48話 大天使襲来[4]2
ベルは震えていた。
クラスメイト達に奇異の目で見られ、顔を真っ青にして怯えていた。
何故ならベルは、この町に来た頃、マルクトに言い聞かされていたからだ。
『どんなことがあっても絶対に自分のことを他の人に魔人だと教えちゃ駄目だ。俺やメグミはベルやカトレアが凶悪じゃないと知ってるが、他の人にとっては恐怖の対象なんだ。だから、例え仲良くなったとしても、お前は自分の正体を隠し続けるんだ』
その言葉に、ベルが全幅の信頼を寄せるカトレアやメグミが賛同したことで、ベル自身も正体がばれることは絶対にあってはならないことだと理解していた。
そんな中、突然自分を魔物だとバラされた。
落ち着いていられなくなるのも無理は無いと言えた。
「なぁ、お前ってまじで魔人な訳?」
我慢を切らした男子生徒が声を発すると、それに呼応するようにクラス中がざわめき始めた。
「本当なら避難した方がいいんじゃ……」
「衛兵呼んだ方がいいよね?」
「魔人って野蛮なんだろ? やっぱり近付かない方がいいんじゃ……」
そんな声が聞こえ始めた時だった。
「ベルちゃんがそんな存在な訳無いじゃん!!」
その怒声のような声で、全員が口をつぐんだ。
そう告げたエリスは、怯えるベルとクラスメイト達の間に立った。
「ベルちゃんはこんなに可愛くて、私がお弁当のおかずをあげただけで心の底から嬉しそうな屈託の無い笑顔を見せる子なんだよ!! そんなベルちゃんが魔人な訳無いじゃん!!」
ベルのことを半信半疑に思っているクラスメイトに対し、エリスは訴えるように違うと断言した。
だが、クラスメイトの反応は変わらず、ベルを遠巻きで見ているだけだった。
それも仕方ないのかもしれない。
何故なら彼女の言葉は全て『思いたい』という感情から出ている言葉に過ぎず、明確な証拠を何も提示していない。
元々五歳でありながら濃い紫という魔法ランクのせいで、クラスメイトの多くからは遠巻きに見られていたベルという存在を、友達として間近で見ていたエリスの言葉。
本来であれば、エリス自身の人間性も相まって、信用を勝ち取り、全員を説得できていたのかもしれない。
だが、エリス自身はわかっていなかった。
彼女は無意識に、その表情に迷いを見せ、その結果、自分の言葉の信憑性を著しく下げていることに。




