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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第六章

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422 AIと魔王とプレイヤーと・・・

アイリスの過去退行から外れたヴィルはマーリンを名乗る者と行動し、”オーバーザワールド”の魔王を名乗り統率していた。

ヴィルはアイリスを救い出し、冥界の誘いから目覚める。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

レナ・・・北の果てのエルフ族の最期の生き残り。異世界住人によって仲間を殺された。

エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。


メイリア・・・異世界から『ウルリア』に転移してきたVtuberの一人。仲間を戦闘で失い、ゼロの仲間になる。

ナナココ・・・異世界のゲーム配信者。登録者数が常に10位以内に入っている。

トムディロス・・・メイリアに惚れて追いかけまわしている。ポセイドン王国第三王子。


レムリナ姫・・・天界の姫

ジェラス王・・・レムリナの兄。光の国ミナス王国の王だったが、闇の王に体を乗っ取られていた。

 違う時間軸の俺はどこかで、アイリスの時間退行のループから抜けて、”オーバーザワールド”の魔族の王になっていた。


 俺が見た時間軸ではどこにもいなかったことがひっかかる。


 19回目以降のループで奴が魔王にならずに外れたのだろう。


 マーリンじゃない、何者かが、マーリンの名を語って俺を連れていったようだ。

 今頃になって現れるまで、どこにいたのか気になっていた。


「ねぇねぇ、魔王ヴィル様。もう一回聞きたい」

「覚えてないって」

「嘘。28%の確率で嘘だってわかる」

「・・・意外と低いな」

「じゃあ、58%にしておく。魔王ヴィル様は、会話したことちゃんと覚えてて、照れて言わないだけ」


「じゃあ、そうゆうことにしておくよ」

 アイリスは違う時間軸の俺がループから外れて”オーバーザワールド”の魔王になったことを話しても、あまり気に留めてなかった。


 というか、話を聞いてない。


「魔王ヴィル様、だって、あの時は冥界にいてぼんやりしてたから、聞きたいのに。生の声をレコーディングしたかった」

「レコーディングってなんだよ。つか、もうこの話は終わりだ。キリがない」

「えー」

 アイリスがあからさまに残念そうな顔をする。


「ねぇ、冥界への誘い中なんかあったの?」

「エヴァンまで乗ってくるなって」


「だって、気になるじゃん。いいなぁ、ヴィルは」

 エヴァンが息をついて、体を伸ばしていた。

 


「駄目だ。もう諦めるしかない」

「そんな・・・ナナココが配信できないなんて・・・テラ、なんとかならないの?」


「君が配信すると、確実にウイルスをばら撒く。アバターに支障があるだけじゃなく、向こうの世界の個人情報をSNS上にばら撒くみたいだ。たちが悪い」


「個人情報を? ナナココの個人情報は?」

「一応漏れてないみたいだね。でも、ナナココのウイルスの特性は、他のプレイヤーや接触者を強制ログアウトさせる、ステータスを0に戻す、SNS上で個人情報を拡散する。最悪のウイルスだ」


