50話 大天使襲来[6]6
ティガウロのルーンは、自身の魔力を用い、様々な材質の道具を生成する能力である。マルクトのルーンで具現化した魔力武器との大きな違いは、生成した武器を本人以外の者が使用しても、その力を遺憾なく発揮する点と材質を生み出す点だろう。
要するに、ティガウロは魔力が尽きぬ限り、知識にあるありとあらゆる武器を生成することができるのだ。
だが、無から生成するには莫大な量の魔力を消費してしまう。
その為、彼は環境の中にある物体に魔力を流し込み、魔力を出来る限り抑える戦法をよく使用していた。
また、この方法であれば、詠唱無しによる制限も無いに等しく、形成されたものは再び加工しない限りそのままの状態である為、ティガウロはどちらかといえばこちらの方が得意であった。
それを知っていたからこそ、今回の作戦立案者であるカトウはティガウロの相手をガブリエルにし、ティガウロをこの空間に閉じ込めて戦えとガブリエルに伝えていた。
何も無いこの場所において、ティガウロが使えるのは自身の魔力のみ。
数で押し切ればいずれ魔力切れになり、無力化出来るだろう。
そう考え、カトウは今回の作戦を立案していた。
だが、カトウは一つ読み違えていた。
それは、静かに怒るカナデが、ユリウス捕獲用に予めティガウロに武器を仕込ませていたことだった。
ティガウロの右手が、天使の甲冑の腹部に突き刺さり、天使の体がくの字に曲がる。
そして、左手に握られた蛇腹剣がティガウロの動きに合わせて数多の敵を斬り刻んでいく。
だが、ティガウロも最初から甲冑を斬れていた訳では無い。
甲冑が剣を弾く為、彼は刃先をルーンで調整し、通用する金属を何度も探り、あらゆる手を用いて研究していた。そうやって編み出されたティガウロの蛇腹剣は、今では容易に敵の甲冑を斬り刻み、群れる天使を次々と地面に転がしていく。
刃先を変幻自在に変更出来るティガウロにとって、刃こぼれによる切れ味の低下などは存在せず、天使の甲冑を変形させて造った脛当と甲懸を用いた肉弾戦も展開し、まさに一騎当千の戦いを見せていた。
だが、敵の数は、一方に減る気配を見せなかった。




