43話 マルクトの過去3
俺は意識のある寝たきりの状態になった。
それだけなら良かったのだが、人や物が俺に触れると、触れたものを強く弾きとばしてしまうという副次的な効果まで発揮してしまった。
始めの犠牲者は母さんだった。
俺が動けないと知った母さんは、心配した様子で俺に触ったが、その結果壁に激突してしまうという事態になった。
俺じゃない。俺のせいじゃないと何度も弁論したかったが、俺の口は動いてくれない。
それからも何度か同じようなことが起こった。
誰かが触れる度、その誰かは俺が意図した訳でもないのに俺の力で怪我を負う。
食事を食べさせてくれようとした使用人ですら、俺に触れることは叶わなかった。
食事も取れない。
呼吸すらまともに出来ない状態だった。だが、俺は死ななかった。死なせてもくれなかった。
それが《操作》という呪いだった。
そして、一ヶ月も経つ頃には、両親や使用人達は俺に近付かなくなった。
だが、お人好しというかなんというか、もの好きなやつもいた。
それが、クリストファーの叔父、ジェファーソンだった。
ジェフは動けない俺の為に毎日のように本を持ってきて、その場で読んでくれた。
両親にそんなことをする必要はないと言われながらも、自分の休憩時間をどう使うかは自分の勝手だと言い張り、俺の為に色々な本を読んでくれた。
だが、お人好しは一人じゃなかった。
一つ離れた腹違いの妹が、五歳になると俺の部屋に遊びに来るようになった。
マヤという名のその子は、よくニコニコと笑う子だった。
だが、俺は庶民との子と蔑み、彼女をよく突き放していた。にもかかわらず、彼女は俺の部屋によくやってきた。
興味本位で俺に触ろうとするところをよくジェフに止められ、大泣きするせいでどちらかというとうるさいという思い出の方が多い。
おまけにやってきて話す内容は中身がスッカスカのどうでもいい話ばかり。
でも、喜怒哀楽を素直に体現する彼女の話を、俺はいつしか楽しむようになっていた。




