47話 大天使襲来[3]5
クレフィは大天使サリエルが来たおり、マルクトから一つの指示を受けていた。
『ベルを頼む』
それは短く簡略化されたものではあったものの、クレフィはそれだけでやることをすぐに理解していた。
今日は同学年の友人と観る約束をしていたクレフィがいたのは、四年生の自分達が座る観客席で、ベル達との距離はかなり離れていた。
ベルの近くにはカトレアもいたうえに、自分にはクラスの全員を速やかに避難させ、それを教師に報告する義務もあった。
だから、ベルを守るのはスタジアムを出てからでいいと、勝手に思っていた。
ところが、待てども待てども一向にベルは出てこない。
それどころか、仲良くなった後輩達まで出てこない始末。
そこでようやく、クレフィは自分の判断が誤りだったことに気付いた。
すぐにでも向かわなければと思うと同時に、サテライトが自クラスの避難完了の通信を受信した。
ここで避難の完了報告を怠れば、自クラスにも迷惑をかけてしまうと判断したクレフィは急いで報告だけを済ませることにした。
すると、ピスカトルとマイヤーズの話が聞こえてきたのだった。
「わかった。クレフィ君が嘘の情報を出さないと約束するのであれば、私が協力しよう。転移魔法を使える教師を二人程残らせたから、時間は気にしなくていい」
そう言いながらも、ピスカトルは一つの魔法を発動した。それは嘘を見抜く闇属性の魔法だった。
製作者のマルクトが作ったのは、術者本人だけがわかるようにされていたが、ピスカトルが使ったのは改良版なのか、左手に手のひらサイズの透明な水晶が出現した。
「君程の魔法使いなら知っていると思うが、嘘は通用しない。君自身が自分の言葉に微塵でも嘘だと感じれば、これは赤く光る。その者の罪悪感によって色は濃くなるが、要するに嘘をつけばこの話は無しだ」
「……わかりました。それで問題ありません」




