46話 大天使襲来[2]5
「大天使ラファエル? 天使って言ったら、よく伝説や御伽噺なんかで出てくる純白の翼を持つ人間みたいな存在か? でもあれって架空の存在なんじゃ……」
「天使は実在するんだ、ティガウロ」
天使という存在に疑問を抱いているティガウロとは異なり、真剣な面持ちになっているユリウスは、大天使ラファエルの言葉を信じていた。
「天使とは元来、天界と呼ばれるこの人間界とは異なる場所に存在する生き物のことだ。魔王グリルが住んでいたと言われる魔界と同じで人間界とは次元的に離れている為、そう簡単には行き来できないはずなんだが……どうして人間界に来たのかうかがっても?」
ユリウスの質問に対し、ラファエルは可愛らしい少年の笑みを浮かべ、答えた。
「そんなこと決まってるじゃないか。ボク達が動くのは、いつだって調和の為なのさ♪」
その言葉を聞いたユリウスはやはりかと深刻そうに呟いた。
「調和の為?」
だが、王族出身でそれ相応の知識を持つユリウスとは違い、平民の出のティガウロには何がなんだかさっぱりだった。
それを見たユリウスが、更に続ける。
「いいか、ティガウロ。私も先代から聞いた話でしか知らないのだが、この人間界と彼らの住む天界、そして魔界は次元的に同じ座標に存在すると言われていてな。どこかの世界で大きな異変が起きた場合、なんらかの形で他の世界にも影響が現れると言われている。ただ、その影響がいつどこでなんの形となって発現するかはわからない。要するに彼らは、そのなにかが起きる前に、その事態を解決したいという訳だ」
「わかりました。つまり、我々もそれに協力すればよろしいのですね?」
「それがそう単純な話じゃない。彼らは自分達の住むべき場所が無事なら他はどうでもいいと考えているんだ。要するに、他の世界はどうなってもいいから、自分達の世界に影響をもたらすなってこと。つまり……」
「……つまり?」
直後、大地を揺るがす程の轟音を響かせ、大規模な爆発がスタジアムの方で発生した。
「自己中心的で私の国に手を出す害悪な存在ってことだ」




