47話 大天使襲来[3]1
「二年C組避難完了しました!!」
「四年A組全員揃っているであります!!」
「わかった。君達は自分達の組に至急戻り、担任の教諭の指示の下、速やかに教室へ戻りなさい」
「「了解!!」」
二人の生徒が自分に背中を向けて走っていくのを見て、魔導学園エスカトーレ五学年の主任教諭、ピスカトル・トレーネは溜め息を吐いていた。
エスカトーレの敷地内に突然現れた自称大天使が、ベル・リーパーという人間は魔人だと大々的に公表したのが、彼の懸念点であった。
もちろん、それの正否はピスカトルにはわからない。
だが、学園内に魔人が紛れ込んでいたともなれば、学園の信用は失墜すること間違いなし。その上、怪我人まで出たとなれば、それ以上に最悪の未来が自分達を待っているかもしれない。
(幸いなことに、校舎は魔導フェスタの際に起こった事件が解決した後、強固な造りにしてある。避難先を校舎内に指定しておけば、校舎内の生徒達は安全だろう。なにせ今回はあの時と違って学園長が校舎内にいる。いざとなればあの方が解決してくれるに違いない)
冷静になれと、ピスカトルは自分を落ち着かせる。
この状況で判断を誤れば、自分の評価に関わる。
「ピスカトル教諭、大変です!!!」
慌てるようにこちらにかけてきたのは、一年の主任教諭をしているマイヤーズであった。
彼は額に汗を浮かべ、こちらまで駆け寄ってくると、膝に手をつきながら荒い呼吸を繰り返し始めた。
「どうかしましたか、マイヤーズ先生?」
なかなか切り出そうとしないマイヤーズに、ピスカトルは笑顔で声をかける。というのも、マイヤーズはとっくに話せる状態にはなっていた。
それにもかかわらず、彼は後ろめたい気持ちがあるのか全然話そうとしないのだ。
既に大半のクラスが避難を終えているのだから、早く切り上げて帰りたいのがピスカトルの本音だった。
だが、マイヤーズが話さないせいで、報告が滞っているのだった。
「実は……その……」
「……いい加減にしてくれませんか? 今は緊急事態で一刻も早く生徒の避難を終わらせる義務が我々教師に与えられた使命なのですよ? 貴方一人に時間を割く余裕なんて我々には無いのですが」
「す……すみません!! じ……実は……」
そこで言葉を切った瞬間、マイヤーズはピスカトルの笑みから恐怖を感じ、慌てるように次の言葉を告げた。
「じ……実はマルクト先生が担任している一年B組の生徒が誰一人として避難してきて無いのです!!」




