42話 二日目8
試合の時間も刻一刻と近付いている。
本来なら試合なんてやってる場合じゃないんだろうが、俺はあの男に勝つという目標を掲げて自分自身を鍛えてきたんだ。
ようやく本気でぶつかれるこのチャンスをできれば逃したくない。
だが、カトウとメルラン先生のことが心配なのも事実。
「……ここはあいつの力を借りるか……」
正直あいつに借りを作るのはごめんだが、カトウの件ならあいつも力を出し惜しんだりはしないだろう。
俺は懐からサテライトを取り出し、ユリウスに通信魔法を使った。
『なんのようだ? 今忙しいんだが……』
通信魔法に応じたユリウスはあからさまに不機嫌な反応をみせてきた。
だが、疑問に思ったのはそれだけでは無い。
何故かユリウスはスタジアムではなく城の方にいるのだ。
『あれ? お前今スタジアムにいないのか?』
『お前のせいだよ』
「はぁ?」
いきなり意味不明な言動に出るユリウスのせいで思わず声を漏らしてしまった。
だが、あいつが城にいるのがなんで俺のせいになるんだよ。
『お前昨日カナデに会ったんだろ?』
『会ったな』
『そのせいでカナデが、マルクト君は立派に教師の仕事をしているというのにあんたときたら公務をさぼって試合試合ってしゃんと王としての務めば果たさんか!!! って怒鳴られたんだよ。そのせいで今は仕事中って訳だよ』
『そりゃ俺のせいじゃなく自業自得ってやつだろうが……てか、そんなことよりだな――』
『そんなことってなんだ、そんなことって!! 俺がどんだけこの最強決定戦を楽しみにしていたことか――』
『カトウが消えた』




