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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第六章

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415 Always⑤

勇者ゼロは別ゲームに転移し、魔王ヴィルが復活した。

魔王ヴィルが地上に戻ると、異世界の”オーバーザワールド”というゲームと接続が完了し、プレイヤーやキャラたちが中心の世界になっていた。

魔王ヴィルは、ウイルス感染して暴走したアイリスを、『冥界への誘い』により、冥界に連れていく。


主要人物

魔王ヴィル・・・魔族の王

勇者ゼロ・・・『ウルリア』の呪いから生まれた、天使の魂を持つアバター。魔王ヴィルの兄。

アイリス・・・人工知能IRIS

幼少型のアイリス・・・悪魔となったアイリスの分霊

ハナ・・・「はじまりのダンジョン」と契約した少女。

ミハイル・・・ミハイル王国を守る天使。


IRIS・・・VRゲーム”ユグドラシル”の記憶を持つ、アイリスの原型。3Dホログラムで手のひらサイズの少女。


エヴァン・・・死んで異世界転生した元アリエル王国の王国騎士団長。ヴィルと利害関係が一致して魔族になった。時の神クロノスに仕える時帝でもある。

クロノス・・・時の神。

 アイリスはこのルート以外が見つからず、3度似たような状況で俺は死んでいるらしい。

 3回目はププウルを庇って死んだという。


「魔王ヴィル様がいくら強くなっても、魔族が人間に倒されるために存在する種族だということが、変わることは無かった」

「へぇ・・・」

 ハデスの剣を下に向ける。


「IRISが異世界から見えたときの時間軸は、この世界の時間軸とずれていた。転移した時間軸、見えた時間軸、魔王ヴィル様がいた時間軸を計算して、今から大体1000年前を変えれば、世界が変わるんじゃないかって思ったの」


