50話 大天使襲来[6]5
ガキンとなにかが壊れたような音が辺り一帯に響く。
直後、ティガウロを囲っていた天使達がバタバタと倒れていき、ティガウロの鋭い眼差しが天使達を射貫く。
「お前らは知らないんだろうがな。うちの王様はよく公務を投げ出しては自由気ままに城を抜け出すようなお方だ。しかも、説得にきた者に対し、力尽くで連れ返してみろと毎度毎度おっしゃるもんだから、いつの間にか皆も何も言えなくなってるんだ。そんなお方を連れ戻すように言われているこの僕が、なんの対策も無しに動く訳無いだろ!!」
ティガウロが服を捲ると、彼の腹には謎の鋼が巻き付かれており、ティガウロは柄と思しき場所を握り、それを一気に引き抜き、一つの長い剣を生成してみせた。
「僕の蛇腹剣は僕のルーンで造った特別製だ。そんじょそこらの模造品と一緒だと思っているなら、怪我だけじゃ済まないよ?」
嬉しそうに、そして楽しそうに、ティガウロは笑った。
これまで出すことを禁じられ、ずっとずっと我慢してきた本気の実力を出し惜しむことなく使えるのだ。
これほど嬉しいことは無い。
ただ、惜しむらくは、相手がただの甲冑に身を包んだ数だけの集団ということだけ。
魔力の制御など、ハンデにすらならないだろう。
「悪いけどさ、陛下にかっこ悪いところは見せられないんだ。容赦なくいかせてもらうよ」
蛇腹剣を天使達に向け、堂々と宣言するティガウロ。直後、天使達は衝撃的な光景を目の当たりにした。
なんと、彼が左手に握っていたトンファーが、みるみるうちに変形していき、ドロドロとした状態でティガウロの左腕に巻き付くと、次の瞬間、黒色に輝く篭手に変形してしまったのだ。
よく見れば、同じような篭手がティガウロの右腕にも巻かれており、それを見ていた天使達は、なにがなんだかわからなくなってしまっていた。
そして、そんな隙だらけの彼らを、ティガウロが見逃すはずが無かった。
ティガウロは一瞬で彼らとの距離を詰めると、蛇腹剣を振り回しながら単身天使の軍勢に飛び込んでいった。




