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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第一章

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30 ダンジョンの入り口

「魔王ヴィル様、いかがでしょうか?」

 アモンが一通り片づけた後、声をかけてくる。


 人間がいたところには、大岩を置き、何もなかったようになっていた。

 通常の感知能力を持っていれば、すぐに人間の痕跡に気づくだろうが・・・。


 アイリスの場合、問題ないだろう。


「これでいい。ありがとう」

「とんでもございません、あの、魔王ヴィル様はこれからダンジョンへ向かわれるのですか?」

「そうだ、ププとウルから場所はこのあたりだと聞いているんだけど・・・」


 アモンがふっと前を歩く。


「ご案内いたします。こちらになります」

 顔のような岩を離れて、少し歩いたところに尖った岩が二つ並んでいた。

 アモンでしゃがんで土を払うと、うっすらと装飾のされた岩が見えてきた。


「結構小さいんだな」

 1メートルにも満たない幅だった。


「はい。入り口は狭いのですが、中は広いと聞いております。何せ私は入る力がないもので・・・あくまで噂で申し訳ないのですが・・・」

「いい。助かるよ」

 ギルバートとグレイの鳴き声が遠くに聞こえる。


 クォーン


「あれは・・・・?」

「俺が預かっている双竜だ」

 雲の間から、ギルバートとグレイが現れた。

 手を上げて合図を出すと、真っすぐこちらに向かってきた。


「魔王ヴィル様ー」

 アイリスがこちらに向かって手を振っていた。


「に、人間!?」

 アモンが、右腕を大きくして赤い鱗を光らせる。

 地面に爪を立てていた。


「俺の奴隷だ。手を出すな」

「し・・・失礼いたしました」

 慌てて、一歩下がる。


「あれ・・・・」

 双竜が降りる前にアイリスがバランスを崩した。


「ったく・・・」

「きゃっ」

 踏み切って、寸前のところでキャッチする。


「・・・魔王ヴィル様。ありがとう」

「降りるまでおとなしくしておけよ。あのまま落下したら死ぬんだからな」

「んー、片足上げた方が均衡がとれるかなって思ったんだけど」

「そんな恰好で乗ろうとする奴いないだろ」

 地面に足を下ろす。


 ギルバートとグレイがほっとした様子で、項垂れていた。

 なんかものすごく疲れているな。


「この様子だと、結構試してたのか?」

「うん! 2回落ちそうになったところをギルバートとグレイに助けてもらったの」

「やっぱり・・・・」

「私、こうゆう物理的な動作が苦手で」

 ぼさぼさになった髪を整えながら、ギルバートとグレイにお礼を言っていた。


「ご苦労だ、ギルバート、グレイ・・・・」

 二頭の首を撫でてやる。


 ウォーン ウォォーン


 翼を地面につけて、疲労困憊していた。 

 双竜をここまで追い込むアイリスもアイリスだな。


「・・・・・・・・」

 アモンがぽかんとしていた。

 ギルバートがアモンを見つけると、嬉しそうに足を上げて寄っていく。


「ギルバート、グレイ。お前は確か・・・ダゴン様の召喚獣・・・人間によって封印されたと聞いていたが無事だったのか? どうしてここに・・・?」


 クォーン ウォーン


 アモンに向かって、2頭が一生懸命説明していた。


「何? 人間がダンジョンの封印を解いだと? こいつが・・・・・」

 信じられない表情で、アイリスのほうを見つめる。


「でも、この女は魔王ヴィル様の奴隷であって・・・だから、人間だが・・・人間ではないという・・・・?」

「混乱するのも無理はないと思うけど、こいつがダンジョンの精霊と相性がいいんだ。ダンジョンの精霊が要求する、異世界クエストも得意らしい」

 ギルバートとグレイも呼応するように吠えていた。


「・・・・ギルバートとグレイも、確かにそのように言っております。ドラゴン族としては、召喚獣であるギルバートとグレイが帰ってきたことは大いに嬉しいのですが・・・こんなことって・・・」

