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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第六章

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423 暴食のデンデ

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗る者と行動し、”オーバーザワールド”の魔王を名乗り統率していた。

ヴィルはアイリスを救い出し、冥界の誘いから目覚める。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になっていた。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


レムリナ姫・・・天界の姫

ジェラス王・・・レムリナの兄。光の国ミナス王国の王だったが、闇の王に体を乗っ取られていた。


七つの大罪・・・???

「わぁ、空飛ぶ船。すごい、早いね!」

 アイリスが目をキラキラさせて船の先端に立っていた。


「音楽とか聴きながらだと最高! 星空が降ってきそう」

「落ちるなよ」

「はーい」

 機嫌よく手を伸ばしていた。

 アイリスはウイルスが入ってたとは思えないほど元気だった。



「魔王ヴィル、乗り心地はどう?」

 テラが少し自慢げに聞いてきた。


「なんかこうゆう船見たことある気がするんだよな」

「異世界からこっちに移行できるか確認してたから、見てると思うよ。試運転は、十戒軍にやらせてたんだ。正直、どうなるか読めなかったし」


「あー・・・・」


「”オーバーザワールド”の地図から出ると、魔力を切り替えなきゃいけないからルート確認しながらじゃないと」

 テラがぶつぶつ話していた。


「なんとなく乗りたくない船だな」

 魔王城に十戒軍が現れたときに使っていた船に似ている。


 船といっても、通常の船ではない。

 楕円形で、帆のない船だ。

 大きめのソファーに椅子、テーブルに食事が備わっていて、どこかの部屋が移動しているような感覚だった。

 

「私、こうゆう乗り物初めてです」

「僕もだよ。メイリアたん。今日は月が綺麗だね」

「柔らかい。不思議なソファー」

 メイリアが毛皮のソファーを珍しそうに撫でていた。


「そういや、そこの小太りくんもついてきたんだ」

「小太りくん!?」


「だって、そうじゃん。なんだっけ?名前」

「トムディロス、ポセイドン王国の第三王子だ!」

「あ、そ」

 エヴァンがソファーに横になって、毛布にくるまっていた。


 トムディロスが膨れながら、籠の中のクッキーをつまんでいる。



「あはは、なんだか大所帯ですね。ヴィルはいろんな仲間を集めますよね」

「たまたま集まっただけだ」

「ふふ、こうゆう旅って楽しいのです」

 レナが空を見つめながら言う。


「ねぇねぇ、ヴィル」

 エヴァンが寝転がりながらこちらを見る。


「俺にとっていいこと教えてよ。死ななかったらって言ってたじゃん」

「あぁ、そうだ。約束してたな」

 

 椅子に座り直して、エヴァンのほうを見る。


「望月りくは”クォーツ・マギア”というゲームに転生しているらしい。アエル・・・いや、ゼロも聖騎士として転移させられると聞いている」


 バサッ


「え!?」

「!?」

 エヴァンとメイリアが同時に反応した。

 2人が勢いよく立ちあがる。


「ゼロが消える前に話してた。あいつは嘘は言わない奴だ。月の女神とデウスエクスマキナがどうとか言ってたな。あとは知らん」



「”クォーツ・マギア”も体感型VRゲームだよ。ナナココよりもテラのほうが詳しいかもしれないけど」

 ナナココが毛布を頭からかぶって、不貞腐れたように言う。


「もちろん知ってるよ。”クォーツ・マギア”は”オーバーザワールド”に似てるからね。基本的にはプレイヤーが旅人として、”クォーツ・マギア”の世界を知っていくストーリーだ。クリエイターが自由に創っていて、競争的な要素のないゲームらしいから、俺は興味ないな」

 テラがそっけなく言った。


「・・・・りくが・・・」

 エヴァンが立ちあがったまま毛布を掴んでいた。


「よかったですね。エヴァンもそのゲームに入りたいのですか?」

 レナが無理してほほ笑んでいるのがわかった。


「いや、今はいいよ。でも、嬉しいな。りくが・・・」

「そうですか」

 エヴァンが下を向いて、喜びをかみしめていた。


「魔王ヴィル、その情報に信憑性はあるの?」

「あいつはそうゆう嘘はつかない。本当なんだろう」

「じゃあ・・・・・」


「なんでそんなことを俺に言い残していったのかは知らないが、俺はまたあいつに会えるような気がしてるよ。腐れ縁ってやつだな」

 夜風が冷たく、頬にあたった。


「そっか。勇者様・・・」

「えっ、メイリアたん、まさかゼロのことが好きとかそうゆうのあるの?」


「好き?」

「いや、今答えないで。聞きたくないから。勇者のパーティーはカップルができやすいって定番設定、見ないふりしてきたから」

 メイリアが首を傾げた。


「まぁまぁ」

 エヴァンがトムディロスの肩を叩く。 

「落ち着きなって、小太りくん、恋愛は長期戦だよ」

「君、実年齢何歳だよ」

 トムディロスが怪訝な顔をしている。


 

