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【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第一章

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129 アリエル城⑬

「俺たちは、ダンジョンを攻略する必要ないんじゃないのか?」

 カナトがこちらに歩いてきた。


「できればこっちの世界で平和に過ごしていきたい」

「俺は、ダンジョン攻略とかわくわくるするから行ってみたいけどね。ずっとなりたかったウォーリアーにもなれたみたいだし。あぁ、やっぱり武器はしょぼいか」

 別の異世界住人が指を動かして、空中で何かを見ながら話している。


 俺たちには見えない何かが見えてるのか?


「俺たちが最初だけど、これからどんどんこの街に異世界転移してくるからな。俺たちでルールを敷いておかないと」

「俺も向こうの世界よりこっちで身を固めたい。なんて言ったって、ゲームじゃないんだから」

「ははは、そりゃそうだ」


「サクマ様、私はもっとサクマ様と安らぎたいのです」

 少女が異世界住人の男の傍に寄っていった。


 俺は無視か。

 いい度胸だな。


「ヴィル、今は戻りましょ」

「・・・・・・」

「その腕、まだ収まらないんでしょ?」

 サタニアが殺気立っている俺に話しかけてきた。


 腕は完全に治ったが、まだ、魔力をコントロールできていない状態だ。 


 俺の中にあるこの力は一体・・・・。


『そうだね。この世界でゆるりとされていただきたいのは確かだ。まったりとダンジョン攻略していってほしい』

 テラが異世界住人に近づいていく。


「ダンジョンを攻略して俺たちにメリットはあるのか?」


『もちろん。まず、ダンジョン攻略後はレベルが一気に上がる。今は誰もが1つ2つしか技がないと思うが、魔族との戦闘、もしくはダンジョンの攻略でステータスが上がっていく』

 テラが声を張り上げる。

 城下町のギルドで聞いていたセリフと同じものだな。


『そして、一番大きなものは、この世界のどんな願いでも叶えられるということ』

「願い・・・・?」

 ざわめきが静まっていった。


『数多くのダンジョンの中でも、願いを叶えるダンジョンというのがあるのだよ。ヴィルにもさっき話したね?』

「・・・・・」

 そんなもの、ダンジョンの精霊からは聞いたことがなかった。


『この世界を支える、とあるダンジョン。最下層に行き、ダンジョンの精霊に会えば、どんな願いも叶えてもらえる』

 テラがにやっと笑いながらこちらを見る。


『ヴィルが先に見つけたら、かかった魔法も解いてもらえるよ』

「もし、それが本当なら、ダンジョンはほぼ魔族の手中だ」


『いや、あの4つのダンジョンには行ってないだろう』

「4つのダンジョン?」

 サタニアが首をかしげる。


「・・・・お前の言っていることは、信憑性が薄いな。俺はダンジョンの精霊に会ったことがあるが、そんな話をしていた者はいなかった」


『ダンジョンの精霊も全てのダンジョンを把握しているわけじゃないからね。ダンジョン自体、あまりよく知らないんだろ?』

「・・・・・」

 腕を握りしめる。


『願いを叶えるダンジョンは、必ずある。存在している』

 テラが断言していた。


「・・・どうして、お前がそんなことを知っている?」

『私が行ったことがあるからだ。そして、願いを聞き入れてもらい、向こうの世界の人間の異世界転移を可能にした』


「!?」


『あぁ・・・でも、どんな願いでも、というのは語弊があるか。あの魔女は、死者を蘇らせることができなかったのだから・・・』


「さっきからこの世界について知ったような口を・・・腹が立つわ。テラだって異世界の者じゃない!」

 サタニアがぎりっと奥歯を噛んでいた。


「テラ様・・・どんな願いも・・・って、もしかして・・・」

 テラが異世界住人のほうを見る。


『察しの通り、今、アース族の『命の数』は限られているけど、そのダンジョンの精霊が願いを叶えれば『命の数』も無限に書き換えられる』

「無限だって!?」

 異世界住人からおぉーっと歓声が上がる。


 命の数?