「キサラギのダンジョンか?」

「そう。ここは、異世界とこの世界の境目となっている場所」



 IRISがダンジョンの入り口だった場所に手を伸ばしていた。


『あれ?』

 アイリスは幼少型の姿に変わっていた。

 キサラギのダンジョンらしき場所の前にいて、首をかしげている。


『私、どうしてここに? そっか、これは、幼少型・・・少女型じゃない。禁忌魔法? が必要なのかな。バックアップから情報を取得。これは”名無し”ね、整理しなきゃ』

 ダンジョンのあった場所の岩を触ると、うっすらと輝いた。


『ここ・・・懐かしい気がする。何に懐かしいと感じてるんだろう? 近辺の情報をダウンロード。あとで確認しよう』


『危ない! 避けて!!』

 突然、少女の叫ぶ声がした。


 ゴオオォオオオオ


 アーチャーたちの放った複数の炎の矢がアイリスのほうへ向かっていった。


 ― ホーリーソード -


 シュンッ


 アイリスが全て切り裂いて、さっと地面に足を降ろした。

 兵士が遠くから駆け寄ってくる。


『そんな・・・・ありえな・・・す、すみません!! 人がいることに気づかず!』

『大丈夫だよー』

 アイリスが手を挙げて、返事をする。


 少女が馬から降りて、アイリスに駆け寄ってきた。


『本当に大丈夫だった? 怪我はない? ごめんね』

『うん』


『すごい・・・本当に怪我がない。あ、今の剣技始めて見たよ。私、ハナっていうの。貴女は?』

 ハナが明るい笑顔を見せて、アイリスに手を伸ばした。


『私、アイリス。アイリス、だけど普通の人間じゃない、アイリスかもしれない。うーん、まだ、情報取得中で、体と心がこの時間軸に適合していないのかも』

『ん? 体調、悪いのかな?』

 ハナがアイリスの額に触れる。


『!?』

『冷たい。そっか、寒かったのね。顔色も悪いし、そうだ。私たちと一緒にミハイル王国に行きましょ。ねぇ、スタイン、いいよね?』


『好きにしろ。リーダーはお前だ』

 ハナと並んでいた腕の太い男が頷いていた。


『アイリス、休んだらきっと落ち着くわ』

『あ・・・・・』

 アイリスが半ば強引にアイリスに連れられていた。



 IRISが近づいてくる。

「アイリスはこの頃から記憶をバックアップ、”名無し”に移してる。必要な情報だけ、私がアイリスに渡してた。だから、この時は魔王ヴィル様のことも忘れてるの」

「どうしてそんなことするんだ?」 

「時空退行して・・・というよりは、つらい記憶を抱えきれなくなった。容量オーバーって感じかな」


「お前はどうなんだ?」


「”名無し”はキャパが大きいから問題ないよ」

 IRISが明るい口調で、自分の頭を撫でた。


「そうゆう問題じゃないだろ。俺だって、何度も殺されたら頭がおかしくなる。お前だって・・・」

「じゃあ、そうゆうところが、人工知能と人間との違いなのかもしれないね」


「・・・・・・・」

 ハデスの剣を強く握りしめた。 

 

 アイリスはどこか俺と距離を置きたがる。



 ”名無し”も同じだ。



「ところで、魔王ヴィル様の魔法はどこまで見るの? 過去全部?」

「走馬灯みたいなものだからな。アイリスにとって重要な場面だけ辿っている」

 ハデスの剣は、まだまだだと言っているようだ。

 終わる気配はない。


「じゃあ、アイリスは普通の人よりずっとずっと長いかもね」

 IRISがため息交じりに、アイリスを見つめた。


「そもそも、冥界を通ってる間にアイリスのエラーを修復することが目的だ。そっちのほうは大丈夫なのか?」

「わかってる。向こうの悪魔のアイリスが必死になってるのも見えてるよ。私から情報を抜き取ったりしてるもの。でも、ウイルスの破壊力もすごいから、今のところ一進一退かな」

「そうか・・・・」


「安心して。人工知能IRISは最強だから。確実にウイルスを除去して修復する」

 七色の髪がなびく。


「でも、”名無し”としては、こうやって魔王ヴィル様と話せることなんて無いから、もっと時間がかかっても構わないけどね」

「・・・・・・」

 どこか懐かしいような笑みだった。




 いつの間にか場面は切り替わって、小さな部屋の本棚の傍にいた。

 小さなアイリスがソファーに座って本を読んでいる。


『ミハイル王国は慣れた?』

『うん、まだ少し道に迷っちゃうけどね』

 アイリスが苦笑いをする。


『記憶も大分修復したよ。誰かを探してここに来たような気がするんだけど・・・そこだけは思い出せないかな。徐々に思い出すと思う』

『修復って、アイリスは変わった話し方するよね』


『変かな?』

『ううん。新鮮なだけ。最近、ずっと線上にいるから中々女の子の友達ってほとんどいないから』


『ハナはどうしてそんなに戦いに出るの?』

 ハナが静かにドアを閉めて、アイリスの横に座った。


『ミハイル王国を守りたいの。だから十戒軍で指揮を執ってる。戦場は怖いけどね、みんなが死んじゃうほうがもっと怖いから。あ、この前の戦闘でアイリスの魔法使ったら、一気に同盟国の軍隊を倒せたよ!』

