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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第六章

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425 お兄ちゃん①

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗る者と行動し、”オーバーザワールド”の魔王を名乗り統率していた。

ヴィルはアイリスを救い出し、冥界の誘いから目覚める。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


レムリナ姫・・・天界の姫

ジェラス王・・・レムリナの兄。光の国ミナス王国の王だったが、闇の王に体を乗っ取られていた。


ヴァリ族・・・”オーバーザワールド”の魔族。”オーバーザワールド”の魔王となった、別時間軸のヴィルが魔族と区別するために名付けた。

「嘘だろ。これが・・・ミナス王国、なのか?」

 ジェラスが空飛ぶ船を降りた瞬間、呆然として肩を落とす。

 日は暮れて、月明かりが煌々としていた。


「地図はここを指してる。間違いない、ここがミナス王国だ」


「ジェラスの言ってたゼロの氷のウォールは消えたみたいだね」

「まぁ、想定内だな」

 テラが言った通りの時間と時刻に到着していた。


「・・・・・・・・・」

 街にジェラスとメイリアの話していたような隕石は無い。

 ”オーバーザワールド”と、この世界が完全に接続したからだろう。


「夜に着いてよかったの? ヴァリ族が暴れる時間帯じゃん」

「仕方ないだろ。急いで来たから燃料を使い切ったんだ。燃料の魔法石を補充しないと船が墜落する」

 テラが見慣れない光る宝石を船の側面にはめ込んでいた。


「なるほど。俺も手伝おうか? 老眼だろ?」

「だから、今はこの見た目の年齢だ。ほら、これで終わりだって」

 テラが最後のの宝石をはめ込んでいた。

 船がじんわりとした魔力に包まれる。


「後は12時間経過しなきゃ船は飛ばない。ここに置いておくと面倒だからしまっておくよ」

 テラが近くの岩に腰かけて、モニターを見つめていた。



「なんか、見られてる感じはするね。近づいてこないけど」

 エヴァンが森のほうを横目で睨む。


 闇の魔力が濃い。

 住んでいるのは人間ではないだろう。


「全体的に暗い。ほのかに血の匂いがする」


「プレイヤーはいない・・・よね?」

 ナナココが一人船に残って、恐る恐る下を覗き込んでいた。


「まだ残ってたのか。モニターで確認する限りはいないって。船しまうから、早く降りて」

「了解。あ、待ってってば」


 ナナココが慌てて飛び降りていた。



 ― ホーリーソード ―


「ここからは戦闘態勢ね。とりあえず、街に入って状況確認を・・・」

「アイリスは後方支援だ」


「わっ・・・と」

 アイリスを後ろにやる。


「どうして? 私、強いんだから前に出たほうがいいでしょ?」

「レムリナとは相性が悪い。自分の身を守るよう行動しろ」


「でも・・・」

「そうそう。テラの隣にいて、いざとなればテラを盾にすればいい。戦闘はヴィルとレナと俺が出るからさ。な、テラ」

 エヴァンが憎たらしい笑みを浮かべて、テラのほうを見る。


「俺はリタイアするつもりはない。ここで骨を埋めるつもりだ」

「ナナココだって戦える!」

 ナナココが駆け寄ってきた。


「意地でもこのゲームにしがみつくんだから。配信できなくたって、後日配信できる可能性もあるし!」


「戦闘はレナたちに任せてくださいってことなのです」

 レナが氷のブリーズソードを出しながら言う。


「強い者は弱い者を守らなければいけないと教わりました。遠い昔の話です」

「ナナココは別に弱くは・・・」


「戦闘経験が浅いだろ?」

「このゲームでは浅いけど他のゲームでは上位だもん」


「ま、無茶するなって」

 エヴァンがレナを横目に、ナナココを止める。


「俺たちが前面で戦う。後は後方支援で」


「わかった、じゃあ、3人に任せるね」

「あぁ」

 アイリスがホーリーソードを杖に変えていた。



 ズズズ・・・


 緑の皮膚の牙と角を持つ者たちが数十体ミナス王国の門の前にいた。

 顔に人間の面影がある。

 

