42話 二日目9
明らかなる動揺と息を飲む音が聞こえた後、冷静を装ったユリウスが声を発した。
『どういうことだ?』
真剣な声色でそう訊いてきた為、俺は事件のあらましや概要を伝えた。
『……てな訳で、カトウとメルラン先生が行方不明になった。とりあえず?お前んとこの兵士を使って二人を捜索してくれないか? それと、今トーナメントに残っている連中で、俺とカトレア、エリスを除いたメンバーの近辺捜査をして、今回の件に絡んでるやつをあぶり出しといてくれ』
『それと今回の最強決定戦で賭博行為を行っている者達も洗った方がいいだろうな。優勝候補筆頭のカトウが倒れれば得をする奴らがいくらかいるだろう。俺も個人的に出よう』
『お前も動くのか? 人を寄越してくれるだけで助かるんだが……』
『確かに仕事はあるし、カナデに怒られるのも怖いさ。だがそれは親友を見捨てる理由にはならんだろう?』
『へぇ、言うじゃん』
『フッ……こっそり抜ければ多分大丈夫だろ』
『……いや、そこまで怖いんだったら無理するんじゃねぇよ』
締まらない男との通信魔法を切り、俺は不安そうにしているミチルに顔を向けた。
「ユリウスが協力してくれることになった。すまんが俺はどうしても決着つけなきゃいけない相手が待ってるんだ。悪いが、試合に行ってくる」
「マルクトさん!!」
控室に行こうとミチルに背を向けると、ミチルに引き止められ、俺は足を止めた。
怒られるだろうか?
親友が危機に瀕してるかもしれないこの状況で、個人的な理由で試合に向かおうとしている。
嫁さんがいない俺にはさっぱりだが、大切な旦那がいなくなったミチルにとって、俺は最低な人間に見えるのだろうか?
「ありがとうございます!!」
その言葉に、俺は言い表す事の出来ない衝撃を覚えた。
「大事な試合が控えているのにテツヤさんを必死に探してくれただけでなく、その後の手配まで……本当になんて言っていいのやら……」
「ふふっ」
なんで笑ってしまったのかはわからない。
だが、彼女の「ありがとう」という言葉は不思議と嬉しかった。
「カトウは絶対に後で連れ帰す。だから、ミチルは俺とカトウを信じて待ってろ」
涙目のミチルに対してそれだけ伝え、俺は控室の方に向かった。




