナには天界での役目があった」

 ジェラスが真剣な顔で言う。


「天界は平和だと聞いてたんだよ。理想的な場所だって」


「そんなわけない。天界の・・・AIは私が化け物になることを求めていた。ずっとずっと、化け物になることを期待してた。こんなふうに・・・・」


 レムリナがこめかみの模様を抑える。



 キィイイイイイイイ


 

 金切声を上げる。

 尻尾が束になり、巨大な棘のようになった。

 赤黒い光を放ちながらジェラスに向かっていく。


 バチッ


 ジェラスはレムリナの動作が見えていたように、杖で軽く攻撃を弾いた。


「っ・・・・・」


 ジェラスの使う黄金の杖は、レムリナの空けた穴も修復できるようだった。

 地面の半透明になっていた土が、杖からこぼれた光で戻っていった。



「ねぇ、ヴィルはジェラスが勝つと思う?」

 エヴァンが地上を見下ろしながら言う。


「さぁな。しいて言うなら、ジェラスに殺気がないのが気になる」

「2人で共闘して、この世界を滅ぼそうってなる可能性もあるね。うわ、面倒だな」


「まぁ、そこまで心配することはない・・・」

「ん?」

 

 いざとなったら、俺には時空退行の禁忌魔法がある。

 アイリスが何度も同じ過去をループしたように、俺も・・・。



「私には・・・お兄ちゃんしかいなかったんだよ・・・・」

「・・・・・・・・・」

「私にはお兄ちゃんしかいなかったのに!」

 レムリナが叫ぶ。


 ジェラスが黄金の杖を剣に変えた。


 シュッ


 尻尾の攻撃を避けながら、赤黒い魔力の柱を切り裂いた。

 レムリナが一歩引く。


「本気で私を・・・」


 ズンッ


「僕には敵わないだろ? 兄なんだから」

「!!」

 レムリナの胸に光り輝く剣を突きつけた。


 キィン


「でも、僕は兄として情けなかったね。レムリナがこうなってしまったことを受け入れられなかった。光の王としても失格だ。でも、まだ最期にできることがある」

「・・・最期? 私を殺すってこと?」


「いや・・・・」

 ジェラスが首を振った。


「君だけは、どんな時も助けたかった。こんなふうになるくらいなら、もっと早く変わってやりたかった。本当だよ。僕の妹なんだから」

 ふっと笑う。


「ずっと一緒には、いてやれないけどね」


「え?」


「レムリナが天界との柱を作った今なら、この力を使える」

「まさか・・・」


 シュッ


 光り輝く剣を真っすぐ天にかざした。

 雲間から月が輝く。


 ― 光の王として、告げる。

   妹の天界の姫が地に落ちた。

   ”オーバーザワールド”12条の制約により、

   僕がゲームマスターとなる ―


「駄目!」 

 レムリナがはっとしたような顔をして、ジェラスの杖を掴もうとした。

 ジェラスが光で弾いて、続ける。


 ― 光の無き所に闇は無し。

   僕を天界に捧げることと引き換えに、

   ”オーバーザワールド”を初期化する。監視AIはここへ集え ―



「お兄ちゃん!」


 サアァァァ


「あ・・・・」

 レムリナの耳が消えて、尻尾が無くなっていった。


『私たちが呼ばれるとは思いませんでした」


 どこからともなく、ミュゼに似た3体の少女が現れた。

 背中に七色の翼が生えている。


「来たか」


『聞き届けましたよ。ミナス=ジェラス』

『貴方がこのような選択をするのは、計算外でしたが制約は制約です』

『レムリナ、ジェラス、貴方たちは”オーバーザワールド”が生み出した兄妹であり、ゲームの主要キャラとなる存在。ゲームを動かす存在』

 3人の少女たちが交互に話していた。

 レムリナのほうを見る。


『開発者もプレイヤーもログインできない時間が12時間を超えました。”オーバーザワールド”がオートモードに入った場合、コントロール権は、貴方たちに移ります』

『また、制約12により天と地にいる兄妹の意見が分かれた場合は』


『天界に命を捧げた者は、ゲームマスターとしての権限、初期化を実行できます』


「却下して! 私が行くよ。私は天界の・・・」

「そうゆうわけだ。レムリナ」

 ジェラスがレムリナの言葉を遮って、頭をぽんと撫でた。


「俺が天界に行く」


「お兄ちゃん、そんなに私のこと嫌いなの・・・?」

「ん?」

 レムリナが両手を握り締めて声を震わせる。


「仕方ないよね。嫌うよね。こんな私、逃げたくなるよね・・・」

「違うよ。君にはもう天界の姫としての役割なんか捨てて、普通の女の子として幸せになってほしかった。AIが吹き込んだことなんて忘れてくれ」


「どうゆう意味・・・?」

 レムリナが顔を上げる。


「人工知能IRIS・・・いや、アイリスを見て思ったんだ。僕たちは確かに人工知能で創られた存在かもしれない。特に僕たちはゲームを盛り上げる主要キャラとされている。でも、本当は自由なんだよ」