「そんなことありえるのか!?」

『もちろん。神の名に懸けて・・・確認済みだ』

 テラが老人のような姿で言う。


「それは、なかなか面白そうだな」

「永遠にこの世界を満喫できる。気が遠くなるようだが・・・この世界は景観も美しい。テラ様の言う通り、ゆるりとしながら攻略するか」

「おうよ。現実世界にいるよりはマシだ」

「せっかく転移してきたからには楽しまないとな。元の世界の分も存分にさ」

 急に異世界住人の態度が変わった。


「先ほど導きの聖女アイリスが話していたと思いますが、皆さんは仲間を作ってパーティーを結成してくださいね。ここにいる十戒軍も戦闘要員として構いません」

 クーリエが人間たちに向かって言う。


「そうなの?」

「はい」

 異世界住人がどよめいていた。


「クーリエ、君も戦えるのか?」

 ユウスケがクーリエに寄っていく。


「もちろんです。元は賢者、ご主人様、どうか私も同行させてくださいね」

「で・・・でも・・・君を傷つけたくないし」

「私が一緒にいたいのです。ご主人様。きっと、ご主人様のお役に立てます」

「あ、ありがとう・・・・・」

 クーリエがユウスケの手を握りながら話していた。


「私も連れて行ってくださいね。タイチ様」

「いいの?」

「タイチ様と居られるのでしたら・・・」

 女魔導士が寄りかかるようにして話している。


「本当、こっちの人間はおかしいわ。みんなエロい目つきして」

 サタニアが女魔導士を睨む。



 ここでこいつらを殺せば済む話だが。


「あ、ヴィル・・・」

「・・・・・」

 サタニアを横切った。

 マントを後ろにやって、床で寝ているアイリスに近づいていく。


「魔王ヴィル!!」

「聖女アイリス様に近づかないでください」

 十戒軍の女がぷるぷる震えながら剣を握っていた。


 ガンッ


「どけろ」

 振ろうとした刃を、硬質化した腕で弾いて飛ばす。


「きゃっ・・・」


 ガッシャーン


 剣の落ちる音が響いた。


「アイリス・・・・」

「ま・・・魔王ヴィル様・・・・?」

 アイリスが気が付いて、目を開けた。


「ごめんね。魔王ヴィル様、怪我は・・・ない?」

「じゃあな・・・必ず助けに来る」


「あ・・・・魔王ヴィル様」

 ピンクの髪を、撫でそうになって手を引っ込める。


「・・・・・・・・・・」

 何か言おうとしたアイリスに、頬が緩んだ。


「上手く逃げろよ。手加減はする」

「え?」


 やっぱり、可愛いな。アイリスは。



 すっと飛び上がった。天井を蹴る。

 魔王のデスソードを握りなおした。



 ― クラッシュ ― 


 ドン



 剣に黒い魔力を纏わせて、思いっきり地面に突き刺す。



 ガタガタガタガタガタガタ


「わっ、な・・・」

「なんだこれは」

 地面に稲妻が走り、大きく揺れる。窓ガラスが割れて落ちてきた。


「キャー」

 人間たちがバランスを崩しながら、破片を避けている。


「いいか、俺が魔王だ! 異世界住人の好きにはさせない。テラ、お前やその後ろにいる魔女とかいう奴も含めてな!」


 ガッシャーン



 天井のシャンデリアが落ちてきて金属が飛び散った。


 ゴゴゴゴゴォォォオオ


「うわ!」

「早く消化を!!」

 絨毯に火が付き、瞬く間に燃え広がっていく。

 魔導士たちがシールドを張っていたが、対応できない異世界住人たちが戸惑っていた。



『いいはじまりだ』

「・・・・・・」

 異世界住人とやらがどんな奴らかはわからないが、テラだけはろくでもないな。

 肉体さえあれば、この場で切り裂いていたものを。



「ヴィル、待って」

 サタニアが剣で炎を切って駆け寄ってくる。


「セラも戻るぞ」

 扉の前にセラが立っていた。

 顔色も呼吸も正常になって、人間の服を着ている。 


「先ほどはお騒がせしてしまい、申し訳ございませんでした」

「いや、気にするな。お前が悪いわけじゃない」

「あ、はい・・・・・・」


「ん?」

 少しもじもじしていた。


「関係を持ったからって、情にほだされてるんじゃないの?」

 サタニアが腰に手を当てて迫った。


「ち、違います。確かに、もうその気がないと言ったら噓になりますが・・・私は魔族ですから」

「怪しいわね」

「・・・姉のマキアが待っています。早く魔王城に戻りたいです」

 異世界住人のほうを見て、ぱっと視線を逸らしていた。

 カナトも額に手を当てながら、セラを見つめている。


「異種族間の恋愛は止めた方がいいわ。辛いだけよ」

「そ、そんなことないですって。たぶん・・・・」

「もう・・・・・」

 セラが異世界住人を気にしていた。

 サタニアが短いため息をついていた。



 ダァンッ


 扉を蹴り破って、聖堂から出ていく。

 アエルが翼を広げて、エヴァンとリョクと待っていた。


「ねぇ、ヴィル」

「なんだ?」


「ヴィルはやっぱりアイリスのことを一番に愛していたのね」

 サタニアが髪を耳にかけながら言う。


「あんな風に笑ったヴィル、初めて見た」

「・・・・見てたのか」

「私はヴィルが思っている以上に、ヴィルを見てるんだから」

「・・・・・・」

 愛というものがどうゆうものなのかは、正直、わからないが・・・。

 かけられた魔法は確かだ。


 魔王である俺にもわかる。

 だが、この力はうまく使えば有利にも働きそうだな。



 アエルがふわっと、近づいてきた。


「魔王ヴィル、随分と顔つきが変わりましたね」

「色々あってな」


「ククク、そうですか。あ、ピュイア王女は無事結婚されましたよ。結局、異世界住人ゼロの式でしたが、そのほうが落ち着いて式を進められたようです」


「こんな騒ぎの中、よく進められるな」

「それが、政略結婚というものですよ」

 アエルが崩れていく聖堂を見ながら言う。


「王子と王女、来賓の方々は!?」

「無事、逃げました!」

 アリエル王国の兵士が報告する声がした。


「炎が!!!!」

「急げ! 消火活動に!!」

「アース族を守るんだ!」

 部屋の異変に気付いた十戒軍が、バタバタしながら走っていくのが見えた。

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