49話 大天使襲来[5]3
カトウの有名な戦方は、その手に握る拳銃による精密な射撃と、アクロバティックな動きによる機動戦だ。
だが、それは魅せる為の戦い方で、元来の戦い方は真逆と言ってもいいだろう。
煙や光で相手の視界を不自由にし、言葉を用いて相手の心を動揺させ自分の意のままに操り、仕掛けていた見えにくいワイヤーで相手を罠にかけ、毒を用いて相手を無力化する。あまり民衆受けのしない戦い方だ。
実際、十年前までの校内戦やマゼンタ最強決定戦では対人戦において無類の強さを誇り、俺やユリウスに次ぐ三位の地位を誰にも譲らなかった。
しかも今は、毒薬も魔力のみで作ることが可能なルーン《薬才》をその身に宿している。
自分の魔力を身体の一部に収斂する『convergence』を使った近接戦闘がしにくいのも、これが大きく関係している。
魔力の消費が少ないから本来ならこれを使いたいんだが、ここに元からカトウがいたことを考えると、無闇矢鱈に動き回らない方がいいだろう。
近接戦闘に持ち込むのも不可。
魔力弾による中距離主体の戦い方も、効果が薄い。
となれば……
「次は小型魔法を使った中遠距離主体の戦法を使ってみるか……」
俺はまず、暗闇に紛れたカトウを探すべく、探索魔法を使った。
カトウ自身も遠距離手段が多い俺相手に距離をあまり取っておらず、数メートル後方で何かをしているようだった。
そして、俺は探索魔法を使用したまま、同時に火属性の小型魔法を大量展開した。
流石に、探索魔法との並列処理は脳に結構な負担をかけた為、小型魔法もいつもの半分程度しか出なかった。
だが、これであいつがどう動くのかが、見えなくとも見える。
「さて、これをどう防ぐ?」
俺は後方にいるカトウ目掛けて次々と魔法を発射した。
次々と起こる爆発で、カトウは四方八方に逃げ惑うのが見えた。だが、次の瞬間、彼とは明らかに異なる別種の魔力を備えた謎の塊がカトウの手に握られ、残り全ての炎弾を無力化した。




