46話 大天使襲来[2]1
そこは、人通りがまったく無い道だった。
夜を主体に開かれる店が多く、昼頃は普段から人通りが少ない。ましてや今日がマゼンタ最強決定戦の二日目ともなれば、往来を歩く者などいないに等しい。
そんな場所に、灰色のローブとフードを身に纏った長身の青年が、まるで追手を気にするように、キョロキョロと周りを見ながら、走っていた。
すると、突然青年の腕から緊急事態を告げるような音が発され、そちらを見た青年は急いで道の脇に入った。
「チッ、勘づいたか……」
青年は日焼けの痕がまったく無い白い腕をローブから出し、手首に巻かれたものにつけられた映像を見て、舌打ちした。
映像を見ていると、映像に映った女性がこちらに向かって指を向け、まるで怒ったかのように口をパクパクさせている。
残念ながら、声の届かないこの場所からでは、女性が何を言っているかはわからない。
だが、それでも断言出来た。
(こりゃ、完全に怒ってるな……帰ったらカトウとマルクトに協力してもらわないと……)
カトウを探す勅命は出したものの、今朝方から嫌な予感が絶えなかったこともあり、ユリウスは自らもカトウを探しに来ていた。
決して机上で書類仕事をするのが面倒だった訳ではない。
人を探す魔法に長けたマルクトが、二人の人間を見つけることが出来ないと言う。ましてや、一人はマゼンタで五年もの間、最強の名を誰にも譲らなかった男だ。
ユリウス自身とも浅からぬ関係の男なうえ、いくつもの国家機密を知っている国の主要人物。
だが、それは建前に過ぎない。
自分が認めた男の行方がわからない。
それを親友として看過出来なかった。
それが、ユリウスがこうして一人で動いた理由だった。
「まぁ、今更気付いたところで何ができるでもなし。ばれるのも怒られるのも覚悟の上だ。さっさとスタジアムに行ってマルクトと合流するか……そういえば、マルクトの対戦相手は……」
昨日帰り際にトーナメント表を見たところ、マルクトの対戦相手は謎の男というローブやフードで正体を隠した男だった。
実際に近くで相対したティガウロの話によると、その凄みに圧倒され、相手の指示に従うことしか出来なかったと言う。
ベルという少女やマルクトと接点があるような物言いだった為に、無理して攻撃は仕掛けなかったというのがティガウロの言葉だったが、最後にこう付け加えられた。
『これはもしもの話ですが、マルクトさんと出会う以前の僕だったら、おそらくあの男に挑んで敗北したことでしょう。例え体調が万全なうえに、ルーンを全解放したところで、僕じゃ相手にもならなかったと思います。それほどまでに、相手は危険な存在でした。陛下もお気をつけください』