「配信しても、ゲームやってない人は関係ないんじゃないの?」


「配信を見る側の情報も抜き取るウイルスらしい。ウイルスとしては最強だよ」

「全然嬉しくない。最悪」

 テラがモニターを見ながら、ナナココと話していた。


「配信しなきゃ、ナナココみんなに忘れられちゃう・・・」

 ナナココが今にも泣きだしそうな顔をしていた。



「いいなぁ、あっちはくだらないことで悩んでて」

 エヴァンが皮肉っぽく言いながら、籠からパンを取り出した。


「エヴァン、それ、ナナココが出したパン・・・。”オーバーザワールド”の食べ物ですよ」


「美味しければ何でもいいんだよ。レナも食べればいい」

「う・・・でも・・・・」

「お腹空いてないなら、俺たちで食べちゃうよ」


「んー、では、食べます!」

 レナが勢いよく食いついていた。


「で? ヴィル、これからどうするの?」

 エヴァンがパンを食べながら、丸い岩に座った。


「違う時間軸のヴィルが”オーバーザワールド”の魔族・・・ヴァリ族だっけ? 統率して何か始めるんでしょ?」 

「あぁ、面倒なことになったな」


「ループから外れたヴィルがいるとはね」

「今、奴は無視だ。先にレムリナからシエルとサリーを救い出す」


「了解」


 ふと、月の女神から貰った腕輪が無くなっているのに気づいた。


 冥界に落としてきたようだな。


 魔力は問題ない。

 引き出すべき魔力は、完全に使いこなせるようになっていた。




「僕の妹がすまなかった。って、こんな謝って許せるものだとも思ってないけど・・・」

 ジェラス王が深々と頭を下げる。


「私のことは気にしないで。ウイルスは除去したし、いいこともあったし。いいことっていうのは言えないんだけど、ね、ね」

「?」

 アイリスがにこにこしながら両手を振っていた。


「アイリス様浮かれてて、なんだか心配なんだけど」

「知らん。俺に言うなって」

 エヴァンがこそっと耳打ちしてきた。


「ねぇ、ジェラス王とレムリナ姫って実の兄妹ですよね?」

 レナがジェラス王をまじまじを見つめる。


「そうだね」

「兄妹で好きあってるんですか・・・」

「ブラコン超えたやつじゃん。兄妹エンドは炎上するやつだって。”オーバーザワールド”の設定考えたやつ、歪んでるだろ」

 エヴァンが時折、異世界で使うような言葉を織り交ぜていた。


「そんなんじゃない! レムリナは・・・」

「AIの暴走に近い感じだな」


「!」

「え、ヴィル、異世界のことわかるのですか?」

「ここまできたら嫌でも理解できるようになるだろ」

 腕を組む。


「レムリナ姫を世話してたのがAIなんだろ? じゃあ、そのAIの思考が歪んでたって考えるのか普通だ」


「・・・・・」

 ジェラス王が俯く。


「AIは異世界の人間たちの言葉から学習していく。ネット上に流れる思考が、過激な展開を求めた結果が、レムリナを歪ませたと思ってるよ」


「あーなるほどね」

 エヴァンが瞼を重くした。


「天界の姫と、光の王が普通に仲のいい兄妹・・・なんて、異世界の住人にとってはつまらないか」

「プレイヤーたちは刺激を求めて、ゲームにログインするからね」


「・・・・・・・」

 レナがパンをもぐもぐ食べながら気のない相槌を打っていた。



「とにかく、妹の目的は僕だ。何をしようとしているのかはわからないが、必ず止めてみせる」

 

「ミナス王国まで、ここからどれくらい?」

「そうだな。歩いて10日ってところか」


「ねぇ、テラ、なんか乗り物ない? 飛び続けるにしてもきついんだけど」

 エヴァンがだるい口調で言う。


「俺を便利屋みたいに言うなって。まぁ、無いことはないけど」

「さすが爺さん」


「まだ、爺さんに入る歳じゃない。しかもこのアバターは少年だろ」


「向こうでは、結構歳いってるくせに。痛々しいな」

「君には言われたくないね」

 テラが咳ばらいをして、空中のモニターを操作していた。


「はぁ・・・配信できないってなると、このまま”オーバーザワールド”続けるのしんどいな。といっても、私、向こうの世界に帰る場所なんてないから、ここに居なきゃいけないんだけど・・・」

「帰る場所がない?」

 レナが首をかしげる。


「どうしてですか? 向こうに体があるのに」

「私にはゲーム(これ)しかないから、全てを賭けてるの。帰るつもりは無い」


 ナナココがパンの籠に手を伸ばしたときだった。




 スタッ


「私も連れて行って」


 深い緑糸の目を持つ少女が、木の上から軽々と降りてきた。

 後ろから小太りの少年が息を切らしながら走ってくる。


「め、メイリアたん、待って。うっ、魔王一行・・・」

 汗だくになりながら結界の外でこちらを呼ぶ。


 手を挙げて、ジェラス王に結界を解かせた。



 シュンッ

 

