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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第六章

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431 お兄ちゃん⑦

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗る者と行動し、”オーバーザワールド”の魔王を名乗り統率していた。

ヴィルはアイリスを救い出し、冥界の誘いから目覚める。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


レムリナ姫・・・天界の姫

ジェラス王・・・レムリナの兄。光の国ミナス王国の王だったが、闇の王に体を乗っ取られていた。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

 バチンッ


「っ・・・!」

 空から真っすぐ、レムリナを覆う闇の魔力を切り裂こうとしたが勢いよく弾き飛ばされる。


 ― 守護風泡シャボン ―


「っと・・・」

 エヴァンが出した風のクッションのような魔力が衝撃を吸収した。

 レムリナから離れたところで、足をつける。


「サンキュ、こんな魔法も使えたのかよ」

「当然。俺はフルステータスで転生したんだから、これくらい習得してるって。どの属性の魔法も使える。好みの魔法しか使ってないだけだ」

 エヴァンが得意げに笑みを浮かべた。 


「でも、悪いけど今回は、時止めは無理そうだ。無効化される」

「だろうな」

「”オーバーザワールド”が濃すぎる。おそらく、ここはクロノスの力の届かない地だ」

 エヴァンが指を鳴らす素振りを見せる。


「援護は任せて。それにしてもレムリナ、マジでヤバいね」

「ぶっ飛んでるな」

 黒々した魔力の隙間からレムリナが見えた。

 瞳は漆黒に染まり、九つの尻尾が地面を叩いていた。


「あはは・・・・あははは」


 急に、レムリナが顔を上げる。


 シュンッ


 暴風のような魔力がぴたりと収まって、レムリナが出てくる。


「お兄ちゃんが傍にいない世界なんてどうでもいい・・・・・」


 レムリナの髪は銀髪になり、額には赤い模様が浮かび上がっていた。

 髪を耳にかける。



「もう、どうでもいい、どうでもいいの」

 目は狂気じみて、うっすらほほ笑んでいた。



 ― ダブラ・エ・リクナ ―


 ドドドドドドドドドッ


 レムリナが手を伸ばすと、一気に赤黒い魔力が棘の束のようになって襲い掛かってきた。

 飛び上がって、避ける。


 ジジジジ ジジジジジ


「全部壊しちゃいたい」


 レムリナが両手を上げてくるくる回る。

 漆黒のスカートがふわっとした。



「普通の攻撃じゃ無いみたいだ。想像通りだけどな」

「やりにくいなぁ、こうゆうの」

 エヴァンが地面を見下ろす。


 レムリナの攻撃した地面は半透明になっていた。

 電子世界に穴が空いたというほうが近いな。


「この空間の空き方、『忘却の街』に似てるよ。触れないほうがいい」


「そうだな」 


 テラから受けた異世界の力を直接与えなければまともに戦えない。



 右腕をドラゴン化させる。


「ちょっ・・・ヴィル、それ、大丈夫だよね?」

「心配はいらない。まぁ、暴走したら、その時は頼む」


「冗談は、ここを出てからにしてよ」

 軽く笑った。

 テラから受けた異世界の力は、完全にコントロールできていた。


 自分でも不思議なくらい、体に馴染んでいる。

 魔王のデスソードを左手に持って、レムリナのほうへ突っ込んでいく。


 シャアァ


 ドラゴンの爪でレムリナの魔力を切り裂いていった。

 すぐに魔王のデスソードを回して、勢いよく振り下ろす。


 ― ダブラ・エ・リクナ ―


 レムリナが手を伸ばした。


  ドンッ


 ― 風龍刃雷バーフ


 攻撃が届く前に魔王のデスソードで突風を巻き起こす。

 ドラゴン化した魔力と合わせると、レムリナの攻撃は飽和していった。


「あれ? そんなことできるんだ。半分魔族で、半分異世界の者なの? そうゆう者がいるなんてね、それも人工知能IRISの力?」

「ん?」


「憎いなぁ・・・憎いの、私、憎いの」

 レムリナが顔を抑えながら呟く。

 柔らかい髪の下のほうから、白く変わっていった。


「・・・・憎い、憎くてしょうがない。目に入る全てが憎い憎い・・・・どうして私ばっかり」

 レムリナが立ったまま、9本の尻尾がナイフのように攻撃してきた。


 魔王のデスソードを消して、左腕をドラゴン化していく。



「あれ?」

 レムリナが首をかしげる。


「私も化け物なら、魔王ヴィルも化け物だったのね」

「あぁ、そうだな」

「化け物同士なら分かり合えるんじゃない?」


「何の話だ?」


 レムリナの攻撃が止んだところで、体勢を立て直す。


 バサッ


 背中にドラゴンの翼を広げる。

 頭上から見下ろしているエヴァンの緊張感が高まったのを感じた。


「私、ずっと耐えてきたの」

 レムリナが左右に揺れながら言う。

