49話 大天使襲来[5]8
その言葉に顔をそちらヘ向ければ、カトウが銃をこちらに構えていた。
「おとなしく日記を読んでろよ。俺達の目的は魔人ベルフェゴールを保護して魔界ヘ送り返すことなんだよ。頼むからそれが終わるまでおとなしくしていてくれよ……」
「悪いがそれは出来なくなった」
「なんでだ!!!」
カトウが叫ぶ。その表情からはカトウの心情が容易に想像出来た。
「お前の日記に出た大天使ガブリエルという存在……こいつが今回の作戦に加担しているなら、ユリウス達だけじゃ心細いしな……俺も出て戦った方がいいだろ」
「……お前の目的は大天使サリエルなんだろ? この戦いが終わったら、俺が自称神の爺さんに頼んで場をセッティングしてやるからさ……今回はおとなしくしていてくれよ……」
今にも泣きそうになっているカトウの表情に、俺は疑問を抱いた。
「……お前……誰か人質にでも取られてんのか?」
その言葉に、カトウはまるで図星をつかれたような動揺を見せた。
本来のあいつであれば、表情を変えずに誤魔化せていただろう。だが、今のあいつからは、表情を偽る余裕すら感じない。
カトウは少し悩んだが、すぐに深刻そうな面持ちで口を開いた。
「ルーンの代償……覚えているか?」
「その者にとっての大切なものだろう?」
「そうだ。俺が日本で過ごした時間やその記憶は、なにものにも替えがたい大切なものだ」
「だろうな。だから奪われたんだろうし」
「そう。でもそれが一番大切かと言われれば、そうじゃない。思い出は思い出として大切だが、それとは別に、もっと大切な存在がある」
「……まさかお前……」
カトウはコクリと頷き、そして、告げた。
「俺は今回の件で協力する代わりに日本の記憶を取り戻した。だが、もしも契約を反故にした場合、今度は別の代償を取られる……つまり……」
「ミチルが人質か」
俺の言葉に、カトウは悔しそうな表情でコクリと頷いた。




