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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第7章 最強決定戦編
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48話 大天使襲来[4]1


 先程の喧騒などまるで夢だったかのように、魔導学園エスカトーレの敷地内に存在するスタジアムは静まり返っていた。

 一般の外来客も、他国や国内の貴賓も避難し、エスカトーレに在学している生徒も大半が教師の指示で避難を完了していた。

 しかし、一年生だけが、まだ避難しきれていない。


 一年生は全部で三クラスあるが、その三つそれぞれを担任する教師三人が揃いも揃って行方不明。一年の主任を務めるマイヤーズがなんとか避難させようと動くも、全体の把握が出来ず、結局避難させきることは叶わなかった。

 それだけでは無い。

 スタジアムの敷地外に出てしまった一年の主任が、マルクトの担当する生徒が誰も戻って来ていないのを知って、スタジアム内に戻ろうとしたところ、すぐに外へ出てしまったのだ。

 何度か挑戦を試みるも、結果は全て同じになる。

 そして、一つの結論が出される。


『誰かがスタジアムに仕掛けを施し、中ヘ入れなくした』と。


 そんな状況下で、クレフィはどうすればいいのかと迷っていた。


 大天使サリエルと名乗った存在が言うには、ベル・リーパーは魔人だと言う。

 確かに不自然に思っていた。

 突然、妹だと連れてきた二人の少女。

 マルクトの妹がこの世にはいないことを知っていたクレフィにとって、彼女達が本当はどういう存在なのか気になったことは何度もある。

 だが、その少女が魔人であるとは露程にも思っていなかった。

 

 もちろん、あの自称大天使の言葉を鵜呑みにする訳ではない。

 魔人といえば、クレフィが姉のように慕っていたシズカを殺した魔王の配下にあたる存在だ。

 残虐非道でおぞましく、人間とは似ても似つかない存在だと言い伝えられている。

 シズカの魔王討伐にしたって、最初は魔王や魔人の恐怖に怯える人々の為に魔王を討伐するというのが理由だった。


 だが、それと比べてベル・リーパーはどうだ?


 毎日のように屈託の無い明るい笑みを向け、使用人である自分を心より慕ってくれているのだとわかる行動の数々。

 残虐非道?

 おぞましい?

 そんな言葉など似つかわしく無いと断言出来るほど、ベル・リーパーは可愛らしい少女だ。


(……私のすべきことは一つ……ですね)


 彼女が全幅の信頼を寄せるマルクトの消失は、クレフィに冷静な判断を無くさせる程の衝撃を与えた。

 だが、それでも彼女は自分の心に従い、信じた。


 消えたところで、マルクトはいずれ帰ってくる。


 そうとなれば、自分がすべきことは、リーパー家の使用人として、ベルという主人の妹を絶対に守ること。


 だが、その為にはこの戻ってくる厄介な仕掛けになった扉をなんとかしなくてはならない。


「いったいどうしたら……」


 手を顎に当ててどうしたらいいかをクレフィが悩んでいると、突然、背後に誰かが立ったような気配がした。


「お困りのようですね」


 そう言って声をかけてきたのは、クレフィがよく知る人物だった。


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