 地面には魔法陣が展開されていた。


「ずっとずっと、この世界を呪ってきた。お兄ちゃんと過ごすことを希望に、耐えてきたの」

「へぇ・・・」


「でも、裏切られた。魔王ヴィルだって、同じことなかった? 誰かが憎いって、呪ってやりたいって」

「・・・・忘れたな」


 魔力を整えていた。

 ドラゴン化した爪が漆黒に染まっていく。


「お前はアイリスを危険な目に合わせた。俺の仲間を籠に閉じ込めた」

「そうね」


「AIが何したか知らんが、ここで潰してやる」

 翼を大きく広げて、旋回する。


 ガッ


 短い息を吐いて、レムリナに襲い掛かった。

 九つの尻尾が禍々しい魔力を放って、両手で放つ攻撃を弾いていった。


 バシッ バシッ ガッ ジジッ・・・


「ふふふ、これが魔王ヴィル、これが魔王ヴィルなのね」


「煩い」


 急激な怒りが、魔力となって、攻撃力が上がっていくのを感じる。


 こいつを殺さなければ、アイリスはまた・・・。


「いいな、人工知能IRISは・・・」

「人工知能? アイリスのことか?」


「人工知能IRISね」

 念を押すように言う。


 尻尾で攻撃を続けながら、レムリナがゆらっと横にずれた。

 アイリスのほうを見つめていた。

 空中を蹴って、地面に降りる。


「私と同じ人工知能なのに大切にされて」


「何が言いたい?」

「ずるいなって。そう、人工知能IRISはずるいの」

 攻撃が止んで、レムリナが自分の尻尾を抱き寄せる。


「私だって人工知能IRISと同じ、学習型のキャラだった。なのに、こうなっちゃった。プレイヤーやリスナーが求めるのはこうなった私。でも、残念。ウイルスばら撒いたから、もうここに来れない」

 尻尾を離す。


「憎い。人工知能IRISが憎い。勝手に消えたと思ったら、異世界に転移して人間になる? 私はお兄ちゃんと一緒にいることもできないのに」

「アイリスは関係ないだろ。勝手な憎しみをぶつけるな」

「憎い憎い憎い、苦しみを、私はこんなに苦しんできたのに」

 レムリナの額の赤い模様が広がっていく。


「ここで私が魔王ヴィルに勝ったら、真っ先に人工知能IRISにウイルスを埋め込みに行く。今度は絶対に、自滅させてやる」


 ジュウウゥウゥゥウウウ


 レムリナが地面に手をかざした。

 魔法陣の光りが空に伸びていく。


 ジジ・・・


「うわっ・・・・!!」

 エヴァンが咄嗟に避けて、地上に降りてきた。


 ゴオオオオォォォォォ


 光りが雲を突き抜ける。

 レムリナを中心に、光と闇のような赤黒いとぐろを巻いて太い柱のようになっていた。


「誰も私に近づけない。ここは”オーバーザワールド”、全ては私の盤上の駒なんだから」


 レムリナが一気に魔力を放出した。



「あははははは、あははははははは」

 レムリナが天を仰いで笑っていた。


「・・・・・・・・」

 ドラゴン化していた腕を元に戻す。

 エヴァンが駆け寄ってきた。


「俺の攻撃は、届かなくなった。あの柱に近づくだけで無効化される」

「ここ、”オーバーザワールド”の中心だもんね。甘かったよ」


「力で押し切るのは不可能だ」

「アイリス様だけでも逃げてもらう?」

「それしかないな。エヴァン、頼めるか? 俺はここで足止めを・・・・」


「その必要はないよ」

 ジェラスが前に出て、剣を握り締めた。


「僕の力なら、レムリナに対抗できる」

「大丈夫なのか?」


「これは僕の意地だ」

 ジェラスの身体は光をまとっていた。レムリナに近いものを感じる。



「いまさら何?」

 レムリナが怪訝な顔をする。


「お兄ちゃんは、私を信じてるって言ったのに、そうじゃなかった」

 レムリナが頭に生えた耳をピンと伸ばす。


「どうせ死にたくて、今、私の前にいるんでしょ?」

「・・・・・」

「私に嘘は付けない! 私に殺されたくて、私の前に来たんでしょ!?」

 赤黒い柱は、レムリナに無限の力を与えているように見えた。


「違う」


「嘘。私、全部わかったの。全部わかっちゃった。お兄ちゃん、私が怖かったんでしょ? 怖いから逃げたいんでしょ?」

 ”オーバーザワールド”のすべてがレムリナを中心に回っている。

 天から注ぐ力が、レムリナに集まっていた。


「私を見捨てるつもりでしょ? 最初から見捨ててたんでしょ? お兄ちゃんももういい。ここにある、全部壊して、無くなっちゃえばいいんだ!」

 レムリナがかすれた声で叫んだ。


「そうじゃないよ。僕は確かにレムリナのことを理解していない。でも、レムリナも僕のことわかってない」


「だって、お兄ちゃんはいつも・・・」

「いつもレムリナの傍にいなかった。光の王国、ミナス王国の民と共にいた」


「!!」

 レムリナが髪を逆立てる。


 ジェラスから迷いは消えているように見えた。

 剣を黄金に輝く杖に変える。


 エヴァンに合図を出して、後ろに下がった。 

読んでくださりありがとうございます。

ブクマや★で応援いただけると大変うれしいです。


仕事はじめで毎日ぐったりしております。休みの日ってなんで障害起こるんだろう。

もう9連休が恋しいです;;

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