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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第二章

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184 堕天使の羅針盤

「んー・・・」

「どうしたの? ヴィル」

 三枚の地図を机に並べて悩んでいると、サタニアが話しかけてきた。


「次のダンジョンのパーティー決めだ。上位魔族はあのテンションだし、しばらく何言っても無駄だな。俺たちで行くしかない」

「そうね。こんなに静かな魔王城も初めてね」


「たまにはいいけどな」

 上位魔族は力を試すのに張り切って外に出ているため、魔王城にはほぼ俺たちしか居なかった。

 裏表が無いのは魔族のいいところでもあるが、感情に歯止めが効かないことがあるんだよな。


 まさか、シエルまでサリーの提案したギルド潰しに乗るとは・・・。


 まぁ、上位魔族に馴染んできたのはいいことか。


「何に悩んでるの?」

「3つ同時に行くか、1つ1つ潰すかで迷ってるんだよ。効率的にいきたいが・・・」

「私は一人で大丈夫よ。エヴァンも同じでしょ。該当するダンジョンなら、願いを言わずにヴィルのいるダンジョンへ知らせに行けばいいんでしょう? ヴィルは待っていればいい」

「・・・・・・・・」


「そんなに私たちが心配? 最近調子悪いけど、力は確かよ」

「いや・・・お前らの力は信頼してるよ」

 サタニアとエヴァンは能力的には申し分ないし、信頼を置いている。


 ただ、異世界で生きていたときの記憶がある分、異世界と通じていることが危険だと思っていた。


 2人とも、精神が成熟していない部分があることも否めない。

 もし、ダンジョンの精霊が友好的ではなかった場合に、逆手にとられることもある可能性もある。


 なるべく、2人を単独でダンジョンの精霊と遭遇させたくなかった。


「なんかお困りのようですか?」

「うわっ、いきなりくるな」

「また来たの? 2日前もいたじゃない」

 何もないところから、アエルが出てきた。


「はははは、ずっとその辺を彷徨って自分の出番を待っていました」

「こ、怖いんだけど」

「サタニアの罵りは私にとってご褒美ですよ。私、今が青春って感じです」

「きゃっ」


「サタニアに気に入られたいなら、気色悪いこと言うなって」

「純粋に愛を伝えてるだけなんですけどね」


「なんか、もう、怖いのよ!」

 サタニアが腕を掴んできた。


「まぁまぁ、それより、これはダンジョンの地図ですね。3枚ですか」

「あぁ、どれも願いを叶えるダンジョンだ。メンバー決めで悩んでるんだよ。この3つのどこかに異世界転移を止めるダンジョンがある」


「なんと!! さっきから雪の匂いがすると思ったら」


「ダンジョンの精霊からもらったんだよ」

「・・・北の果てですか」

「あぁ」

 アエルが表情を変えた。

 地図は特殊なインクで丁寧に書かれていて、雪が滲んでも消えることはなかった。


 セツの思いも込められてたんだろう。


「なるほどなるほど。ヴィルが危惧していることはわかりましたよ」

「?」

 サタニアが首を傾げる。


「こほん・・・・・・・・」

 アエルが軽く咳払いをして、自分の羽根を1枚抜き取っていた。


「そうゆうことであれば、私が決めましょう。どのダンジョンが目的のダンジョンかはわかりませんが、メンバー決めくらいはできますよ」

 風が吹き込み、前髪を揺らす。

 アエルのエメラルドのような髪は、どこかリョクに似ている気がした。



「ん?」

 アエルが羽根を離すと、手のひらサイズの羅針盤のようなものに変わった。


 シュルン トットットトトトトト


「こうやって・・・と」

 左手をかざすと針が回りだした。


「これは『運命の輪』。この針が行くべき場所、点が行くべき者を表しています」

「・・・行くべき者とはどうゆうことだ?」


「適材適所に配置するという意味ですよ。星が示す位置を参考にしている、古い魔法です。黒はヴィル、紫はサタニア、青はエヴァン・・・という風にね。まぁ、私も使うのは久しぶりですね」