「王のお迎えかな?」

「随分、派手な奴らだな」


 グルルルルルルルルル


「魔族・・・いや、民だ・・・僕の国の・・・老人・・・子供まで」

 ジェラスが一歩引いて、冷や汗をかいていた。


「どうすれば・・・」

「ジェラス、俺はあいつらを倒して、サリーとシエルを救い出す。いちいち倒れられても面倒だ。覚悟がないなら、入ってくるな」


「覚悟はできてる」

「?」

 ジェラスがこわばった表情で、剣を出していた。

 指先が震えている。


「・・・・僕の覚悟は決まってるんだ。僕はレムリナを救うんだ。光の王として、役割を果たす。この世界に光を」


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 無言でエヴァンと目が合った。肩をすくめる。

 ジェラスが勇み足で、ミナス王国へ向かっていった。




 エヴァンが高く飛び上がり、剣を真っすぐ”オーバーザワールド”の魔族、ヴァリ族の群に向かって突き刺した。


 ― 黒雷帝エンペラー


 バチバチ バチバチ


 ぎゃぁぁああああああ


 正面にいた10体のヴァリ族が電流を浴びて、消えていった。

 他のヴァリ族が少し怯んでいたが、誰かが雄たけびようなものを上げると、一気に俺たちに襲い掛かってくる。


 ― 地獄の業火 ― 


 ゴオオォォォオオオオオ


 周辺一帯を黒い炎で燃やし尽くす。

 立ち並ぶ民家や店から、人間の服を着たヴァリ族が奇声を発しながら出てくる。

 

 ぎいぃいいああああ


 ヴァリ族の悲鳴が響き渡る。

 すぐに光の粒になって消えていった。


「うわっ、アレに巻き込まれるとゲームオーバーだ」

「テラ、シールド早く出して」

「わかってる」


「大丈夫、私がいるから。2人にはシールドが必要だもんね」

「ありがとう・・・」

 アイリスがほほ笑んで、テラとナナココの前に聖なるシールドを張っていた。

 ナナココがアイリスの七色に光る透明なシールドに触れて、ほっとしたような表情を浮かべた。


「ミナス王国の民が・・・あれは、アカデミアの先生たち・・・」

 ジェラスが人間の2倍はある大きさのヴァリ族を見て、剣を震わせていた。


 グガアァァァァァ


 斧を振り回しながら攻撃してきた。

 大剣を振り降ろすヴァリ族もいる。

 武器の使い方は人間に近い。


 ― 氷結蓮華 ―


 レナが氷のブリーズソードを回して、蓮華の花の模様を出す。


 ― クラッシュ ー


 パリン


 火花のように弾けて、ジェラスの背後から襲い掛かろうとしていたヴァリ族に破片が突き刺さった。

 刺さった部分から凍り付いていき、一瞬で消えていく。


「ジェラス!」

「え?」


 ザッ


「!!」

 レナが地面に足が着くと同時に、武器を持ってジェラスの前にいたヴァリ族を斬った。


「ぼうっとしてると危ないですよ」

 一連の動きは無駄がなく、流れるようだった。

 レナの本来の力か・・・。


「もう決心が揺らいだのですか?」

 ジェラスを見上げる。


「っ・・・・・」

「そんなんじゃ、戦闘の邪魔になります。下がっていてください」


「君らは・・・どうして、そう簡単に、倒せるんだ・・・?」

 砂埃が舞う。

 ヴァリ族は仲間が消えたことに奇声を発していたが、逃げるようにして、民家の中に入っていった。

 

「人間だったんだ。彼らは魔族だけど、人間だったんだ」

 ジェラスが頭を抱える。

 髪をぐしゃぐしゃにした。


「僕の王国の民だった。僕たちがゲームの登場人物だから、こんなに残酷なことができるのか? 話せばわかるかもしれ・・・」

「恨むなら、この世界を創った異世界の奴らを恨め」

 剣をしまって、ジェラスのほうを見る。


「言ったはずだ。覚悟がないなら入ってくるな」

「・・・・・・・」

 ジェラスの顔は青ざめていた。


「ジェラス、魔王ヴィル様はね」

 アイリスがジェラスの横に並ぶ。


「優しいだけじゃ何も守れないことを知ってるの。もし、ジェラスがここにいるだけだったら、99%の確率でレムリナ姫のところにも行けずに死んでた。ここで絶望して死ぬことを望んでたの?」

「っ・・・そうゆうわけじゃ・・・」

 ジェラスが俯いて、乾いた笑みをこぼす。


「・・・いや・・・無いとも言えないな。僕は、この光景を見たとき、真っ先に死んで楽になりたいと思った。僕の王国の民がこんなことになるなら、王である自分も・・・って考えるよ」

 剣を握り締めながら言う。


「まぁ、気を落とすなって。自分振り返ってるだけテラよりマシだよ」

「いちいち俺を引き合いに出すなよ」

 エヴァンがジェラスの背中をぽんと叩いた。


「”オーバーザワールド”って闇落ちすると、人間や他の種族が全員魔族になるのが面倒だな」

「理性まで失うのがゲームの魔族って感じだね」


「こんなゲーム何が楽しいのか、異世界の奴らの考えることはよくわからん」

 雲が晴れると、月明かりが差し込んだ。

 華やかだっただろう城下町が続いた先に、大きな城が見えた。

読んでくださりありがとうございます。

ブクマや★で応援いただけると大変うれしいです。


今年もあと少しとなってきました。

仕事納めなのですが、納められるのかギリギリのところを生きてます。

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