46話 大天使襲来[2]4
「……なんですか、今の?」
「私にもわからない……が、猛烈に嫌な予感がする。ティガウロ!! お前は私が手配したカトウ捜索を行う部隊と合流し、指揮を執れ!! 私は魔導学園エスカトーレの敷地内にあるスタジアムに赴き、状況を確認してくる」
「かしこまりました!!」
ユリウスの迅速な判断に従おうとティガウロが動こうとした時だった。
「悪いんだけどさ♪ それは困るんだよね♪」
少年のような幼き声が耳に届き、ユリウスとティガウロの二人は思わず足を止めてしまった。
そして、二人は声がした背後に振り返る。
そこに立っていたのは、どこからどう見てもただの少年だった。
緑色の短髪でまだ十かそこらなのではないかと思える程の身長に、ティガウロは無意識にほっとした。
微かに感じた敵意、だが、相手が子どもとなればかわいいものだと思ってしまっても不思議は無いだろう。
だが、警戒を解いたティガウロとは異なり、ユリウスだけはその少年に対して明らかな敵愾心を向けていた。
流石のティガウロもその並々ならぬ怒りの表情には何事かと思う。
「どうされたのですか、陛下? 相手は子どもですよ?」
「警戒を緩めるな、ティガウロ」
普段とは違う冷徹な口ぶりに、ティガウロは何がなんだかわからないものの、相手の少年に対し、警戒を強めた。
そして、ユリウスが一歩前に出た。
「なぜ君がここにいる? いや、それは明確じゃないな……なぜ君がまだ生きているんだい?」
ユリウスの言葉に驚いた様子のティガウロは、その少年に視線を向けた。
すると、少年は不気味な笑みを浮かべた。
「たった一度しか会ったことの無いボクのことを覚えててくれてるなんて嬉しいねー、王様♪」
「忘れるはずがないさ。親友の大事な弟子が共に魔王攻略をするメンバーだ。他メンバーの素性や素行は念入りに調べたからな。……だが、マルクトの話ではパーティーは全滅したと聞いているが?」
「そうだね、全滅したよ。ボク以外はね♪」
嬉々として告げるその姿は少年のようなあどけなさもあったが、同時に得体の知れない恐怖をティガウロは感じ取った。
「……どうやって生き延びたのか……聞こうか?」
ユリウスの紫紺の瞳が光を発する。
それはユリウスがルーンを使用する際に見れる兆候であり、その事実を知るのは国内でも限りなく少ない。
だが、少年は笑った。
「ルーンなんか使わなくても教えてやるさ♪」
直後、彼の背中から二対の純白の翼が顕現し、周囲に白き羽を撒き散らす。
彼のごくごく一般的な服も弾け散り、純白の衣だけがその幼い裸体を包んでいた。
「ボクの真名はラファエル。天上神の名の下において、救いと癒しを与え、この世の秩序を護る大天使の一角である。……て訳で、悪いけど君達二人をあっちに行かせる訳にはいかないんだよね♪」