 ガタン


「なんか美味しそうな匂いがすると思ったら、プレイヤーの残りがいたのか。あ、やっぱりこんなところにお菓子が。俺の好きなチョコレートクッキーも入ってる!」

「!?」

 突然、色白の太った男がトムディロスの横に座っていた。

 

 ― 氷のブリーズソード


 レナがすぐに剣を出して、構えた。


「うわぁっ」

 トムディロスが床に転げながら、お菓子の入った籠を抱える。


「いいじゃん。こんなにあるんだから、貰ったって」

「何者ですか!?」


「俺は七つの大罪、暴食のデンデだよ。アスリアの気配がするなって思って動いてるんだけど、美味しそうな匂いがするとつられて、なかなかジオニアスのところへ行けないんだよね」

 顎をたぷんとさせながら、クッキーを食べていた。


「重量オーバーだ! 魔力消費激しいから、早くそいつ降ろしてくれ!」

 テラのモニターの縁が赤く点滅していた。


「だってよ、小太りくん」

「僕じゃない。降りるのはあっちだ」

 トムディロスがデンデを指さす。


「冗談に決まってるじゃん」

「君が言うと、冗談に聞こえないって」

 エヴァンがトムディロスをからかって笑っていた。


「エヴァン」

「というわけだよ。降りてもらう。力ずくでもね」

 エヴァンが剣を出した。


「俺は温厚なほうなんだ。その食べ物よこさないなら、降りる気はない。食べ物さえよこせば、おとなしく降りてやる」

 デンデが空中に線を描いて、斧を出していた。


「俺は七つの大罪だ。意外と強いからね」


「・・・・・・・」

「・・・・・・・」


 レナとエヴァンが無言でトムディロスのほうを見る。


「嫌だって、これは貴重な食べ物で。あっ」


「交換条件だ」

 

 お菓子の入った籠をトムディロスから奪って、デンデに近づいていく。


「3つの情報を話せ。そしたら、これをやる。速やかに降りろ」

「食べ物をくれるならいいよ。俺は暴食のデンデだからね」

 デンデが斧を降ろした。


「・・・・・・」

 目で合図して、レナとエヴァンに剣を降ろさせる。


「1つ目、お前ら七つの大罪の目的はなんだ?」

「俺たち、アスリアを探してるんだ」


 冥界の誘いで会ったミーナエリスとかいう女と同じ奴らか。

 あいつも、自分のことを『七つの大罪』だと話していたな。

 

「『七つの大罪』は何者だ?」

「”ユグドラシル”というゲームで、星の女神アスリアに救われた仲間だ。はい、これで2つ答えた」

 デンデが肉付きいい手をこちらに向ける。


「3つ目の質問は?」

「ちょっと待って」

 突然、メイリアが前に出た。


「私、勇者様と旅していたとき、アスリアのことを知ったの。あとで説明するから、最後の質問は私にさせて」

「わかった」

 お菓子の入った籠を、メイリアに預ける。


 腕を組んだ。


 ゴゴゴゴゴゴゴ


 船が軽く傾いてきていた。

 テラとナナココが慌てているのが見える。


「アスリアとゼロはどうゆう関係?」

「ゼロ? 知らない名前だな。いや、それじゃだめだ。うーん、お菓子のため、お菓子のため」

 デンデが自分の頭をくしゃくしゃ搔く。


「じゃあ、ベリアルは?」


「!!」

 デンデの顔色が変わる。


「ベリアル・・・憎き名前だ。アスリアはベリアルを信頼し、ベリアルもアスリアを信頼していた。これですべての質問に答えた。そのお菓子はもらうよ」

「あっ・・・・」

 デンデが、メイリアの差し出したお菓子の籠を手に取る。

 

「美味しそう。やっぱ、プレイヤーが持ってるお菓子って美味しいんだよな」


 シュンッ


 一瞬で転移魔方陣を描き、消えていった。

 傾いていた船が、平らに戻っていく。


「ふぅ・・・なんか傾いてたみたいだね。あれ? みんなどうしたの?」

 アイリスがふわっと飛ぶようにしてこちらに来た。


「アイリス、今の状況見てなかったのか?」

「だって、ずっと空飛ぶ船に夢中だったから。テラが持ってきた今異世界ではやってる音楽聞いてて・・・」

「・・・・・・」


 やっぱりアイリスが浮ついている。

 気を引き締めなきゃな。


 ため息をついて今起こったことを説明していた。

 レナがぼうっとエヴァンのほうを見つめている。  

アイリスは胸がいっぱいなので、他の話は頭に入って来ていません。

エヴァンはよかったですね。レナは複雑ですが。


読んでくださりありがとうございます。

ブクマや★で応援いただけると大変うれしいです。


次回は来週アップ予定です。また是非見に来てください!

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