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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第3章 城内騒動編
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10話 反撃4

 職員たちの意識を奪ってから二十秒もたたずにマルクトはティガウロに追いついた。

 マルクトがティガウロを見つけた時、ティガウロは何もない壁の前に立っていた。


「待たせたか?」

「いいえ、特には。この先に隠し通路みたいなのがあるらしいです」

 ティガウロが何もない壁をいじっていると、壁の一部がスライドして手形のようなものが現れる。

 どうやら、魔力の波紋を認証する装置のようなものらしい。学園の名簿と同じようなものかとマルクトは感じた。おそらく登録されていない俺たちではここは通れないということだ。正規な方法ではな。


「つまり、この隠し通路さえどうにかすればいいんだな?」

「そうですね。これはプランクのメンバーにしか入れない造りのようですし」

「どうせ、中に入ったら暴れるんだよな?」

「……そうですけど、なに考えているんですか?」


 マルクトの周りに火の玉が浮かび始めた。

 それを見て、ティガウロは何かとてつもなく嫌な予感がした。

「とある偉大な人が言いました。壁があったら壊して進めってね。……少し下がってろ」

 マルクトはティガウロが下がったのを確認してから隠し扉に向けて、爆炎の魔法を放った。


 マルクトの放った爆炎の魔法は、扉を吹っ飛ばした。

 その結果通れるようになったが、おそらく敵に侵入が完全にばれたことだろう。

 これから起こる戦闘の量を思うとティガウロは頭痛がしてくるのを感じていた。


 ◆ ◆ ◆

 

 マルクトとティガウロが壁を壊すと、そこには下に通ずる階段があった。

 そこに明かりはなく奥がよく見えなかったが、そんなことを気にせず二人はその階段を降りていった。


 二人がその階段を降りきると、広い通路があった。特に何もない空洞になってはいたが、そこに誰も見当たらないのが、マルクトには不気味に感じられた。

 少なくとも足止めくらいは用意しているものだと思っていたのだが。

「おそらく罠ですね。さっきのやつが僕たちの存在を知らせてはいるでしょうから」

「……だな。一応警戒していくか?」

 今回マルクトはティガウロの指示に従ってみることにした。

 ティガウロの方がこの地に詳しそうだったのが主な理由だが、彼の実力を見ておきたかったからだ。

 マルクトの言葉にティガウロは少し考える仕草をする。

 そしてすぐに、

「ここは突っ込みましょう。警戒して時間をかけ、その間に逃げられては今回の作戦は失敗です。相手に策を考える時間を与えない方が僕はいいと思います」

 と自分の考えを述べてきた。

「わかった。それでいこう」

 マルクトもその意見には賛成だったため、二人の行動はすぐに決まった。


 二人が通路を進むと、一つの大きな扉があった。

 マルクトはそれを躊躇いなく開けた。

 そしてその扉の先には、数えきれないほどのプランクの構成員がいた。

「……やっぱり待ち伏せだったな。この数を抜けるのは難しいぞ。抜けれたとしてもこれだけの数に追いかけられながらだと……」

「貴方は先に向かって下さい」

「……まさかこの数を一人で相手するとか言わないよな?」

「そのまさかですけど?」

「だったら俺も手伝うさ。こんなところに君を一人で置いてはいけないからな。親友の大切な部下をみすみす見殺しになんかできないさ」

 その言葉にティガウロは呆れたような表情を見せた。

「黙って先に行って下さいよ。敵に逃げられたくないのは僕もなんですから。それに僕もそろそろストレスとかいろんなものを発散したいと思ってたんですよ」

「……わかった。絶対死ぬんじゃないぞ!!」

 マルクトはそう言うと、ティガウロを連れて空間転移魔法で敵の背後に見える扉の前まで移動した。

 マルクトは扉を開けその先に進むが、ティガウロはその場に残った。

 プランクの構成員は口々にもう一人を追いかけろと叫んで扉の方に向かってきたが、今度はティガウロが扉を守るように立ちふさがった。


「……ここを通りたければ僕を倒してから行けよ」

 ティガウロはプランクの構成員たちに向けてそう言うと

「顕現せよ! 材質は鋼、創造する物は扉を守る壁」

 続けてそう言った。

 すると、二つの扉の前に鋼で造られた裕に三メートルを越える巨大な壁が現れた。


 それを見た構成員たちは足を止めた。いきなり出来た壁に驚いていたが、すぐに構成員は口々に、魔法使いだ!! 魔法なんかに恐れるな!! と言っていた。


「君たちにいいお知らせと悪いお知らせがある。いい知らせは、なんと! 僕は魔法使いのくせして魔法があまりうまくないのです。とある事情がありましてね」

 ティガウロの言葉に混乱した彼らを見て、ティガウロはにこやかな顔でこう言った。

「そして悪い知らせの方なんだけど、……僕は神秘の力が扱えるんだ」


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