47話 大天使襲来[3]6
「最初の質問です。君があのベル・リーパーと名乗る少女と出会ったのは何年前ですか?」
「ベルお嬢様が来られたのは今年の一月中旬頃です。それ以前の面識はありません」
「今年の一月中旬? マルクト先生をおかしいとは思わなかったんですか? 使用人なら主人の家族構成を把握していてもおかしくないと思うのですが」
「私は父より旦那様は家族と絶縁状態になっているから家族の話は禁句だと言われてきました」
「父親もマルクト先生に仕えているんですね。……それで? 君は彼女が妹であると信じたんですか?」
「はい、旦那様がおっしゃることは絶対です。疑う余地もありませんでし……た……」
クレフィの回答が終わる前に、ピスカトルの持つ水晶が微かに赤く光った。
その瞬間、クレフィは青ざめ、ピスカトルは鋭く冷たい目を向けた。
「嘘はわかる……そう言わなかったか?」
クレフィは口をつぐんだまま黙り込んでしまった。
「なんにせよ、これで取引は無しだな」
ピスカトルが背中を向けて立ち去ろうとした時だった。
「お待ちください!!」
叫ぶように放たれたその言葉で、ピスカトルは振り返った。クレフィの表情は微かな動揺が今も残っており、彼女は言うか言うまいか悩んだ挙げ句、優先事項を鑑み、覚悟を決めた。
「嘘をついた訳ではありません。赤くなったということは……私自身が信じきれてなかったのかもしれません。でも、そうであったとしても……私はただ……旦那様を信じたかっただけなのです。確かにベルお嬢様には色々と不審に思うこともありました……」
「それは何故だ?」
「……旦那様はベルお嬢様達を連れてくる直前に行方をくらませました。行き先を誰に告げるでもなく、ただ黙って私達の前から姿を消しました。ですが、旦那様の直前の様子から、私はなんとなくシズカさんの仇を取りに行ったんじゃないかと思っていたんです。でも……」
「何故か妹を二人も連れてきた訳か……」
「はい。最初は一人で帰ってきたのですが、後から妹が二人やってくるからと言ってきたんです。私はてっきりシズカさんの仇を討ちに行っていたと思ったので……」
「マルクト先生のお弟子さんといえば、魔王討伐に向かったことで有名だったな。つまりは仇討ちの為に魔王討伐に向かおうとしたが、そこでなにかがあったと考えるのが正しそうだな……」
「おそらくはそうかと……ただそれと……」
「それと?」
「メグミさんというもう一人の妹がいるのですが、彼女は私が言語を教える際、世界公用語を使うベルお嬢様と違ってグルニカの訛が強かったです」