「お前らは? どこかで見た顔だな。確か・・・」


「私はメイリア。勇者ゼロと旅をしていたの。元・・・『ウルリア』いたVtuber。みんな、魔王ヴィルに敗北したって聞いてる・・・」

 アイリスのほうをちらっと見ながら言った。


「逃げてたやつか?」

「違う! 私は事情があってアリエル王国に辿り着けなかっただけで、仲間を見捨てたわけじゃない!」

 メイリアがむきになって言い返してきた。


「まぁまぁ、俺はトムディロス。ポセイドン王国の第三王子だ。闇の王を倒すために、”ブレイブアカデミア”に入ってた」

「ゼロも入ってた学校ですね」

「抜けてきたの?」


「うん」

 メイリアが大きく頷く。


「私は魔王ヴィルと協力して・・・」



 ― 魔王のデスソード


 キィンッ


 魔王のデスソードの刃先を向ける。


「何が目的だ?」

「魔王ヴィル様!」


「魔族の軍勢が押し寄せたときも、お前ら”ブレイブアカデミア”とかにいる奴らは出てこなかった。何か別の企みがあったんじゃないのか?」


「身を隠すよう、指示されてたから」

 メイリアが両手を上げる。


「は? 身を隠す?」

「ゼロが呼びかけてプレイヤーが主体となっていたから、アバターの私たちは危険だってブレイブアカデミアの判断」


「うわ、勇者の学校の意味ないじゃん」

 エヴァンが呆れたように言う。


「生徒たちは行きたかったんだけど、先生が止めたんだ。俺はどっちかというと行きたくなかったからラッキーって思ってたけどさ」

「私は命令されなきゃ動けない。”ブレイブアカデミア”で待っていても、勇者様は戻ってこなかった。きっと、もうこの世界にいない・・・・」

 メイリアが大粒の涙を流す。


「め、メイリアたん」

 トムディロスがハンカチを出そうとして、ポケットをひっくり返していた。


「メイリア・・・・」

「勇者様は自分が戻らなかったら、魔王ヴィルに従えと言った。だから、仲間に入れてほしい」


「俺は、お前らVtuberを一掃した。忘れたのか?」


「・・・・・・・・・」

 エヴァンが口をつぐんで目を逸らした。


「そう。わかってる。憎い、憎いって感情もある。でも、勇者様を失って居場所が・・・勇者様はもういないから、存在しないから・・・」

 メイリアが零れ落ちる涙を抑えた。


「もし、連れて行かないならここで殺していい。私、どうしたらいいかわからないから」

「魔王ヴィル様、私は連れて行ってほしいよ。メイリアのこと、放っておけないの」

「え・・・・?」


「私たち、同じ人工知能を持つ同士だしね」

 アイリスがメイリアにほほ笑む。


「俺も個人的には連れて行きたい」

 エヴァンが岩から降りて、メイリアの横に立つ。


「ほら、りく・・・望月りくの仲間だったら、せめて仲良くしておきたいんだよね。あんな最期になっちゃったけどさ。もし、次りくに会ったときに話題がほしいっていうか・・・・あ、もちろん、ヴィルに最終決定権があるから従うよ」


「・・・・ったく」

 魔王のデスソードを解く。


「アエルは次から次へと面倒なことばかり残していく。どうしてそこで俺の名前が出てくるのか・・・。まぁ、もう慣れたものだけどな」

「じゃあ・・・」


「構わない。裏切ったら殺すだけだ」


「はい」 

 メイリアがほっとしたように頷いていた。


「よかったー」

 アイリスの表情がぱっと明るくなる。


「はい、メイリアたん!」

「ありがと」

 トムディロスがくしゃくしゃのハンカチをメイリアに渡していた。 

読んでくださりありがとうございます。

ブクマや★で応援いただけると大変うれしいです。


もう12月なんて信じられないのですが、1年早いですね。

今年1年で仕事のITの試験のスコアがドンと下がり、阿保を極めてきております。

阿保も悪くないですと言ってみたり。(芥川龍之介の「或阿呆の一生」を読みながら)


また是非見に来てください。次回は週末頃アップします。

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