46話 大天使襲来[2]6
スタジアムの方で連続して聞こえてくる爆発音に、ティガウロは焦りを覚えていた。
普段ならあそこから爆発音なんて聞こえない。
それは、音を外部に漏らさない結界が張られているからで、少なくともフィールド内で発生したものであれば、ここまで音が漏れることなど本来ならばあり得ないのだ。
それにもかかわらず、ここまで爆発音が轟くということは、フィールドでない場所で爆発が起きているということに他ならない。
だが、あそこには王国の兵士や魔導学園エスカトーレに勤務する教師陣、更にはマルクトという絶対的に信用出来る存在がいる。
心配などするだけ無駄だろうが、無性に嫌な予感がしてならなかった。
だが、目の前には自分達の敵と思しき存在がいる。
この大天使ラファエルと名乗る存在を放置など出来るはずがない。
「ティガウロ、魔導学園エスカトーレに向かい、マルクトと協力して敵を殲滅しろ」
こちらに顔を向けることなくそう告げたユリウスに、ティガウロはすぐにはいと言えなかった。
「し……しかし、それでは……」
いくらティガウロでも、その言葉には素直に従う訳にはいかなかった。
この場において、ティガウロ以外にユリウスを護衛する者はいない。そんな状況下で、この国の君主を一人にしていいはずがない。
だが、それはユリウス自身も理解していた。
「ティガウロ、この者は先程こう言った。君達二人を向こうには行かせられない、と。この者はどういう訳か、高名な私だけでなく、隠匿してきたお前の実力も高評価しているようだ。その上で、我々二人を行かせないと言った。つまりは我々さえどうにかすれば使命を遂行出来る自信があるということだ」
ユリウスは腰に携えていた神器をゆっくりと引き抜いた。
「ならばここで二人が足止めされる訳にはいかん。こいつの相手ならば私一人で事足りる。なんとしてもこいつらの目的を阻止しろ!! これは王としての命令だ!!」
王としての命令。それはユリウスの近衛騎士として何よりも優先すべき命令だった。
だが、ティガウロはその命令をすぐ行動に移せなかった。
もし、ティガウロがその命令に従い、すぐにでも戦線離脱すれば防げたのかもしれない。
もし、ユリウスが本音を隠さない大天使ラファエルに油断することなく、彼をずっと視ていたら、ルーンで真意を探れたのかもしれない。
だが、二人はそうしなかった。
だから、許してしまった。
「だから言ったでしょ? 君達二人を行かせる訳にはいかないんだってば♪」
次の瞬間、ユリウスが大天使ラファエルから目を離した一瞬の隙をつき、大天使ラファエルは指を鳴らした。
直後、ユリウスとティガウロの視界が光に包まれ、二人の意識は闇へと誘われた。




