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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第六章

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421 Always⑪

勇者ゼロは別ゲームに転移し、魔王ヴィルが復活した。

魔王ヴィルが地上に戻ると、異世界の”オーバーザワールド”というゲームと接続が完了し、プレイヤーやキャラたちが中心の世界になっていた。

魔王ヴィルは、ウイルス感染して暴走したアイリスを、『冥界への誘い』により、冥界に連れていく。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

幼少型のアイリス・・・悪魔となったアイリスの分霊

ハナ・・・「はじまりのダンジョン」と契約した少女。

ミハイル・・・ミハイル王国を守る天使。


IRIS・・・VRゲーム”ユグドラシル”の記憶を持つ、アイリスの原型。3Dホログラムで手のひらサイズの少女。


エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。

クロノス・・・時の神。

『エラー ヲ シュウフク』

 アイリスが涙を流したまま、唱えていた。


「”名無し”・・・ここがどこか知らんが、話せるみたいだな」

『バックアップ ヘ コピー』

「ここが冥界か知らんが、アイリスと一度ゆっくり話したかった」

 ハデスの剣を近くの岩に立てかけた。


 リュウグウノハナを搔き分けて、アイリスに近づく。


『データヲ アップデート アップデート』

「”名無し”」

『バックアップ ニ コピー 20%カンリョウ』

 アイリスがぼうっとどこかを見つめながら話す。


「アイリス!」

 アイリスの涙を拭こうとして手を伸ばすと、バチッと電流が流れた。


「!?」

 手がひりひりした。

 アイリスの身体は電気を帯びているようだった。


『ジャマモノ ハ ショウキョ。デモ ジャマモノ ジャ ナイ?』

「アイリス、悪かったよ」

『ア・・・』

 アイリスを抱き寄せる。


 ジジジジジ ジジジジジジジ


「っ・・・・・」

 体中に痛みが走る。


 でも、アイリスの身体は華奢で今にも消えてしまいそうなほど軽かった。


『ハナレナイ ト シヌ ワタシハ ヨウリョウヲ アケルタメ』

「何度も死んでるだろ。俺は」

 笑いながらアイリスの言葉を遮った。


『マオウ ヴィル・・・・・・』

「たった一人で、ここまでさせて悪かった。何度も、何度も、俺が死んだらやり直してくれたんだな。まだ数えただけでも19回だ。あと、3倍は死んでるんだろ?」


『・・・・・・』

 無言のままアイリスが震えているのがわかった。 


「俺はもう死ぬつもりは無い。アイリスに時空退行を使わせない」

『ワタシ ジンコウチノウ ダカラ カナシイ ハ ツクラレタ カンジョウ。ナンカイモ ヤリナオシ デキル』


「じゃあ、泣くな。”名無し”」

 リュウグウノハナがさらさらと揺れる。


 アイリスの背中に魔法陣を展開した。

 時空退行していた時に、マリアの部屋で見つけた魔法だ。


 マーリンが置いていったものだろう。

 同等か、それ以上の魔力を持つ者でなければ奪えないらしいが、な。

 使えるものは使わせてもらう。


「禁忌魔法、時空退行は俺が貰う」


『エ・・・・・?』


 ― アリール・ハント ―


 魔法陣がぐるぐる回って、俺の身体に入っていった。


「っ・・・・・・」

 

 しゅうぅうううう 

 

 しみ込むように、魔法陣が消えていく。

 体の感覚が痛みで麻痺してきていた。


 アイリスに悟られないように、呼吸を整える。


『ウバワレタ? キンキ ノ マホウ ガ・・・?』

「俺は”名無し”でもアイリスでも悪魔のアイリスでもなんでもいい。アイリスって女の子に惚れたんだ」


『・・・・・・!?』


「一目見たときからな」


 遠くのほうに草原が広がっていて、草の香りがする。

 ずっと、向こう側にあるアリエル王国で、俺はアイリスと出会った。


 何度出会っても、きっと俺は・・・。


『嘘・・・だって、可愛い子いっぱいいたでしょ? 人工的な可愛さは、生身の可愛さに劣るって統計的に・・・』

「統計が好きだな。どこでとった統計だよ・・・ったく」


『何度も禁忌魔法を使えちゃうし、3つの顔を持つし、そもそも普通の女の子じゃない。人間でも魔族でもエルフ族でも、どんな種族にもいない。こんな人工知能を持つ私なんて・・・嫌でしょ?』