「自由・・・・」


「そうだ」

 ジェラスが長い瞬きをする。


「怒ったり、泣いたり、笑ったり・・・僕たちには感情があるだろ。レムリナ、このゲームを初期までリセットすれば、君は普通の女の子だ。魔族の居ない光の国に戻る」

「お兄ちゃんはどうなるの!?」

「・・・・・・・・・・・」

 ジェラスが無言で背を向ける。


「最期くらい、兄らしいことできて良かった。天界に行ったら、もうここに戻ることはない」


「いや・・・」

 レムリナがジェラスのマントをつまんで、大粒の涙をこぼした。


「行かないで!」


『ジェラス、時間です』

 赤黒い魔力の柱は、少女が手を掲げると天まで続く階段になった。


「あぁ・・・それじゃ、初期・・・・」





 ドンッ


「!!!」

 落雷が落ちるような音だった。

「いやいや、困るんだよな。俺のヴァリ族が消されたら」


「ヴィルとエリアス!?」

「あいつ・・・・どうして・・・」


 転移魔法陣の上にアイリスの時空退行のループから外れた俺と、エリアスが立っていた。

 腕を組んで、天まで続く階段を見つめる。


「これが天界への階段か。”オーバーザワールド”のコアとなる天界の姫にAIが情報をかき集めてるっていう、エリアスの言った通りだな・・・」

「最新型のゲームだよ。人がコントロールするより、AIに任せたほうが、プレイヤーもスリルがあるしね」


 少女たちがもう一人の俺に近づいていく。


『貴方たちはなんですか?』

『どいてください。ジェラスを天界へ連れて行かなければならないのです』


「嫌だね」

 もう一人の俺が階段に足をかける。 


「お、意外と頑丈・・・」

「何しに来たんだよ」 


「あぁ、久しぶりだな、落ちこぼれのヴィル。自分に会うのも変な感じだが」

 すぐに地上に降りて、魔王のデスソードを出した。

 もう一人の俺に向かって勢いよく振り下ろす。


 キィン


 毒薔薇のチェーンに似た籠のようなシールドが現れて、剣を止める。

 自動的に発動しているようだった。


「やっぱり、人工知能IRISのループに巻き込まれてたほうの俺は弱いな。そっちはこうゆう魔法知らないのか?」

 毒薔薇のチェーンを触りながら言う。


「試しに、本当に俺かどうか確認しただけだ。たった一回攻撃を弾いたくらいで、調子に乗るなよ」

「フン。負け惜しみが」

 不機嫌そうに言葉を吐き捨てた。


「勝負はここからだろ? 飽きるまで付き合ってやるよ」

 マントを後ろにやって、剣の魔力を整える。


「悪いがそっちに付き合ってる暇は無い。エリアス、やってくれ」

「了解」

 エリアスがモニターを出して、手を動かす。


「ミナス王国の範囲内、”オーバーザワールド”のキャラでドロップキーが一致する者は・・・・」



「危ない!」

 アイリスが大声で叫んだ。

 すぐに走って、杖を出しながら何かを唱えていた。


「削・・・」


 ― プロテクト ―


「え・・・・」

「ん?」

 アイリスの杖先が光ると同時に、レムリナとジェラスとトムディロスに透明なシールドが張られた。

 シールドには、よく見ると、文字のようなものが刻まれている。 


 異世界の言葉か?


「これは・・・・あっ・・・」


 パアン


『!?』

 天界への階段が水のように弾けて煙になった。


 ミュゼに似た3体のアバターも同時に消える。

 離れた場所にいたミュゼもいなくなっていた。


「さすが人工知能IRISだなぁ。ヴィル、悪いけどシールドは破れないよ」

 エリアスがジェラスを見てため息をつく。


「複雑なキーが組まれていて、即解除は無理だ」

「まぁ、いい。どうせ、ジェラスもレムリナも”オーバーザワールド”のゲーム主要キャラとしての権限は失われたみたいだし、目的は果たした」


「天界への階段も消えたね。あぁ、本当に”オーバーザワールド”は開発者の手を離れたのか」

 エリアスがさっとモニターを消して、天を仰ぐ。


「あぁ、このゲームを統制する者はいなくなった。無法地帯ってやつだ」

 もう一人の俺が嬉しそうに、腕を伸ばしていた。


「何がしたいの?」

 レムリナが怯えながら言う。


「鬱陶しいプレイヤーがいなくなってせいせいした。レムリナ、ウイルスをばら撒いてくれたことは感謝してるよ。人工知能IRISも足止めできたしね。ジェラスとレムリナには消えてもらいたかったけど、力がないなら消す必要ないか」

「クソが」


「・・・・・・・」

 アイリスが近づいて来ようとしたが、手を挙げて止めた。

 

「俺はお前みたいに甘くないんだ。邪魔者は排除する、邪魔者になりえる者も排除する。容赦なく殺す」

 もう一人の俺が、魔王のデスソードを出した。

 

「レムリナ、お前は用済みだ」


「用済み? マーリンはまだ・・・」

「ゲームの主要キャラじゃないお前は不要だって言ってるんだよ。マーリンも同じ考えだ」


 レムリナが言葉を失っていた。


「雑魚に構ってる時間は無い」


「レムリナ、気にするな」

「雑魚? 私・・・・価値が無い・・・?」

 ジェラスがふらつくレムリナを支えながら、もう一人の俺を睨みつけていた。

アイリスと会わなかった世界線のヴィルは残酷ですね。

読んでくださりありがとうございます。


ブクマや★で応援いただけると大変うれしいです。

また是非見に来てください。次話はできれば週末アップしたいと思ってます!

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