49話 大天使襲来[5]4
まるで大盾のような形状のそれが見せたのは弾き返すのではなく無力化。おそらくだが、さっきの魔力弾を防いだのもあれだろう。
「おいカトウ、お前随分面白そうな盾を持ってるじゃないか……」
俺は攻撃するのをやめ、光属性の照明魔法を周囲に展開した。
だが、今度は最初に使ったのとは異なり、消されることは無かった。
カトウもどうやら話し合う気はあるようで、今度は攻撃するような意思は見受けられなかった。
まぁ、警戒を解くつもりは一切無いがな。
不動の姿勢で立つカトウの手に握られた大盾が、自然と視界に入る。
全体を金色に彩られ、所々につけられた緑色の豪奢な装飾品が特徴的なその盾を、俺は初めて見た。だが、どことなく懐かしさを覚えるものだった。
「その盾……お前そんなもの持って無かっただろ。どこで手に入れた?」
「マルクト、そんなわかりきった質問で時間を潰していていいのか? お前が護りたいと思っている存在は今も危険に晒されてるんだぞ?」
「だったら俺の邪魔をしてんじゃねぇよ」
「それは無理な相談だ。お前が俺達の邪魔をするって言うなら、俺はここでお前を止めるしかない。だからまぁ、時間稼ぎは大歓迎だ。この盾の名はツクヨミ。お前が持つグラム同様神器と呼ばれる武器だ」
「……やっぱり神器って訳か……」
「そう、日本神話の月読命ことツクヨミと同名の神器。この神器はとある条件が揃うと、あらゆる攻撃を無効化する特殊な効果を持っている。当然お前のルーンで作られた魔力弾も例外じゃない」
「条件?」
つまりはその条件が揃ったからこそ、攻撃が無力化されたってことか?
いったいどんな条件……しまった。これ、あいつの罠だ。
「条件ねぇ……そんなの考えてたらお前らがベルを殺す猶予を作りかねないって訳か。引っかかるところだったよ」
「おいおい、確かに条件付きってわざと教えたのはお前が思考に費やす時間を増やすのが目的だが、別にこちらはベルフェゴールちゃんを殺すつもりは無いんだぜ?」
カトウの表情や声音を見るに、それは彼の心からの本音のように思えた。
だからこそ、唐突に気になってしまった。
「この際だから、お前の思惑に嵌ってやるよ」
「それって時間稼ぎにわざわざ乗っかって来るって意味?」
「あぁ」
「いいの?」
「良くはないさ。だが、俺もただ大天使サリエルを黙って待っていたわけじゃない。俺が例えベルの傍にいられなくなるような状況に陥ったとしても、彼女を護る策は充分に弄してある。……だから、訊かせろ。お前はなんでそっち側についた。お前達の目的はなんだ!!」