 アモンが徐々に右腕を元に戻していく。


 アイリスが後ろからひょこっと顔を出して、ギルバートとグレイの傍に寄っていった。

「アリエル王国第王女、アイリス・・・・ですが、今は魔王ヴィル様の奴隷です。よろしくお願いします」

「あぁ・・・」

 アモンが頭を掻くと、アイリスが微笑んでいた。



「俺たちは一旦、そこにあるダンジョンの最下層へ向かう」

「かしこまりました」

「ギルバート、グレイ、ドラゴン族と会うのは久しぶりだろう。ここで待っているか?」


 クォーン クォーン


「あははは、そうだね」

 アモンがギルバートとグレイと何かを話して、笑っていた。

 上手く聞き取れなかったが、ドラゴン族の言葉のようだ。


「ありがとうございます。魔王ヴィル様、お待ちしております」

「あぁ。頼んだぞ、アモン」

 しゃがんで、ダンジョンの入り口を持ち上げると、軽々と開いた。


「・・・・ん?」

 力はほとんど入れてない。自ら開いたような感じだ。


 ダンジョンの精霊の仕業か?

 まぁ、簡単に入れることに越したことはない。



 アイリスがアモンのほうを見て、まだ何か話したそうにしていた。


「アイリス、早く行くぞ」

「あっ・・・うん・・・・」

 ダンジョンの階段に足を踏み入れる。

 下から、生暖かい風が吹き込んでいた。

 人が一人通れるくらいの幅だな。体の大きな魔族は通れないだろう。


「アモン様、ギルバートとグレイをお願いします」

「早くしろ」

「はいっ」

 アイリスの手をぐっと引っ張って、中に入れる。



 バタン


「わっ、びっくりした」

 アイリスの声がダンジョン内に響く。


「ギルバートとグレイもドラゴン族と話せてうれしいだろう」

「そうね」

 指先に光を灯して歩く。


「ん、結構狭いのね・・・ここ・・・」

「そうだな」

 ぱっと見るに、狭いのは入り口から数メートル程度だ。

 降りたところに、大きな幅の道が続いているのがわかった。


 ここからなら、俺が先に飛び降りて・・・。


「あっ・・・・」

「げ・・・・」 


 ズズズズズズズズズズ・・・・・


「わっ、バランスが・・・」

「はぁ・・・・」

 アイリスが滑り落ちてきた。

 巻き込まれて、数センチ滑ったところで、壁を掴んで止める。


 かなり狭いな。

「ったく、何やってるんだよ」

「いた・・・ちょっと滑っちゃって・・・」

「毎度よくもこう・・・・・」

 アイリスって完璧なようで、どこか抜けてるんだよな。


「私、まだ物理的動作が馴染まなくて。でも、こうゆうのはトライアンドエラーで情報を蓄積するから」

「何の話か知らんがとにかく、早く下に降りろ。2人で降りられるような幅じゃない」

「そうね。ちょっと待ってて」


 アイリスがふぅっと気合を入れる。


「ん・・・ううん・・・んんん・・」

 体をねじるようにしながら、ゆっくりと下に降りていった。

 壁にできるだけ張り付いて、アイリスを通す。


 スポッ・・・


「やった! 抜けた! 狭いのは入り口だけで、中は広いのね。魔王ヴィル様?」

 アイリスが両手を伸ばして、周りを見渡していた。

 小石の転がる音が遠くまで響いている。


 トン


 地面に足をつけた。


「っと・・・・・」

 少しバランスを崩して、よろけてしまった。

 調子が悪いな。


「どうしたの? 魔王ヴィル様が体勢を崩すなんて、珍しいね」

 不思議そうにこちらを見上げる。


「たまたまだ。行くぞ」

「うん」

 マントを後ろにやって、再度、指先に光を灯しなおした。

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