 アエルが人差し指に光を灯して、羅針盤に当てると、針がぴたりと止まった。


「上手くばらけましたね。ヴィルとこれは・・・ユイナですね。東のほうを指しています」

「紫は・・・私は南ってこと?」

 サタニアが髪を耳にかけて覗き込む。


「そうですね。お一人ですか、心配でしたら私がついて行きましょうか?」

「結構よ! 一人のほうがずっといいわ」

 そっぽを向いていた。


「水色はなんだ?」

「これは・・・綺麗な色ですね。エルフ族のレナを指しています。エヴァンと西ですか。面白い組み合わせですね」


「この羅針盤はどれくらいの精度だ?」


「100パーセントですね。この通りにやれば、確実に目的のダンジョンの精霊に会えます。意地の悪い言い方をすると、それが、いい方向にいく・・・とは限りませんけどね」

「ユイナとレナも行くなんて・・・少し危険な気がするけど、大丈夫なの?」

「羅針盤はそのように示してますから」

 アエルが指を回しながら、こちらを見下ろす。


「どうします? どう決断します? 魔王であるヴィルが決めてください」

「そうだな・・・・」

 当初、想定していた通りの位置を指している。


 異世界住人の動きを考慮して、ユイナはどこかに入れようと思っていた。


 どうなるかわからないが、ダンジョンの精霊に会うというのは確実にこなさなければいけない目的だ。

 アエルの羅針盤を信用するのが得策か・・・。


 サタニアを一人にして大丈夫だろうか。

 リセットされたダンジョンの精霊が、どう動くのか読めない。


「もしかして、私を一人にするのが心配なの?」

「・・・あぁ、行けるか?」


「大丈夫。もう、ヴィルといられるこの世界を手放したりしないから」

「・・・・・・・」

 サタニアが手を胸に当ててほほ笑んでいた。


 問題は、異世界転移の魔法陣を解くダンジョンがどこかわからないことだ。

 距離がある分、無事到着できたか確認もしたい。

 極力、無駄足になるようなことはしたくないが・・・。


「あの・・・」

 ソファーに座っていたユイナが近づいてきた。


「通信・・・えっと、遠く離れた人たちと会話するような魔法とかないのですか?」

「カマエルが使うような遠隔投影同期ミラーリングって魔法はあるけど、この距離じゃ遠くて使えないわね」

 サタニアが南のほうの地図を見ながら言う。


「異世界にあるSNSのような技術はないのよ」

「そうですか・・・」

「情報伝達は・・・私たちが異世界住人に劣る部分でもあるんだけどね。アバターには敵わないわ」


「いや・・・・」

 顎に手を当てる。


「一応、魔族には危険があればオブシディアンを光らせて、各上位魔族連絡するような仕組みがあった・・・あの魔道具なら、遠くても使えるな」

「あ! では、目的のダンジョンを見つけたら、その魔道具を使ったらいかがでしょうか? 例えば、ヴィル様のダンジョンがそうだったら、黒く点滅させて他のメンバーに知らせるとか・・・」


「なるほど。いい考えかもな」

 うまくいけば、2人とダンジョンの精霊との遭遇を最小限にできるかもしれない。


「でも、集合するにも距離が遠すぎるわ。東から西のダンジョンなんて、少なく見積もっても10日は移動距離にかかりそうよ」

「サタニアの転移魔法があるだろ?」


「えっ、あ、あるけど・・・・」

「各々がたどり着いた先で、それぞれがサタニアの転移魔法の魔法陣を転写すれば、移動できるんじゃないのか?」

「・・・んっと・・・無理じゃなくはないかも・・・だけど」

 サタニアが口をもにょもにょさせる。


「でも、サタニアに負担がかかるな。もし、難しいなら他の案を考える」


「大丈夫よ。はぁ・・・わかったわ。こうゆうのは、私じゃなきゃできないからね」

「そうだな」


「しょうがないなぁ」

 サタニアが瞼を重くしながら、口元を緩ませていた。


「おぉ、決まりましたか。いいですね。朗報を楽しみにしていますよ」

 アエルが大げさに拍手をした。


「魔法陣の準備をするのに1日頂戴。複雑化しないと、人間に気づかれるわ」

「あぁ。任せる」



 バタン


「ただいまー」

 エヴァンが勢いよくドアを開けて、部屋に入ってきた。

 レナが後ろから、よろよろしながら付いてくる。


「つ・・・疲れたのです・・・・・」

「どこ行ってたの?」

「修行だよ修行。今の時間は真夜中だし、魔族がいないだろ? 外でレナに稽古をつけてたんだ」

「熱心だな」

「魔力切れなのです・・・・レナはふらふらです」

 レナがソファーに倒れこんで、目を閉じていた。


「もうそんなに仲いいんですか。いいですね。楽しそうですね」

「そこまで仲良くないって。気晴らしだよ、気晴らし」

 エヴァンが剣を降ろして近づいてくる。


「アエルまでどうしたの? 何の話し合い?」

「わっ、床一面、す・・・すごい羽根ですね・・・どうしたんですか? まさか・・・ヴィルの趣味ですか?」

「んなわけないだろ。どうゆう趣味だよ」


「レナは天使の羽根に埋め尽くされた部屋でふかふか寝たいって願望はありました。サンドラに叱られましたが」

 レナが寝ころんだまま、こちらを見ていた。


「確かに、羽毛布団なら作れそうかも」

「エヴァンまで・・・アリエル王国に飛んだら洒落にならないからな」

「冗談だって」

 正直、黒い羽根が散らばっている状況に慣れてきている。

 何度もマキアにお願いするのが申し訳ないからな。


「あははははは、今度その辺の天使に頼んでみますよ。彼らも生え変わりの時期でしょうから。それより、ほら、2人もメンバーに入っていますよ。こちらを確認ください」

「ん?」

 アエルが持っている羅針盤を見せる。


「お前はレナと西のダンジョンだ」

「え? どうゆうこと?」

 エヴァンに話の経緯を伝える。


 アエルの羅針盤と、レナと行動することについては不満そうだったが、魔道具を使ってやり取りするのは賛成していた。

 サタニアが少し離れたところで、本を広げて魔法陣を確認している。 


 まだ、一抹の不安は拭えない。


 氷のダンジョンにはセツがいた。

 セツは、俺の返答次第で、全てを捨ててでも俺を殺していただろう。


 忌まわしい、あの女のせいでな。


 他の、東西南のダンジョンにはどんな精霊が居るのかわからないが・・・。

 今は、この羅針盤が示すことを、信用するしかない。

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