表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】どのギルドにも見放されて最後に転職希望出したら魔王になったので、異世界転移してきた人工知能IRISと徹底的に無双していく  作者: ゆき
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/594

114 堕天使アエル

「テラですよ」

「は?」

「この街の人間を消したのはテラです」

 アエルがりんごをぼりぼりかじりながら話す。


 エヴァンが戻って来ると、アエルがあっさりと人間がいなくなった理由を話し出した。

 想像通りだったが・・・。


「知りませんか? いつも人間の職業選択の神殿にいるんですけどね。もうしばらく姿を消していまして、あ、他の国の人間はちゃんと自由に転職してますよ。そもそも職業選択の神って制度自体が、アリエル王国特有のものなんですよね」

 職業選択の神殿・・・聞き覚えのあるような名前だな。


 俺が人間だったとき・・・何度も行ったような気がする。


「テラがこの街の人間を消した目的は何?」

 エヴァンがテーブルに置いた水晶を指でくるくる回しながら言う。


「君は・・・あぁ、異世界転生で最初に来た者ですね。最年少でアリエル王国騎・・・」

「今はその話はいい」

 エヴァンが声を張り上げて止めた。


「なるほど」

 アエルがにやりとしてリョクのほうを見る。

 リョクがきょとんとして首を傾げていた。


「どおりで最近見かけないと思ったら魔族やってたんですか。私、これでも真面目でして、アリエル王国はよくわかっています。堕天しながらも、アリエル王国を守るけなげな堕天使です」

 サタニアが何もかも鼻につくわ、と言って後ろに隠れている。

 完全に、アエルにペースを持っていかれたな。


「脱線しましたね。戻しましょう。テラはこのアリエル王国をリセットして、新しい人間を入れるようです。はは、奴は残酷なことをしますね」

 りんごの芯を投げて、ギルドの端にあるゴミ箱に入れていた。


「新しい人間っていうのは・・・」

「わかっているくせに。サタニアとエヴァン、君たちからは異世界を感じます。想像できるんじゃないですか?」

 足を組んで、靴の砂をトントンと払っていた。


「!?」


「君たちの考え通りですよ。異世界のアバターを使ってこっちの世界に転移させ、自分たちの街をつくりたいそうです」

 エヴァンとサタニアが目つきを鋭くする。


「ん? よく見ると、君たちのいた頃は古い時代というか、転換期前ですね。今はもっと違う世の中になっていますので、異世界の人間も転生したくて躍起になってるそうです」

「古い時代・・・?」

 俺たちがダンジョンから異世界に行っていた頃とも違うってことか。



 つか、何なんだこいつは。

 なぜそんなにいろんな情報を知っている?


「ねぇ、どうゆうことなの?」

「やっと、お話してくれましたね」

 アエルがぐっとサタニアに近づいてきた。


「じゃあ、先に誓いのキスを」

「やめてってば!!」


 パアンッ


 サタニアがアエルに思いっきり平手打ちした。

 ゴゴゴゴゴっと音を立てて、アエルが吹っ飛んでいく。


「はぁ・・・はぁ・・・もうこんなの嫌・・・」 

「お前、その腕力あったら何も怖がる必要ないだろ」

「変態が嫌なのよ。力は関係ないわ」

 ツンとして腕を組んでいた。


「あははは、楽しいですね」

 にやにやしながら起き上がってきた。


「転換期ですよ。転換期。人間たちは、自分たちが過ごせる理想郷を探しているんです」

「転換期・・・・」

「そうです。そうゆうのは突然くるものなのですよ。この世界だってわかりませんよ? 現にダンジョンが現れたのだって、突然だったと聞いています」

「・・・・・・・」

 アエルが近くの鏡で、鼻歌を歌いながら髪を直していた。

 殴られてるのに、機嫌がいい。


「・・・あいつとは、ヴィルが話して。私、奴と話したくないから」

「・・・・俺がって言われても・・・」

 サタニアがぴたっと後ろに隠れた。


「アイリスのことを教えてくれ。アリエル王国の城の中にアイリスは・・・」

「おっと、時間になってしまいました。十戒軍が戻ってきてしまいます」


 バサァ


 アエルが背中から真っ黒く大きな翼を広げた。


「さ、みんな。私の翼の中へ・・・」

「嫌よ。何言ってるの? 冗談じゃないわ」

 サタニアがぶった切った。

 そりゃそうだよな。アエルが広げた翼に、全員が躊躇していた。


「つれないですね。私は貴方たちが来るのを楽しみにしてたのに。そうです!」

 指文字で何かを描いた。


「おわっ・・・」

「きゃっ」

「本当は私が皆さんを包み込んでご案内したかったのですが・・・無理強いはできません。ヴィルとサタニア、エヴァンとリョクのペアでいいですね」


「なっ・・・」

 全員が網のようなもので、空中に吊り上げられた。

 切れない・・・透明で、柔らかい袋みたいだ。


「なんだ? これは・・・」

「初めて見るわ。こんな魔法」

「皆さんは、私と今から、十戒軍を見に行くのです」


「どうゆうことだ・・・今の、何も見えなかったぞ。しかも、この網、俺でも裂けない」

 エヴァンが網を切ろうとしていた。


「当然でしょう。ここはアリエル王国、私はその堕天使アエルなのですから。たとえフルステータスで転生していようと、私には敵いません」

「マジかよ」

 エヴァンが舌打ちした。


「うわっ、これバランスをとるのが難しいんだな」

 リョクがふらふらしながら、網を掴んでいた。

 アエルが満面の笑みを浮かべている。


「ふふ、これは珍しい」

「?」

 アエルが飛びながら、リョクの顔をじっと見ている。


「ん? 僕に何か用?」

「貴女、天使が混ざってますね?」


「お前、リョクには手を出すなよ」

「はいはい。わかってますよ。あいにく、同種族には興味ないんですよね。でも、この子、どこかで・・・・・・」

 ぴんと網を弾いた。


「僕は天使なんて知らない。魔族だ」

「・・・・まぁ、いいでしょう」

 アエルが目を細めながら、網から離れる


「この網は、元々多くの人々を信仰に導く網でした。まぁ、堕天した今は使わないので、私的に利用していますけどね」

「・・・・・」

 得意げになって言っていた。


「これからどうする気?」

「こいつの言うことに従うしかないな」

 右手に魔力を流そうとしても空を切るように何も感じなかった。

 網の中では、魔法まで封じられているようだ。


「おぉっと、いいですね。私はそうゆうのを見るのも好きです」

「きゃ!!!」

 アエルが覗き込むと、サタニアがスカートを押さえた。


「もう、嫌よ。こんなの・・・」

「俺たちをどうするつもりだ?」

「広場までご同行を。安心してください、私の姿も、私の魔法によって隠れた姿も、十戒軍はもちろんテラにも見えません」


「?」

「ただ、静かにしていてくださいね。声を出せば気づかれてしまいますから」

 アエルが口に指をあてながら言う。ゆっくりと網が動き出した。


「さぁ、今の十戒軍たちの様子を、一緒に見に行きましょう」

 いきいきしながら話していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