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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第7章 最強決定戦編
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44話 五分間1


 フィールドに出ると、奴は既にそこにいた。

 フードを目深に被り、黒いローブを身に纏いながらも、その身から溢れ出すオーラは見る者を圧倒する。


 全身がすくみあがってしまいそうだった。


 以前相対したディザイアとかいう魔族とは比べ物にもならない程の存在感。

 こんな化け物を前にして、何故か俺の口元はにやけていた。


「あり得ないと思っていた。だが、初戦の男が棄権したお陰で、五分だけ時間が出来た」


 低く、威圧的な声が耳に届く。

 その内容の意味はいまいち理解出来ないが、どことなく嬉しそうに思えた。


「訳わからないこと言ってんじゃねぇよ。……五年だ。ジジイの訳がわからん身勝手な理由で俺は五年も奪われたんだ。五分ぽっちじゃ足りねぇんだよ!!」

「鼻垂れ小僧が言うようになったではないか。余計にニ年近くも待ってやったのだ。少しは我輩を楽しませてみせろ」


 試合の始まりを告げる鐘の音が響き渡り、フィールドを中心とした半球体の結界が徐々に作られていく。

 本来であれば、結界の完成はすぐに終わる為、それまで動かないのが普通だ。


 だが、俺は我慢できなかった。


「ぶっ潰す!!」


 いきなり全身全霊全開で行く!!

 身体中に満ちた魔力を《操作》で両手に集中。

 手加減なんて考える必要も無い相手が目の前にいる。

 手を抜けば為す術なく負ける。

 俺は足場の地面が抉れるほど強く蹴り、一瞬でジジイとの距離を無くす。

 だが、ジジイは避けようともしなかった。


「吹っ飛べ!!!!」


 強烈な衝撃波が発生し、完成間近だった結界が衝撃波だけで甲高い音を立て、砕け散っていく。


 渾身の一撃だった。

 今持てるなかで間違いなく最高速かつ威力もトップクラスの一撃だった。


 だが、拳聖ボナパルトには及ばなかった。


 避けようとも防ごうともしないジジイの左頬を俺の右拳が容赦なく襲う。

 普通なら死んでもおかしくないような攻撃、それどころか吹き飛んで当たり前の攻撃だった。

 一切加減もしていない全身全霊の一撃だった。

 それにもかかわらず、ジジイは不敵に笑った。


「良き一撃だ」


 全身全霊の一撃を止められた。

 防ぐどころか、余裕の表情で煽られた。

 なのに、不思議だ。


 どうしてもにやけが止まらない。


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