50話 大天使襲来[6]7
「くそっ、倒しても倒しても蟻のように湧いてくるな!!」
そう言いながらも右手に握りしめた蛇腹剣で数人の天使を薙ぎ倒すティガウロ。だが、その表情からは明らかに冷静さが消えていた。
それも仕方無いと言えるだろう。
天使達はまるで自分など捨て駒であると理解しているかのように、息をつかせぬ波状攻撃を全力で仕掛けてくるうえに、稀にくる味方を壁にして仕掛けてくる一撃は、ティガウロの精神力を徐々にではあるが、確実に削っている。
そのうえ、倒せば倒す程、相手の実力が上がって来ているようで、最初のように楽に倒せるような状態では無い。
たった一人で休むことなく戦い続けるティガウロの体力が切れるのも時間の問題のように見えた。
だが、彼が焦っているのには、他にも理由があった。
(陛下……)
数メートル先で巨大な炎が巻き起こる。
その中心地にいるのは炎の発生源であるユリウスだった。
彼の右手には聖剣レーヴァテインが握られ、その瞳は紫紺の光を発している。
それは、ユリウスが本気を出している証拠であり、ティガウロはこれまでその状態の彼が負けたところを見たことが無い。
そのユリウスが不機嫌そうに舌打ちをすると、直後に陽気な笑い声が空間内に響く。
「ほらほらどうしたの♪ 僕はこっちだよ♪」
「中々に面倒な力を持っているな、大天使ガブリエルとやら。だが、次のはそう簡単に防げると思わん方が良いぞ!!」
余裕有りげににやつくユリウスの聖剣レーヴァテインが赤く光った次の瞬間、聖剣レーヴァテインの周囲に炎が巻き付き始めた。
そして、ユリウスは大きく振りかぶった。
「煌炎煉華!!」
刹那、ユリウスは大天使ガブリエルとの距離を詰め、勢いそのままに聖剣レーヴァテインを突き刺した。
大天使ガブリエルの体に聖剣レーヴァテインの剣先が深々と突き刺さり、彼の口から深紅の液体が吐き出され、ユリウスの綺麗な金髪を赤黒く染めた。
だが、それだけで終わらなかった。
ユリウスはレイピアの形を模した聖剣レーヴァテインを持ったまま、その細く長い足で大天使ガブリエルの体を蹴り、聖剣レーヴァテインを彼の体から引き抜いた。
大天使ガブリエルの体が蹴られた衝撃でふらつきながら、ゆっくりと倒れそうになった次の瞬間、突然、彼の体から突如として炎が噴き出し、小規模な爆発が発生した。
大天使ガブリエルが爆発する瞬間を目撃していたティガウロは、その瞬間、ユリウスの勝利を誰よりも確信した。
だが、ユリウスの表情はあまり芳しいものではなかった。