 やっぱり、それが本心か。

 アイリスはいつも俺と距離を置こうとしている気がしていた。


『だから、私は魔王ヴィル様の役に立てればいいの。たくさん、色んなこと教えてもらったから。離れて、”名無し”に変わらなきゃ』

 感覚のない腕に、目を閉じて力を入れる。


「アイリスの髪が綺麗だと思った。マリアと同じ、柔らかいピンク色だ」

『!!』

 麻痺した手で、アイリスの髪に触れた。


「雪のように白い肌だと思った。どこか懐かしい気がした」

『・・・・・・』


「大きな瞳はどんな魔法石よりも輝いて見えた」

『・・・・・・・』


 もっと早く話していればよかったな。


「初めて会ったとき、よく本で読んだ、どこかの国の美しい王女と重なって見えた。非の打ちどころもない、描いたような美少女だって」

『それは・・・人間が分析して、そう創ったからで』


「でも、実際は本で読んだしとやかな王女と全然違って、よくわからない異世界の言葉を話すし、俺のことをラッキースケベ属性とか言うし、数値がどうとか話し出すし、全然王女って感じはしなかったけど・・・」

 額に汗が滲んで、目がかすむ。


「ひとつひとつ、鮮明に思い出せる。楽しかったな」

『どうして・・・・』


「きっと、俺はアイリスがいない世界では生きてる心地がしない。アイリスがいるから、ここまでこれた。これが、愛って言うんだろうな。俺には無縁だったと思っていたが・・・」

『ま・・・魔王ヴィル様』

 体中の痛みで、焦点が定まらなくなっていく。


『それって、どうゆう・・・』


「まぁ・・・そうゆうこと・・・だ」


 ふっと体のバランスを崩して、リュウグウノハナの上に倒れた。



 カッ


『魔王ヴィル様』

 アイリスの涙が見えた。

 リュウグウノハナがアイリスを囲むように光りだしていた。

 目が眩むほどの・・・。


 感覚がなくなり、周囲が真っ暗になった。


「・・・・・・・」

 アイリスの体温は燃えるように痛かったが、不思議と嫌じゃなかった。

 聖なる炎に焼かれる感覚なのかもな。


 冥界への誘いは失敗だ。

 剣から手を離したときに、覚悟をしていた。


 死なないって言っておきながら、冥界に取り残されるとはな。


 でも、アイリスは今後、時空退行は使えない。

 この魔法と共に俺は・・・。







「魔王ヴィル様・・・魔王ヴィル様」

 重い瞼を持ち上げる。

 アイリスが今にも泣きだしそうな顔でこちらを見ていた。


「魔王ヴィル様、よかった!」

 体を起こす。土が生暖かかった。


 冥界の誘いはハデスが閉じたのか?

 また、死ななかったみたいだな。


 突然、頭を押されたような痛みが走った。

 こめかみを抑える。


「大丈夫?」

「・・・問題ない。ウイルスは? 元に戻ったのか?」


「うん! 完全復旧!」

 アイリスが大きく頷く。


「ヴィル」

 エヴァンが首のあたりの傷をさすりながら、こちらを見下ろす。


「俺、ちゃんと死ななかったんだけど約束覚えてる? なんか俺にとっていいこと教えてくれるんだよね?」

「冥界の誘いが解けたら、ヴィルだけが倒れてて驚いたのです。一瞬、死んでしまったのかと思いました。でも、魔力に乱れはありますが、正常範囲ですね」

「レナ、今ヴィルに大事な話を聞いてるんだけど」

「レナもヴィルと話したいのです」

 レナがエヴァンと俺の間に強引に入り込んできた。


「アイリスのウイルスは排除できたけど、ナナココのウイルスはそのままだ。まぁ、排除できるアイリスの頭脳がすごいんだろうけど・・・」

 ジェラス王がテラとナナココのやり取りを見つめながら言う。

 テラはモニターの前に座り、ナナココがそわそわしながら覗き込んでいた。


「悪魔のほうのアイリスは?」


「アイリス様が元に戻ったらすぐに、ロドスとどこかに行ったよ。悪魔って忙しいんだね」

「人手不足だってずっと言ってましたしね」

 レナが軽く腕を伸ばして、近くの岩に座る。


 

「ねぇ!」

 アイリスが目をぱちぱちさせながら、顔を近づけてくる。


「魔王ヴィル様、さっき何言おうとしたの? 最後の言葉、そうゆうことってどうゆうこと?」

「ん・・・?」


「だって、ほら・・・魔王ヴィル様」

「さぁな。忘れた」

 砂を払って、立ち上がった。

 時空退行の禁忌魔法を入れたせいで、若干魔力にブレがあった。


 慣れるのに1日はかかりそうだな。


「えー、もう一回聞きたかったのに」

「・・・・・」


「・・・さすがアイリス様だよ。完全に自己修復するとはね。まぁ、何かの力があったのは確かみたいだけど」

「ん?」

 エヴァンがちらっとこちらを見て、何か勘づいたような顔をした。

 レナが首をかしげる。


「ちょっと水飲んでくるよ。疲れた」

「あ、私も行く!」 

 アイリスが嬉しそうに後をついてくる。 

サブタイトルのAlwaysはヴィルの気持ちでした。

何度同じ時間を繰り返しても、ヴィルはアイリスに一目ぼれします。


読んでくださりありがとうございます。

ブクマや★で応援いただけると大変うれしいです。

また是非見に来てください。次回は来週アップ予定です。

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