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弟子は魔王  作者: 鉄火市
第7章 最強決定戦編
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43話 マルクトの過去4


 マヤは彼女の母親同様、周囲の人間から疎まれていた。

 だからだったんだろう。

 彼女は二年以上も、俺の部屋に来ていた。

 本来なら同年代の友達とかと遊ぶ時期だ。しかし、彼女は同年代の友達からも卑しい女の娘とバカにされてきたそうだ。


 そんなある日、マヤは大好きな母親と一緒に国内の町に遊びに行くと嬉しそうに話してきた。

 一歩も動けない俺に対し、お兄ちゃんも一緒に行こうと誘ってきた彼女に、俺は頭を撫でることも笑顔を向けることも叶わない。

 ジェフが俺はここを動けないのだとわかりやすくマヤに伝えると、マヤはお土産と旅行の話をいっぱいしてくれると笑顔で言ってくれた。


 だが、予定の一週間どころか一ヶ月が経っても、マヤは帰ってこなかった。

 ジェフにマヤがどうしたのかと訊こうにも、俺の口は動いてくれない。

 だがその頃の俺は、どうせその内帰ってきて、いつものようにおもしろおかしな話を頼んでもないのに聞かせてくるんだろうなと勝手に思い込み、待ち続けることに決めた。

 だが、更に一ヶ月経っても、マヤは帰ってこなかった。


 二年も身体を動かせない状況にもなれば、人の表情の差異にも敏くなる。

 ジェフは内心をあまり表情に出さない方だが、ここ数日の間、俺に会う度、罪悪感に苛まれたような表情を見せるようになった。

 言葉をつまらせ、明らかに隠し事をしているのだとわかった。

 だから、俺は彼を鋭く睨みつけた。


 彼と目があっていろうがなかろうが関係無い。

 俺は彼が俺に隠していることを自白するまで、ただただ睨み続けた。

 言葉は発さずとも意思を放ち続けた。

 すると彼は、俺に向かって突然謝罪の言葉を述べながら、土下座してきた。


「私はあろうことか殿下に対し、隠し事をしておりました。殿下のお耳に入れれば酷く悲しまれるかもと思い、なかなか言い出せず、今日(こんにち)まで話せなかったことを深くお詫び申し上げます」


 彼はそう言いながらも、その内容をなかなか言い出せずにいた。

 そして、彼は意を決したように俺の目を見て、大声でその内容を述べた。


「マヤ殿下が五日程前に、息を引き取られました」


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