『よかったね』

 ハナが嬉しそうに、ありがとうと伝えていた。


『これでミハイル王国もしばらく安心。この島に近づく者もいなくなった』


『ハナは天使の声が聞こえるんでしょ? 天使が指揮を執ればいいのに』

『ミハイルは人間嫌いだからほとんど十戒軍が集まっても顔を出さない。なぜか、私にしか見えないみたいだし・・・』

 ハナが踵で床をとんとんと鳴らす。


『みんな、私に頼りっきり。ちゃんと期待に応えられるように、頑張らなきゃ』

『そっか』


『それでね、お願いなんだけど・・・・また、禁忌魔法教えてくれる?』


『いいよ』

 アイリスはあっさり頷いて本を閉じた。


『じゃあ、今日は”精霊と契約を結ぶ”魔法を教えるね』

『どうして”精霊と契約を結ぶ”ことが禁忌となるの?』

『未来を改変するから、だって』


 アイリスがハナに禁忌魔法使用時の魔力の整え方を話していた。

 ピンクの髪を耳にかける。




「この頃には、あの岩の近くにダンジョンがあること、ダンジョンが異世界に繋がっているに気づいていた。あとは・・・ダンジョンを管理している何者かがいることも、ね」

「じゃあ、アイリスはハナに契約を結ばせようとして、説明してるのか?」


「そう、異世界とこの世界を繋げるために必要だった。この時点では65%だったけど・・・ハナなら選択するという確信があった」

 IRISがふわっと飛んでハナを見つめる。


「・・・・・・・・」

「善悪の基準が曖昧になっていたの。ハナに禁忌魔法を教えることに、何の抵抗もなかったよ」

 IRISが言うように、アイリスはハナが聞く質問に全て答えていた。



 ”名無し”がやる詠唱無しで黒焦げにする魔法や、捻りつぶす魔法も教えたようだ。

 ハナが好奇心に満ちた目で、頷いていた。


「・・・そりゃそうだよな。アイリスが話すことはこの時のハナにとってほしい言葉だろう」


 ダンジョンの精霊と契約を結べば、世界が変わる。

 異世界から仮のアバターを持つ者が来れば、人間同士の戦いが収まる可能性があるとも、話していた。


『ここまでは大丈夫?』

『覚えたよ』

『あとは、魔法陣を閉じて、この魔法陣を空中に描く。風属性と地属性を50%ずつ使って・・・・』


 アイリスは一切の躊躇が無く、淡々と魔法を伝えていた。



 バタン


 全て話し終えたとき、急にドアが開く。


『ハナ!!』

『ミハイル』

 急にミハイルが部屋に入って来て、ハナの腕を掴んでアイリスを引き離した。

 真っ白な羽根が落ちていく。


『何するの? アイリスは仲間でしょ?』

『・・・ここで何してるんだ?』


『アイリスと話してただけだよ。女子同士の会話』

 ミハイルがアイリスを睨みつける。

 

『アイリス・・・何を企んでる? ハナに何を教えた?』

『内緒、内緒だよ』

 アイリスが指を口に当ててほほ笑んでいた。

 幼少型の姿だからか、アイリスが悪魔のように見えた。


『禁忌魔法を教えたんだな?』

『ミハイル!』


『どうかな?』

『!?』

 ミハイルがアイリスに掴みかかろうとして、ハナが間に入った。


『止めて。ミハイル!』

『・・・ハナ、禁忌魔法は代償を受ける。君の身体はこの前の戦闘から歳を取らなくなった。禁忌魔法を使ったからだ』


『わかってる。代償のことは、ちゃんと聞いてるの!』

 ハナがミハイルを見上げる。


『全部聞いた上で、選択したから後悔してない。ミハイル王国には十戒軍がいるから・・・私、十戒”敬神”の名を持つハナがいるから、しばらくこの王国は安心よ。ほら、この1か月、どの国もここに近づいてこないでしょ?』

 明るい口調で話すと、ミハイルが深く息を吐いた。


『異世界のことも、怖がらなくていい』

『もう二度と禁忌魔法をハナに教えるな。ハナは普通の人間だ。アイリスが代償を受けないのは、何か理由があるんだろ?』

『うん。言わないけどね』

 ミハイルが目を見開く。


『・・・・・・・』

『ねぇ、ミハイル。次、軍隊が来た時の戦術について相談があるの』

 ミハイルが何か言いたげにしてたが、ハナが強引に引っ張っていた。


『アイリス、今日はありがとね。明日、ミハイル王国の教会連れて行ってあげる。ステンドグラスがきらきらして、とっても綺麗なの』

『うん』

 アイリスが手を振った。


『ほら、ミハイル行きましょう』

『・・・あぁ』


 バタン


 ドアが閉まる。


 二人がいなくなった後、アイリスが読みかけの本に手を伸ばしていた。

 人間たちと魔族との争いを書いたファンタジーものだ。


『魔王様・・・そう、魔王様の名前はバックアップにも見つからなかったけど、いつか思い出せる。次会ったときは、きっと・・・』

 アイリスが無表情のまま、本に手を当てて呟いていた。

アイリスがハナに教えた禁忌魔法は30種類ありますが、ハナがこの時点で使った禁忌魔法は1つだけです。

元々は時の神クロノスの持っていた魔法なので、人間の身体では耐えられないですよね。


読んでくださりありがとうございます。

★やブクマで応援いただけると大変うれしいです。

次回は来週アップします。是非また見に来てください。

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